・1979年発足とのことですが、「日本ボランティア・NPO・市民活動年表」をみますと、牧口一二さんを代表に「誰でも乗れる地下鉄をつくる会」の活動の中から生まれた。とあります。目標は「障害者と健常者が共に生きるおおさか」をつくるとあります。この理念を引き継がれていると思いますが、当時と変わらないもの、時代の変化に応じて変えていったものはありますか?
理念は当然変わりません。すべての障害のある人の権利を守り、福祉、交通、言語、教育、情報、スポーツ等のあらゆる分野でのバリアを取り除き、誰もが暮らしやすい「おおさか」になるよう活動しています。
事業面では、ヘルパー制度の拡充につれボランティア活動としての外出支援、生活支援は縮小しました。しかしながら、今も私たちが生活介護事業を中心とした活動に取り組む根底には世の中に根強く残る差別や偏見と向き合い、より多くの仲間たちと連帯して障害者が安心して生きていける社会を目指すという思いがあります。
・障害者の権利を守る運動では、川崎バス闘争(1977年)に代表される「青い芝の会」の活動が有名です。「誰でも乗れる地下鉄をつくる会」の活動中にも、車いす利用の障害者から「エレベーターができると、知らない人に『車いすを持ち上げて階段を昇らせてください』と声をかけなられなくなり、その分助け合いやコミュニケーションがなくなるという理由で、障害者の中からも反対する人がいたそうです。その時、牧口一二さんは「あなたのように自分から声をかけられる人はいいけど、そうでない障害者もたくさんいる。そういう人たちのためでもある」という話をされたと聞きました。何か、応援センターの活動理念に通ずるような気がしました。
応援センターの趣意書では、落語で語られるような長屋暮らしの人間味あふれるおおさかのまちを取り戻していこうという思いがしたためられています。そこでいわれる私たちの宝物は人間まるごととして、弱さや強さ、やさしさ、あいまいさ、ねたみ、にくしみなど人間の持つポジティブ、ネガティブの両面を列挙しています。
青い芝の会の活動は、強さを前面に出した活動です。その活動を応援センターは否定する立場ではありません。差別的なものと闘うには強さが必要です。ただ、応援センターはその対極にいてどうしても強い声を出すのが苦手な人でも活動に関われるようなセンターを目指したということです。弱さはダメなものじゃなくて、人間の宝物の一つとしていろんな人とつき合っていけたら新しい何かが見つかるかもしれません。
・ホームページを開きますと、大阪府とのオールラウンド交渉の日程が載っています。どのような内容でしょうか?どのような具体的な要求や提言をされているかを教えてください。
応援センターなど障害当事者団体が加盟する「障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議(障大連)」という団体があります。大阪府とのオールラウンド交渉には障大連の一員として参加し、大阪府の障害者施策に対して各方面から要求を行っています。施策全般、教育保育、介護、交通まちづくり、グループホーム、地域移行、権利の実現などの分野別に2日間かけて交渉を行います。障大連では冬には大阪市との行政交渉も行っています。
・障害者が街に出て健常者と同等に暮らせる共生を目指されていますが、応援センターのホームページにある趣意書には「障害者と健常者のどこが同じでどこが違っているのか。『選ぶ権利』の違いは何かを学び体験を通して知っていく中から共有できるものを見つけ出す」とありますが、どのような例があるのでしょうか?
私たちが目指すのは誰もが暮らしやすい社会に他なりません。「選ぶ権利」の違いとは差別そのものの存在を意味します。障害者には生きていく中での選択肢があまりにも少なく、選べない状況があります。たとえば店の入り口が狭くてショッピングや飲食などが自由にできない。これは車いすの人と一緒に外出しないと気にならないことだといえます。
・生活介護事業所を2つ運営されていますが、どのような特色がありますか?「生活介護」とはどのような意味があるのですか?一般の障害者作業所とはどこがどう異なるのでしょうか?
障害福祉サービスを提供する事業所は多種あります。その中で生活介護は、高齢者デイサービスの障害者版ととらえるとイメージしやすいと思います。お金儲けのための作業ではなく、ひとりひとりのやりたいことを実現させていくことに取り組んでいます。最近では、将棋がブームになっており、週1回、将棋ボランティアの協力もあり盛り上がっています。
・児童虐待防止協会の活動内容を簡潔にご教示いただけないでしょうか。
医療・保険・福祉・法律・教育・報道などの関係者により設立され、子ども虐待にかかわる様々な領域の方々に向けた活動を行っています。
・貴法人において、特に、力を入れている活動、及び、その理由をご教示いただけないでしょうか。
虐待や子育てに悩む人からの電話相談はもちろんですが、行政の担当者に対す
るサポートを大切に考えています。行政の担当者のスキルの向上なくして、児童虐待の予防は難しいと感じています。
・今後、貴法人において、虐待をなくすために、特に、力を入れていきたい活動、及び、その理由をご教示いただけないでしょうか。
虐待問題の背景はそれぞれに特有で複雑です。親になる方々の能力、経済的問題、子どもの資質等、絡み合った問題を早期に発見して予防に結びつけるために、行政とのかかわり、サポートに力を注いでいきたいと思っています。
・虐待を未然に防ぐ、又は、虐待を減少させていくために、必要となること(活動、施策)があれば教えてください。
日々、虐待のニュースが流れています。それらの問題を、社会全体の問題としてとらえること、そして社会の無関心をなくすことが大事ではないかと思います。予防教育等で次世代の子供たちに理解を深めてほしいと思います。
・キャンバスニュースの読者に対して一言お願いいたします。
児童虐待防止協会の活動は、子どもたちに直接触れ合うものではありません。活動内容が皆様に伝わりにくくもどかしさを禁じえません。ですが、私たちはこれからも社会の多様な人材とのつながりの中で、「児童虐待」の問題を根本的に解決するための解を考え続けていきます。ぜひ、同じ気持ちをもちご支援いただけたらと思います。