1.三浦さんが活動をはじめられたきっかけを教えてください。
自宅で犬のトリミングサロンをオープンした年と東日本大震災が起きた年が同じで、ペット防災の勉強を始めました。机上の勉強だけではサロンに来てくれるお客様や周りのペットの飼い主さんに何も伝えられないと思い、被災地にいるボランティアさんと繋がり、現地へ行かせてもらうことで、さらに現状を知ることが出来ました。その後同じようにペット防災を学びたいという仲間が集まり、今の団体としての活動になりました。
2.災害発生時におけるペット同伴の避難は、どのようになるのでしょうか。避難所におけるペットの生活の問題(鳴き声やトイレ、散歩等)と人が一緒に生活することについて、避難所ではどのようになるのでしょうか?
まずは住み分けが重要になるかと思います。鳴き声は1頭が鳴けば連鎖してしまいますので、ペットを飼っていない方も飼っている方も気持ちが参ってしまいます。また、ペットのトイレに関しては、飼い主さんが犬・猫にマナーパンツを付けてあげることをおすすめしています。避難所は学校などの子どもが学んでいる場となので、汚さないように常に心がけて欲しいです。
3.能登半島地震において、実際にペットと人との避難はどのようになされたのでしょうか?問題だと感じていることなどあれば教えてください。
私たちの団体は珠洲市にご縁で入らせて頂きました。この能登地震は過去の災害での出来事(津波・建物倒壊・液状化・広範囲停電・災害関連死の可能性 等)が全て含まれていると言われていますので、人が生活するのもとても困難な中、ペットとの避難はとても難しかったと思います。ある避難所では実際に人が暮らしている体育館などの場所とは離れた靴箱の辺りに囲いをして暮らしている人が体調を崩されていました。また、別の避難所では、ペットは避難所に入れず飼い主は避難所でペットは車中泊していて別々で過ごしている方もいました。少し離れたところに、ペット同伴避難所があると知っていてもそこにはご自身のコミュニティがないため行きたくはないというお声もありました。
避難所内で住み分けやペット同伴が出来る避難所が同じ地区に一つはあればいいかも知れません。
4.「ペットが避難所に来ることを理解ができない」という避難者もいるかと思いますが、そのような方にどのように理解を広げていかれているのでしょうか。
指定の避難所は様々な方が集まる場ですが、ペットが苦手だからペット同伴避難所へは行けない人もいますし、また逆にペットがいるから住み分けや同伴でない避難所へは行けないという人もおられます。住み分けが前もって出来ていて、避難する皆が知っておければ、避難所に躊躇することなく逃げることができます。そういう安心できる場に避難所がなって欲しいと思います。
ペットの飼い主は過去の災害においても車中泊が多く、災害関連死も多いと言われています。やはり人の命がかかわることから、誰もが助かるために飼い主とペットへの理解が進むことを望みます。もちろん、飼い主は適正なペットの飼い方をしなければならないし、ペットの事だけではなく、他にも避難困難な方がいること等を忘れてはいけないと思います。
5.避難の際、「ペットを連れて行かない」ことを選択された場合、どのような避難生活になるのでしょうか。また、ペットだけを置いていくという避難者の方もおられるのでしょうか。
そもそも大型犬や猫を飼っている人、人慣れしていない等ペットの性格をよく知っている飼い主は連れていけないと思っている方もいます。実際に過去の事例では、自宅にご飯をやりに通う飼い主さんもいました。飼い主として、ワクチン接種、飼い主が分かるようマイクロチップや迷子札などもわかるようにしておかなければいけません。しかし、東日本大震災時には帰れると思ってご飯を置いて避難したが帰れなくなったケースもあったように、基本はペット同行避難を国も推奨しています。
6.ペットも人と同様、災害時には不安を感じていると思います。言葉の通じないペットに対してそういった不安の解消はどう考えていますか。
災害時は普段と違う環境で、体調を崩すペットも少なくありません。日頃からペットの健康状態に気を付けておき、持病がある場合は薬なども持ち出せるようにしておきましょう。言葉が通じなくても、動物は人よりも早く状況を受け入れることができると感じます。愛情をかけ、声掛けをし、時にはおやつをあげたりするといいかもしれません。被災地では、ペットがいることで、飼い主や飼い主以外の人にとっても生きがいとなっている、という声もよく聞きました。
7.「ペット防災サポート士」の養成をされているようですが、現在何人の方がペット防災サポート士になっているのでしょうか。現在、養成講座の受講者数は増えていますか。
現在、79名がペット防災サポート士としております。養成講座の受講者は大幅に増えているという感じではないですが、1月1日の能登地震以降、ペット防災に関心を持つ方が増えた印象はあります。今後も継続して養成講座を開講することで、より多くの方にペット防災について知って頂き、考えてもらえたらと思います。
8.貴協会への寄付やボランティアとしての参加はどのような方法がありますか。
各地のメンバーがイベントやセミナーなどを行っています。ご興味のある方は協会までご連絡頂けましたら、ボランティアとして参加頂くこともできますのでご相談下さい。また、ご寄付先についても、協会ホームページに記載しておりますのでご覧頂ければと思います。
9.今後の活動の展望を教えていただければと思います。
ペット防災はペットだけの問題ではなく、人も絡んでくる問題です。ペットを飼っている方だけではなく、飼っていない方にも一緒に学んで頂きたいです。また、私たちはオンラインの勉強会やセミナー、イベントなどを通じて、色々な立場の方が参加しやすい雰囲気で情報交換や共有などを行い、お互いに学び高め合える関係性を大切にしています。このような参加のしやすさが、全国に会員様やメンバーがいることに繋がっている、当協会の良さだと自負しています。今後も私たちと一緒に学んで頂き、繋がりを広げていければと思います。
NPO法人寝屋川あいの会は、介護保険が制度化された翌年の2001年4月にNPO法人として発足しました。運営理念は「手助けする方と手助けを必要とする方を、持続可能な健全な経営状態のもとに結びつける」です。以来、寝屋川市における「住民主体の有償ボランティアによる訪問型サービス」を中心に活動してきました。理事長の三和清明さんに話を聴きました。
1.「有償ボランティア」はどんな活動でどんな役割ですか?
高齢者の日常生活支援を行う訪問助け合いの活動です。庭の草取り、部屋お掃除、買い物、外出の付き添い、見守りや話し相手、病院への付き添いなどで、介護保険サービス以外のケアサービスを低額の利用料(謝礼)で行っています。活動事例としては、不用品や生ごみに埋もれて困り果てていた方が生活を立て直したいと「あいの会」に相談がありました。有償ボランティア(活動員)5人が5日間かけて掃除してすっかりきれいになり、依頼した高齢の方も元気になりました。
有償ボランティアは、最初に個別面談を行い、活動ができそうでしたら活動員として登録されます。利用者から寝屋川高齢者サポートセンターに依頼の電話があると、コーディネーターが依頼内容を確認して現地を訪問し、依頼内容に応じて適切な活動員に連絡して日程を調整します。当日の作業を終えると、利用者に「活動実績報告書」にサインをしてもらって利用料を受け取り、利用料金は月末にあいの会の事務所で全額を納め、翌月に活動費を受け取るという仕組みです。
2.「有償ボランティア」が登録する「寝屋川高齢者サポートセンター」とはどんな組織ですか?
寝屋川市の「地域福祉計画」「高齢者保健福祉計画」に基づき、NPO団体や介護事業者が福祉関係団体や行政と力を合わせて高齢者が安心して暮らせる地域づくりをするための仕組みです。京阪寝屋川市駅前のベル大利商店街からすぐ北に入った清水ビル2階の「寝屋川あいの会」が運営主体で、事務局長は三和清明が担っています。また、市社会福祉協議会、市医師会、支援を行っているNPO法人、自治会、市老人クラブ連合会、ケアマネージャー事業所連絡会など21団体で運営協議会を構成しています。
支援活動をするNPO団体は7団体。在宅支援が4団体、配食サービス、趣味や催し物、音楽活動による支援が3団体です。在宅支援の利用料は1時間1千円を基本としています。2022年度の実績は、利用者計336人に対し、9471回、1万1721時間の支援を行いました。多いのは掃除2775回、買い物1393回、利用者のうち要支援105人、要介護71人、それ以外が160人です。センターのコーディネーターは、相談を受ければ、依頼者にとって最適な方法を探り、住民の活動員やプロの介護事業者につなげています。
3.コロナ禍の影響で、「有償ボランティア」(活動員)もその利用者も減ったそうですが、活動員を増やすことに今、力を入れているのはなぜですか?
コロナ前の2019年は年間約1万7千件の支援活動をしましたが、3年間にわたるコロナ禍の影響で約30%も減少しました。感染の不安によって利用を控えたり、活動員の方も活動控えになったりが主な原因です。しかし、介護保険で「要支援」とされた方の利用は増えていますし、「団塊の世代」と呼ばれた方々が75歳以上の後期高齢者になり始めて、今後、こうした日常生活支援の需要は増えていきます。現在の活動員も年を取りますので、新しく活動員になってくれる人がほしいのです。このままでは、必要なサービスが受けられない“介護難民”の高齢者が出てきて福祉自体が壊滅状態になりかねません。
さらに、2025年を目途に実現を目指す「地域包括ケアシステム」では、高齢者がいつまでも元気に暮らすため、ボランティアや自治会、NPOなどによる生活支援、介護予防の取組みが重視され、そのための人材の養成が急務だからです。
寝屋川高齢者サポートセンターは2023年度、担い手づくりのための「高齢者の生活支援活動の説明会」「有償活動員増強のためのフォローアップ講座」などを多数開催しました。また、「ふるさと納税」を活用したクラウドファンディングも実施し、担い手づくりのための資金調達に取り組みました。24年度も同様な取組みを行い、有償ボランティア(活動員)などの担い手づくりに取組みたいと思っています。定年後の方、時間に少し余裕のある方、ボランティアに興味のある方はぜひ、チャレンジしてください。専業主婦が従来に約6割から約3割に減っているので苦しいですが、とくに若い人を引っ張り込みたいです。
4.「地域包括ケアシステム」とはどんな仕組みですか?
2025年を目途に、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい人生を続けられるように医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供されるシステムです。おおむね30分以内に必要なサービスが提供できる日常生活圏(中学校区)を想定しています。
厚生労働省は、要支援1、要支援2のサービスの一部を介護保険から外し、市区町村が担う「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行させようとしています。24年度は見送られましたが、利用者負担を現行の1割から2割へと増やすかどうかの課題とともに、今後の方向は、ホームヘルパーなどの専門職は「介護」に専念し、日常生活支援は、市民が担うという方向になりそうです。
5.三和清明さんが、寝屋川あいの会を立ちあげたきっかけは?
松下電器(現パナソニック)で商品企画の仕事をしてきました。定年退職後、「住んでいる地域に何か恩返しをしたい」と寝屋川市役所に相談に行きました。応対した職員の荒川俊雄さん(故人、当時企画部長)から「市民のボランティアを活性化して、寝屋川市を助けてほしい」と頼まれ、同市行財政改革住民懇談会委員になり、2年の活動を終えた後、「このまま辞めるのはもったいない」と始めたのが「あいの会」です。会社の元同僚の伝手をたどるなどして活動員を集めてきたのですが、2014年10月に「さわやか福祉財団」理事長の堀田力さんに「ボランティアで支える地域社会」という講演をしてもらったのをきっかけに、一気に活動員が50人加わりました。
大阪府の社会起業家育成支援事業に応募して助成金をもらったり、市と協力して地域通貨「げんき」を発行して助け合いサービスを交換するシステムを作ったりして官民一体のネットワークを構築し、2009年に寝屋川高齢者サポートセンターが設立されました。
※原稿は、団体へのインタビューでお話された言葉通りに掲載しています。