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会報誌CANVAS NEWS

【CANVAS NEWS】2025年6・7月号

2025年6・7月号 誌面

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社会課題の解決に向き合うNPO メールインタビュー全文

NPO法人 自然環境復元協会 國師 裕紀子さん

1.団体設立のきっかけや経緯を教えてください。

 1980年代後半は、日本国内では高度経済絵成長期に顕著化した公害問題が一段落し、地球規模での環境保全が問題となっていました。産業革命以後約200年間、環境に顧慮することなく進められてきた文明によって地球全体の環境が破壊、汚染され、このままで事態が進行するならば、人類の絶滅をも起しかねない、いわゆる地球環境の危機が明確化しつつあった時代であり、その内容は大まかに、資源の枯渇、汚染の拡大、種の多様性の減少に区別されていました。もちろん三者は相互に関係を持つものです。

 このうち、種の多様性の減少にかかわる分野では、原生自然だけでなく、「身近な自然」についても問題になっていました。これらを保全、復元する活動が国内では市民活動から始まり、やがて全国で行われるようになりつつあった時代です。海外でも、中でもドイツなどでは積極的に行われ、世界的な流れになりつつありました。

 このような市民による身近な環境の保全、復元は、ひいては資源の枯渇、汚染の拡大をくい止め、持続可能な社会を創り出すことにつながると考えられます。そのため、本協会では原生自然の環境及び身近な自然環境の保全、復元とその創造に関する理念、理論ならびに手法の確立を目指し、そのための研究、調査及び啓発活動を行い、人間と自然が共生した社会を構築することを目的に設立しました。

 当協会の前身である自然環境復元研究会は、主として種の多様性の維持に関わる任意団体として、19905月に発足しました。その後、10年間で31回の全国シンポジウムによる啓発活動を行うほか、各種ワークシップ、研究会編集の多くや出版物、現在ビオトープと呼ばれる自然環境を復元する用地の計画、調査等、様々な活動を行ってきました。そこで、これら活動に対する社会の要請が高まってきたことから、活動基盤をより確実なものにしたいと考え特定非営利活動法人として2000年に設立しました。

<参考>自然環境復元協会 沿革 https://narec.or.jp/about/history/

 

      

2.団体の活動内容について簡単に教えてください。

 当協会では、多様な生き物と共に暮らす社会を目指して というビジョンをかかげ、生物多様性が原生自然に劣らない自然環境を有する社会の実現をめざしています。

 ミッションとして、身近な自然環境を復元すること。自然体験を通した豊かな感性と人間力溢れるヒトが育つ場を提供すること。の二つを掲げています。 それらの実現のために、環境再生医という資格の認定事業、ふるさと未来創造プロジェクト、そしてレンジャーズプロジェクトの3つの事業を行っています。

<参考>自然環境復元協会とは https://narec.or.jp/about/

            

  1. 3.異常気象や生物多様性の喪失といった自然環境の深刻な変化が進む中、都市部で暮らす人々がそれを自分ごととして実感し、継続的な関心を持ち続けられるようにするために、環境再生医は原体験学習やフィールドセミナーなどの活動がどのように効果を上げているかについて教えてください。

 まず、誤解がないように最初に申し上げますと、環境分野の方々による体験学習やフィールド活動が重要であり、欠かせないものであることは、もちろん言うまでもないことです。ただ環境再生医では、都市部を含む多くの方に自分事化や関心を継続していただくには、それに加え、非環境分野の方を始めとした様々な立場の方が、いろいろな方法で、その入口づくりやアプローチを行うことが効果的であると考えています。

 例えば、広告業の方が事業の就活イベントに、企業の環境保全活動の見える化を組み込むことにより、企業側にも学生側にも大きく意識されたり、飲食業の方が美味しい地産地消メニューを通して、地元の生態系についての話題を楽しく提供したりなど、私たちのような環境保全団体が掲げがちな「生物多様性を守ろう」系とは違った層へのアプローチになりますので、効果も大変期待できます。なお、どのような多様なアプローチであっても、やはりその過程で「自然の中に行こう・活動してみよう」の場面が訪れるようですので、面白いものですね。

 都市部の方のフィールド活動などの効果については、レンジャーズの活動先フィールドに多くの環境再生医の方が関わっていますので、そちらを参考に願います。 (丹野優さん)

⚫️環境再生医とは? https://narec.or.jp/activities/saiseii/saiseii-about/

   

4.「ふるさと未来創造プロジェクト」では農山漁村の活性化支援にも取り組まれているようですが、農山漁村には少し閉鎖的なイメージを持ってしまいます。定住・半定住を進めるために、どのような取り組みをされていますか?森や里山、川などの自然環境の中での体験を通して、地元で暮らす大人たちの自然との関わり方や暮らし方に触れることには、どのような意義があると思いますか?より具体的には、その体験を通して、今後の暮らし方や環境への意識にどのような影響を与えるでしょうか。

 農山漁村で抱かれる閉鎖的なイメージは、人のつながりが濃いことが理由にあると思います。農山漁村ではその地域に暮らす人たちが自然とのかかわりを維持し、守ってきたケースがほとんどです。なので、外から来た人が好き勝手に自然を荒らしたり、積み重ねてきた文化を壊さないように見守る傾向があると思います。その視線に対して閉鎖的という印象を持たれるのだと思いますが、その土地や歴史文化へのリスペクトがあれば、とても喜んで受け入れてくれることも多いです。外から来る人が、地域コミュニティに入っていけるように、人をつないだり、歴史文化の背景を知ってもらう機会をつくることが重要と考え、そこに暮らす人やその考え方に深く触れる機会をつくっています。

 農山漁村には古くから積み重ねてきた自然と人との共生の文化が残っています。そこで暮らす人たちのあり方から、現代人が忘れている自然を大事にする方法やコミュニティの中で生きる大切さを学ぶことができます。教科書的な知識で自然が大事だから守る、というよりも、体感として自分たちの暮らしに関わる大切な存在として自然環境と向き合う方が、本質的で意味のある行動をとることができると思います。

 自分が食べているお米がどこからきてどんな自然によってつくられているのか知らない人よりも、それを生で見て、少しでも関わっている人のほうが、自分事として自然への思いやりを持てるのではないでしょうか。(石黒燈さん)

2025.02.21-24 『青い地球と生きる一歩を学ぶ 屋久島スタディツアー』

「樹齢千年を超える屋久杉を見上げて」:環境再生医 田中俊三氏よりレクチャーを受ける様子

「環境とはなにか」について対話している様子

    

5.大阪ボランティア協会の「ボランティアスタイル」で連携している「レンジャーズプロジェクト」について、新たなボランティアが参加しやすい素敵な取り組みだと思っておりますが、登録の仕組みや工夫、もしあれば課題などを教えてください。また、ここ数年の参加者の年代や参加人数の推移なども教えてください。

 レンジャーズプロジェクトとは・・「何かしてみたい」という環境活動・ボランティア初心者と「若い人手が欲しい」という人手不足のフィールドとを繋ぐプロジェクトです。 活動場所をフィールドと呼び、参加者を隊員と呼びます。

 東京、千葉、神奈川、埼玉、大阪にフィールドがあり4,893名(2024331日現在)の隊員が登録されています。参加者の年代は、10代から70代以上まで多様です。20代から50代まで1520%ずつバランス良く占めており、10代からの問合せが増えているのが最近の傾向です(2023年度 年代別参加者の割合)。1年間の延べ参加者数は、少しずつ増加し420名程度となっています。

レンジャーズプロジェクは、参加者が低コストで安全に参加でき、初心者でも参加しやすいことが大きなメリットとなります。環境保全をしてみたいけれど、いきなり一人で保全団体に参加するのは、ハードルが高い、どんな作業をするのかイメージがわかない、個人で保険に加入するのは負担だ、などの不安を解消し、お試しできるのが、レンジャーズプロジェクトとなります。当日は、必ずリーダーが引率しますので、初めて会う仲間と楽しく作業することができます。
 また、受入れ団体であるフィールドにおいても、高齢化や人手不足を軽減することができます。

 

 実際に、レンジャーズプロジェクトに参加するまでの流れをご紹介します。

レンジャーズプロジェクトのHPから隊員登録をします。
 隊員登録をすることで、ボランティア保険に自動的に加入されたことになります。隊員登録の際に、活動希望エリア選択します。
希望されたエリアにて活動がある際に、出動要請がメールにて届きます。参加を希望する場合は、「参加希望」と活動日前の水曜正午までに返信します。
活動日前の金曜日に直前確認メールが送られてきますので、内容を確認し、準備をします。
当日、指定の時間に待ち合わせ場所に行き、リーダーと合流後、フィールドへ移動し、楽しく安全に活動します。

学生レンジャーズ(柏の宮公園);インターン生が中心に企画をし、参加者も大学生

大阪城公園でのレンジャーズ活動:活動前に現地団体さんから当日の作業について説明があります。

 フィールドによって若干異なりますが、活動前に自己紹介や簡単な体操をしたのち、作業を1~2時間程度行うことが多いです。作業後は、感想を共有します。

    

6.今後の展望を教えてください。

 多様な生き物と共に暮らす社会を目指してという当協会のビジョンの実現においては、粛々と継続していくことが最も大きな使命となりますが、少しずつアップグレードすることにより、継続への推進力としていきたいと考えています。

 今年度からは、特に、活動の3つの柱となっている「環境再生医資格認定事業」、「ふるさと未来創造プロジェクト」「レンジャーズプロジェクト」のプロジェクト成果をより有機的に結びつけていくことで、前述のビジョンの実現に向け、活動を充実化していこうと考えています。

 例えば、ふるさと未来プロジェクトで協力関係を構築したフィールドでスタディツアーのプログラムを構築し、地域の活性化とともに環境再生医の活動や生き方に光があたり、環境再生医資格取得者が活躍する場が広がることで、結果的にSDGsの貢献できる人材が多数育成できるようになること、レンジャーズプロジェクトのリーダーが環境再生医の資格を取得したり、環境再生医取得者からスキルアップの講習を受けたりすることで、リーダーの資質が高まり、そのことが結果的にレンジャーズ隊員の満足度、環境保全活動への積極的参加につながり、レンジャーズプロジェクトの目標である、「各フィールドの受け入れ団体にレンジャーズ隊員からの参入者ふえることで、受け入れ団体の持続可能性が高まり、環境保全活動が継続されること」の実現へつながると考えています。

NPO法人 シルバーアドバイザー・ネット大阪 村松 秀明さん

    • 1.シルバーアドバイザーとはどんな資格なのですか?

 大阪府が36年前から養成講座を始め、1年間週1回、世代間交流、国際交流、地域福祉活動などを学ぶものです。出席率75%以上でボランティア活動実績のある人が認定されます。現在は、大阪区民カレッジの9クラス、大阪府民カレッジの15クラス、大阪府高齢者大学校の2クラスなど、府内の生涯学習校が養成講座になっています。

    

2.NPO法人を発足させたきかっけは?

 大阪府シルバーアドバイザー連絡協議会(SA連協)が、大阪府立介護情報・研修センターが設置する介護用品展示場の説明員を受託するために法人格が必要になり、NPO法人を独立させて発足させました。そのための「福祉用具説明員サポート事業部」を立ち上げたのですが、受託終了とともに、今は、「伝承おもちゃづくり」、子どもたちに考える力をつけてシニアの脳活性化をはかる「おもしろ算数教室」、「国際交流活動」の3つ事業を正会員18名、賛助会員68名で行っています。

   

3.理事長の村松さんがシルバーアドバイザーになった理由はなぜですか?

 現在75歳ですが、養成講座は大阪府高齢者大学校の国際文化交流科でした。定年後、教育支援NPO団体のインドツアーに参加したことがきっかけで、その団体のボランティア活動をしていたので、国際交流の仲間づくりにと受講しました。

  

4.「伝承おもちゃづくり」とはどんな活動ですか?

 おもちゃ学校は6年前から始めました。風車や竹とんぼといった昔ながらの手作りのおもちゃづくりの指導者を養成する月1回の講座を半年間開きます。今の受講者は23人。孫といっしょに遊びたい、子ども向けの施設のボランティアをしたいなど、その動機はさまざまです。また、固定メンバーが隔月で集まってスキルを磨くおもちゃ教室もあります。

 受講した人はインストラクターとして、夏休みこども工作教室、四天王寺の「わっか市」、北御堂、一心寺、その他さまざま々なイベントなどで開かれる、「親子おもちゃ教室」などに参加しています。おもちゃは買うものという風潮ですが、手先を使ったり、刃物を使ったり、無心に手作りすることのおもしろさを伝えたいと思います。

   

5.おもしろ算数教室とは?

 数学教師の元校長先生が中心となって、小学生などに向けて「算数が好きになる」「考える力をつける」ための教室や、高齢者が楽しみながら脳の活性化を図り認知症予防につなげる講座を開いてきました。算数のパズルを解くのは難しいですが、楽しみにしている方もいます。

    

6.国際交流事業ではどんなことに取り組んでいますか?

 ミャンマーの日本語学校と週1回オンラインで交流したり、大阪大学留学生のホストファミリーの活動、大阪日本語教育センターの留学生との交流をしたりしてきました。ウクライナ避難民への支援活動は2024年度に始めました。クラウドファンディングと企業からの寄付で資金67万円を集め、孤立しがちな避難民の方々に、書道、料理などの日本文化を体験してもらったりハロウィンパーティーをしたり、大阪国際交流センターと共催で茶道・浴衣の着付け体験会を実施してきました。同センターが把握されている情報によると、大阪近郊には、ウクライナから約150世帯が避難されているそうです。

 今後はSA連協との連携を図り、大阪府内全域でシルバーアドバイザーの活動を盛り上げていきたいと思っています。