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会報誌CANVAS NEWS

【CANVAS NEWS】2024年12・1月号

2024年12・1月号 誌面

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社会課題の解決に向き合うNPO メールインタビュー全文

アサヒキャンプ 竹森 大祐さん

1. 貴団体は1953年から活動されていると拝見しました。活動内容は設立当時から変わらず、学生が主体で行っているのでしょうか?

 朝日新聞大阪厚生文化事業団という主管団体から、NPOアサヒキャンプへ移行しました。規模は随分と縮小されましたが、青少年の野外活動(キャンプ)を学生ボランティアがキャンプカウンセラーとなって主体的に行うという活動内容は変わっていません。

     

2.竹森さんがアサヒキャンプで活動を始められたきっかけを教えてください。差し支えなければ、活動年数も教えていただきたいです。

 そもそものきっかけは、小5の時にキャンパーとしてアサヒキャンプに参加したことでした。それから高3まで夏には必ず友人と参加し、大学生になってからはカウンセラーに応募して採用され、活動を始めました。卒業してからは離れている時期が長かったですが、20年ほど前から、再び関わっています。

 

  1. 3. 活動して良かったと思える、または印象に残っているエピソードを教えていただきたいです。

 学生カウンセラーをしていた1年目の時のことです。人生で初めて自閉症の子どもたちと接し、11のパーソナルカウンセラーとして一緒に過ごしたことは大きなインパクトとして残っています。また、別のキャンプでは100人弱のキャンパーとともに大遠泳したことですね。

  

4. 70年以上もの歴史ある貴団体ですが、活動される中で、特に大切にされている点について教えてください。

 当初からのアサヒのモットーとして、「創造と協同 Creativity & Cooperation」という言葉があります。時代とともにその意味するところは変化するし、ひとそれぞれ解釈の仕方が異なるかもしれません。それでも「みんなで力を合わせて創りあげるキャンプ」という考え方、そして「Campers’ First (キャンパーのことを第1)」を意識し、学生が自らの考えで自主的に運営していく。結果として、子どもたちとともに学生自らが成長することを大事にしたいです。

    

5. 勉強会のSNSを拝見しました。盛りだくさんの内容ですが、キャンプカウンセラーの学生が企画を行っているのでしょうか?また、勉強会の運営等は事務局の方のサポートも欠かせないのかなと思うのですが、学生とはどのようにコミュニケーションを取られているのか、教えていただきたいです。

 学生の中から正規ディレクターというメンバーが中心になって、年度代わりの時期に年間テーマやねらいを策定しそれに沿った勉強会(ほぼ月一回)の内容を企画します。カウンセラーの育成やキャンプ活動の実施という面で、私を含む「キャンプ長」という立場の者が2名います。勉強会前にはキャンプ長と正規ディレクターのMTGを数回持ってアドバイス等を行い、勉強会にも出席します。キャンプ長と学生間のコミュニケーションツールは、常にメールやLINEです。使用する会議室なども、大阪市内にある公民館の空きを学生たちが検索して、私が予約しています。

 コミュニケーションという意味では、5月以降に行うトレーニングキャンプ時に、サイト整備等を行うワークキャンプも並行して行います。若手や年配のOB・OGがワークキャンプに参加・運営しているので、そこでも学生とOB・OGは一緒になってキャンプをしています。また年に一度アサヒOB・OGファミリーキャンプという企画もあります。そういった機会で学生と支援する側の大人たち(OB・OG)とが交流しています。

 NPOの財源はアサヒOB・OGを含めた会員の方からの会費や寄付と助成金がメインですが、会費以外のマンパワーの点でもOB・OGの力は大きく、日頃の支援に感謝しながら学生たちは活動しています。

     

6.今後のことについて質問です。団体としてこれから取り組まれたい課題や、展望について教えてください。

 キャンプ活動という面では、団体の規模からいって、参加人数、回数を今以上に増やすことは難しいので、既存のキャンプのクオリティーをあげていかなければならないと感じています。そのためには「毎年プログラム内容を変えていけばいいや」ではなく、狙いや目的をきちんと考えてキャンプを組み立てていく。それを達成するためには自分にどんなスキルが必要なのかを考えることのできる学生ボランティアに育ってほしいです。今はこのような活動を行う学生は減ってきている中、アサヒに集まってくる人たちの意欲は高いと感じています。学生たちには、更なるステップアップを目指してもらうことを期待しています。

CAPセンター・JAPAN 長谷 有美子さん

1.今年で法人設立から25周年とのこと。団体の活動を始められたきっかけを教えて下さい。

 CAPセンター・JAPANは、子どもの人権が尊重され、子どもへの暴力のない社会をめざして活動しています。CAPは、子どもへの暴力防止という意味のChild Assault Preventionの英語の頭文字をとったもので、1978年にアメリカでプログラムが開発され、世界10数か国で実践されています。日本には1985年に紹介され、1995年から実践者(CAPスペシャリスト)養成が行われるようになり、全国に100ほどのCAPグループがあります。日本での活動が始まる背景には、1980年代に日本でも子ども虐待が専門家のあいだで社会問題と認識されるようになったこと、1994年に日本が「子どもの権利条約」に批准したこと、またこの頃は子どものいじめ自死が大きく報道されていたことなどがあります。1995年には阪神淡路大震災が起こり、復興のために多くのボランティアが全国から集まり、NPO元年と言われ市民活動が社会にも認知されることとなり、市民が学校で子どもたちに授業をするといったCAPの活動も後押しされていきました。これまで600万人以上のおとなと子どもがCAPプログラムに参加され、日本でのCAP活動は来年30周年となります。

 CAPセンター・JAPANは、日本でCAPスペシャリストを養成し、地域の活動を支援するトレーニングセンターとして1998年に設立され、子どもの権利や暴力防止に関する啓発、情報発信などをおもな業務として、2001年にNPO法人となり、2023年には認定NPO法人となりました。

     

2.CAPスペシャリスト(CAP活動を実践する人材)は全国でどれぐらいの人数がおられますか?

 全国で実施する「子どもへの暴力防止のための基礎講座」と「CAPスペシャリスト養成講座」(計6日間42時間)を修了された方がCAPスペシャリストの資格を得て、地域で活動するCAPグループに所属するか、CAPグループを立ち上げて活動することになります。これまでに3,000人以上を養成し、現在も500人くらいの人が活動しています。なかには、CAPの活動はしないけれど、子ども支援の立場にいる行政職や専門職の方、大学生・大学院生、子どもNPOの職員やボランティアなど、多様な立場の方が受講されます。CAPの活動は、おもに地域の幼稚園・保育所、小学校や施設などで、おとなと子どもにプログラムを提供します。行政職員やさまざまな分野で子ども支援に関わる人を対象にした単独の研修も行っています。

  

     

3.ホームページを拝見すると事業が多岐にわたっており、CAPプログラムひとつにとっても「教職員ワークショップ」「保護者ワークショップ」「子どもワークショップ」と3つのアプローチがあり、そこからまた「就学前プログラム」「小学生プログラム」「障害のある子どもたちへのプログラム」など具体的な入り口がありとても分かりやすいと思いました。事業を展開するうえで大事にしていることを教えて下さい。

 CAPは、子どもは権利の主体者であり、子どもの力を信じる、当事者である子どもの視点からとらえることを大事にして活動しています。そして、予防教育で効果をあげるために、子どもの発達(理解度や集中できる時間)にあわせて楽しみながら参加できるよう、未就学児、小学生、中高生、障がいのある子どもを対象にしたそれぞれのプログラムをもっています。

 暴力は人権侵害ですので、子どもワークショップの初めには、子どもの権利について考えます。安心して自信をもって自由な気持ちで過ごすことは、生きていくのにどうしても必要な子どもの大切な権利で、“安心・自信・自由”な気持ちでいられないときは暴力にあっているかもしれないと伝えます。そして、子どもたちがあいそうな典型的な暴力の短い劇を見てもらい、安心・自信・自由が奪われたと感じたときに何ができるかを子どもたちとCAPスペシャリストが話し合いをしながら進めていきます。最後には、個別の復習時間を設けていて、感想を話に来る子どももいますが、なかには今自分に起こっていることについて相談しに来る子どももいます。

 おとなと子どもは別々に受講します。おとなの皆さんには、子どもたちがCAPを学んだ後も復習ができるようにCAPの考え方を伝えることと併せて、暴力に関する誤った考え方や思い込み、子どもたちがSOSを出した時の話の聴き方などについて学んでいただきます。

   

4.今、子どもを取り巻く環境で一番危惧していることは何ですか?

 児童虐待相談対応件数やいじめの認知件数は年々増加しており、子どもの力が奪われ、息苦しさが増していると感じています。そして、まだまだ日常で聞かれる“子どもだから” “子どもなのに” “子どものくせに”といった言葉は、社会のなかで子どもたちを弱い立場においやり、それが子どもの暴力のあいやすさになったりしています。子ども自身もそういう言葉を浴び続けると、「どうせ自分は…」と自分の力を信じられなくなるという状況になります。

 だから、私たちは、子どもたちに「あなたは権利をもった大切な存在」と伝え、おとなには、子どもは守られるだけの存在ではなく、一人の人として尊重し、子どもの力を信じてほしいと伝えたいのです。2023年に施行したこども基本法の理念にもようやく「すべてのこどもは個人として尊重され、基本的人権が保障される」と書かれています。

   

5.今後の展望について教えて下さい。

 子どもの権利を社会で当たり前のことにし、子どもへの暴力を防いでいくことは、もっともっと多くのおとなの人が力をあわせて協力することが必要です。そのため、他団体と積極的にネットワークするようにしています。とくに、「子どもの権利条約 関西ネットワーク」では団体事務局を担い、子どもの権利普及のために努めています。団体で制作した「子どものけんり なんでやねん!すごろく」は、遊びながら子どもの権利条約を知り、子どもの意見表明を支えるツールで、2019年に子どもたちと開発後、1500セットを頒布しました。また、「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」では実行委員会団体の一つとして、ロビーイングなどにも関わっています。11月は児童虐待防止推進月間で、3年前から「ORANGE WALK」というイベントに参画し、子ども支援団体とともに児童虐待防止啓発に努めています。自団体でも、啓発の動画を制作し、Youtubeで公開しています。ぜひご覧ください。

 『なかったことにしない!子どもの声にならないSOS-まちを子どもの安全基地にしよう』

 https://youtu.be/3d_1mqHMF3A

     

    

 CAP子どもワークショップを提供した後、子どもたちからは「自分に権利があると知って嬉しかった」「元気がでた」「自分の権利を守りたい」「お友だちの力になりたい」「自分の権利がとられた。どうしよう」「これまで、友だちの権利を取っていたかもしれない…。これからは気をつけたい」などの感想が寄せられます。子どもたちは自分に権利があることを知り、大切な自分のために行動を起こそうとしています。私たちは、そのことを受けとめられるおとなをもっと増やさなければと、啓発にさらに力を入れていくことが必要と思っています。

 毎年冬には、活動支援をお願いする寄付キャンペーンをしています。20237月には認定NPO法人となり、ご寄付には寄付控除を受けられますので、ぜひ活動へのご支援をお願いいたします。

 最後に、おとなの皆さんも、権利をもった大切な人です。日々“安心して自信をもって自由な気持ち”でいられるように意識していただけると、自分の権利を大切にする姿が子どものモデルにもなります。どうぞ、おとなの皆さんも、安心して自信をもって自由な気持ちで日々をお過ごしください。