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会報誌CANVAS NEWS

【CANVAS NEWS】2021年6・7月号

会員誌「CANVAS NEWS」

2021年 6・7月号 誌面

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メールインタビュー全文

西淀川子どもセンター

西川奈央人さん

<西淀川子どもセンターの活動について>

 子どもが自分のことを気軽に話すことができる「場」と「人」を、子どもの近くに増やすことは、困難な状況にある子どもへの支援や虐待予防に大きく寄与すると考えます。西淀川子どもセンターは、すべての子どもが自分自身を大切な存在と感じ、安心して、納得した人生を送るための「地域に根ざした子ども支援」に取り組んでいます。
 保護司や子どもへの虐待防止の活動をしていた前代表や数人の仲間が発起人となり、2007年に活動をスタートしました。多くの少年・青年と関わるなかで、小学生時代などの早い段階で子どもたちと出会うことの重要性、事件が起こったり犯罪や非行に走る前に関わることの必要性を感じ、「子どもが気軽に相談に寄れる場所」を地域に作ろうと、公園でパラソルを立てて呼びかけるところから始めました。2008年にNPO法人となり、事務所ができた後は、文庫活動やてらこや活動(学習支援)をしながら、自由に遊びに来れるよう居場所として部屋を開放する活動を行なってきました。また、子どもへの暴力防止プログラム「CAP」、地域の大人に向けての講演会・勉強会やサロンなどの啓発活動を行い、子どもが安心して大人と関われる場所を作るために、さまざまな活動を展開してきました。
 毎週ボランティアたちが一緒に遊んだりする中で、子どもが子どもを呼び、いつしかたくさん来てくれるようになりました。そんな中、事務所を閉める時間になっても、なかなか帰りたがらない子どもたちが数人いました。「どうせ家に帰っても誰もいない」「ごはんもないしな」「今からゲーセン行こうや」と誘いあわせたりしていて、彼らのつぶやきを聞き、夜間の過ごし方が気になりました。それでは、夕ご飯を食べる機会を作ってみようかと、現在活動の軸にしている「いっしょにごはん!食べナイト?」の活動につながっていきました。
 西淀川区内にある改装した古民家を会場に、「いっしょにごはん!食べナイト?」(夜間サテライト事業)は、2014年からスタートしました。週一回程度、区内の小学生?高校生を対象に、学生や社会人のボランティアスタッフと一緒に夕食を作ったり、宿題やゲームをしたりなど楽しい時間を過ごしています。夕食作りは、買い出し、調理、配膳、後片付けまでを、子どもたちと一緒にボランティアスタッフがサポートしながら行います。ご飯を一緒に食べる機会を通じて、子どもたちにとっては気軽に話せる若い世代や、様々なことを教えてくれる熟年世代などもいるので、家族や学校の先生とは違う多様な大人と出会う場にもなっています。


コロナ禍の中で、活動が難しくなっていることと思います。その中で継続されている活動は、どのような工夫をされていますか。

 2020年度の活動は、社会に蔓延するコロナへの予防体制に苦労しました。「会食」の感染リスクが特に高いとのことで、「いっしょにごはん!食べナイト?」は、緊急事態宣言の期間や大阪の感染状況拡大により、3~6月・12~2月の間は休止して、食事をしない日中の活動に切り替えました。
 休止後は、7月・3月よりともに再開しましたが、「密」を避けるために参加人数の上限を設定して、スタッフも含めて普段よりも少人数での開催にしています。高校生世代を対象にした活動では、お弁当を作って持ち帰る形式に切り替えました。
 また、検温や来所・退所時刻の記録をとり、旧式蛇口の洗面台のリニューアル、手洗い・消毒・マスク着用の徹底、調理する時・食べる時・遊ぶ時どのようにスペースを取るのかなど検討を重ねて実施しました。
 対策を行なった上で再開しましたが、ニーズが高く参加人数の調整が必要となる時もあり、それにより参加できない子どもの夜の過ごし方も気がかりで、感染防止対策と子ども・家庭のニーズとをどう両立させるかが課題となりました。

中止、延期された活動の影響で心配されること、それらについて代替案や今後のプランはあるのでしょうか。
コロナ禍であらたに生まれた活動や支援、今後の課題や展望などがあれば教えてください。

●アウトリーチ(訪問支援)活動(2020年4月~)
いただいた支援物品を仕分けして、子どもたちに届けました 緊急事態宣言により休校と外出自粛が要請された期間に、ご寄贈いただいた食品や日用品などの物資配布を兼ねて、アウトリーチ(訪問支援)を開始しました。子どもたちの家庭での様子を見て、状況を聞き取って、必要としている支援・その状況の中でもできる支援は何かを模索しました。子どもたちへ手紙を書き、アンケートを同封して返送してもらう試みや、子どもたちに馴染みのスタッフが出演する動画配信も行い、集まれない・会えない期間も、子どもたちに「近くにいるよ」と伝えられるような活動を行いました。
●「宿題がんばルーム」活動の立ち上げ(2020年5月~)
「宿題がんばルーム」家ではすすまない宿題もいっしょにやるとがんばれる!? 「休校中に出された宿題が、家ではなかなか進まない」という子どものつぶやきを受けて、スタッフが個別に学習支援を行う「宿題がんばルーム」活動も少人数で始めました。子どもが宿題を持参し、スタッフと一緒に勉強に取り組みつつ、色々な話しをしたり、息抜きに好きな遊びをしたり、おやつ作りをしたりと、コロナ禍でも子どもが思い思いに過ごし、安心できるような居場所作りを目指しました。
また、オンライン授業に切り替わった高校生が、自宅にWi-Fiがないのでセンターで授業を受けに来ることもありました。
●羊毛フェルト作品づくり、ボッチャ、アロマテラピーなどの体験
ツクツクの会(羊毛フェルト作品づくり)ボッチャ大会の様子
 勉強するためには来たくない子どもたちもいるので、「宿題がんばルーム」と並行して、羊毛フェルトでの作品づくり、ボッチャ大会やアロマテラピーなど、コロナ禍でも楽しめることを企画して、直接出会う機会を作るように工夫しました。
 「コロナ制限」でストレスを抱えた子どもたちに寄り添うために学校でも家庭でも街でも、多くの「コロナ制限」に囲まれている子どもたちが、ストレスをできるだけ開放できるような居場所作りを目指し、柔軟に活動を今後も継続していく予定です。屋外でできるレクリエーション企画や、子どもたちにもやりたいことのアイデアを出してもらって、どうやって実行するか考えていこうと思います。
 感染防止対策と子ども・家庭のニーズとをどう両立させるかについては、ウイルスに関する最新情報と社会状況を注視しながら、定期的に対策内容の見直しを行い、子ども・家庭のニーズに応えられるようにしていく必要があると思っています。
 昨年発足した、西淀川区内の子ども食堂や子ども支援団体と相互に連携・協力できるための「西淀川こどもネット」の取り組みも、継続できました。協働でのイベント開催は困難でしたが、定例会議でコロナ禍の子どもたちの状況を共有したり、食料品・日用品などの寄付物品を各団体で分配・配布する協力体制が取れるようになりました。

その他、こども達の状況などみなさんに知ってほしいこと、特筆すべきことがあればお願いします。

 緊急事態宣言で休校となっている期間は、各自宅訪問した際の子どもたちは、口々に「めっちゃ暇や」「ずっとゲームしてる」などと呟いていました。普段は「学校がつまらない」と言う子も、さすがに時間を持てあました様子でした。外出を控えて、家族以外と直接会話をすることがなく、オンラインゲーム上でのチャットが他人との接点になっている子もいました。一方で、スマホのない子は友人とつながれず寂しい気持ちで過ごし、自宅にWi-Fi環境がない高校生はオンライン授業についていけないことも分かりました。
  また、コロナ禍で活動が変則的になる中で、学生世代のボランティアの募集・養成が特に難しく、子どもたちの現状と課題をしっかり共有できる研修を重ねていく機会と関係性を築いていくことが課題となっています。
夏のキャンプ(アサヒキャンプさんと共催) 新しい生活様式の導入では、マスク越しでソーシャルディスタンスの人との距離感が子どもの体験のありように大きく影響しています。子どもは「密」になって遊ぶほど、おもしろさが増すと思いますが、それも止められてしまいます。夏休み期間にプールやキャンプで思い切り遊んでから(何んとか工夫して実施しました)は、互いを「親友」と呼ぶようになっていたり、新学期の学校に行く元気が出たような子どももいて、良い体験の共有が子どもの関係性をつなぎ、成長していく様子が伝わってきました。子どもたちが、「いまが好き」と感じてのびやかに過ごせる時間を願って、なんとか知恵と工夫を寄せ合って、見通しのつきにくい活動状況を乗り越えていきたいと思っています。

いくの学園

相談員Mさん


 コロナ禍以前、元々行っていた活動の概要を教えてください。また、コロナ禍によって、これまで行っていた活動について変更した点等があれば、その概要についても教えてください(中止・オンライン化・対応の変更等)。

 電話相談とシェルターの運営、弁護士と司法書士による法律相談の提供、 講演活動や講座開催等の啓発活動、また、暴力の環境から離れた後も続く、 心身の後遺症・生きづらさからの回復を支援する場として、通所施設を運営していましたが、これは2020年7月に閉所しました。
 コロナ禍の影響としては、ボランティアの活動、フードバンクの提供を受けてシェルター退所者に食品を持ち帰ってもらう事業、退所者の来所による相談も原則休止として、いくの学園への来所人数をかなり厳しく制限しました。シェルターという特殊な環境下なので、入所者の感染を防ぐために慎重になっています。
 2020年7月に閉所した通所施設は、コロナの影響だけが原因ではありませんが、継続をより一層困難にしたことは間違いありません。


 上記ご質問の変更等に伴い、どういった変化(メリット・デメリット)や利用者からの声があったか教えてください。

 利用者の多くの方は、コロナの影響による制限は仕方がないことと、理解してくださっています。むしろ、他の相談窓口の休止が相次ぎ、相談できる場所が減ってしまったので、いくの学園が休まず電話相談を継続したことに対して、ありがたいという言葉をいただきました。
 また、「スタッフやボランティア等、つながりがある人の顔を見て安心したい」「ふらっと立ち寄って、利用者同士で交流したい」「そんな日常的な場所がほしい」等のニーズは以前からありましたが、コロナ禍において、ごく普通に人と人が交流することもまま ならなくなり、同じ空間でお茶を飲みながら雑談して、ほっとできる場へのニーズが一層高まっていると、相談を聴く中で強く感じます。


 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛・休業等が行われる中、DVの増加・深刻化が懸念されるところかと思います。コロナ禍のDV・性暴力相談の特徴・課題、及び、それらの課題について貴学園において現在(又は今後)注力している事柄等がありましたら、教えてください。

 コロナの影響によって加害者が失業を余儀なくされ、被害者への金銭要求が強まった、別居することによって、被害を遠ざけていたのに、加害者の経済状態が不安定となり、再度同居せざるを得なくなった、また、リモートワークで家に一緒にいる時間が増え、加害者がイライラしている等、ひどい暴力はなくても、心の休まる時間が全く持てなくなった等の訴えがあり、相談の背景にコロナの影響が見受けられます。
 コロナ禍と関係なく、この数年の傾向として、DV・虐待の社会問題への認識が広がり、 親からの暴力の相談の増加、また、外国籍・男性・LGBT・障害・若年女子等、 相談者の背景が以前よりも多様になっています。 かつては夫の暴力から避難する妻、もしくは母子が相談者の中心でしたが、 社会的認知や相談窓口が充実してきたことで、多様な背景の方が、他に相談できるところが少ないので、いくの学園の相談にたどり着いています。
 今後はコロナの影響により、失業者やホームレス(友人知人宅を転々とすること等も含まれる)が増加すると見込まれ、シェルターや相談窓口の役割が大きくなるかもしれません。社会が困難な時ほど、経済的に困窮し、精神的にも疲弊している相談者が増えるので、それに対応できる体制をどう整えるかが課題です。


 コロナ禍に際して、運営スタッフからどういった声が上がっているか教えてください。


 何かしら企画をするにしても、実現できるかどうか見通しが立ちません。 例えば講座をオンラインで開催するにしても、経験の低いことなので、 参加者に満足してもらえるものを提供できるか、まず技術的な面で戸惑いがあります。少ない人員で運営しているので、感染すれば活動に大きな影響を与えてしまうので、非常に不安が高いです。