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会報誌CANVAS NEWS

【CANVAS NEWS】2024年8・9月号

2024年8・9月号 誌面

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社会課題の解決に向き合うNPO メールインタビュー全文

特定非営利活動法人ちゃいるどネット大阪 玉置章子さん

1. 団体の活動をはじめられたきっかけを教えてください。

 NPOとして活動を始めたのは2009年ですが、それ以前40年にわたって続けてきた同和保育・人権保育の取り組みが土台としてあります。部落差別をなくす人づくりを目標に行政・保育所・地域が保育所づくりを出発点に保育内容について議論し実践を高め合ってきた同和保育の取り組みが30年ありました。すべての人権という視点が障害児共生や多文化共生、男女共生へと広がっていきました。

 1999年、30年間の実績をふまえ新たに任意組織として大阪保育子育て人権情報研究センターが発足しました。設立当初は大阪府、堺市、高槻市の補助金と自主的な収入とで運営され、途中より東大阪市が加わりました。10年間、研修・研究・情報事業を続けてきましたが、府の補助金が2008年度で打ち切られるという事態になり、事務所閉鎖なのかNPO等で継続するのか迫られましたが、子どもの人権を大事にした保育を学び続けたいという、保育現場の熱い思いを受け継続していきたいという方向を選択することになりました。 

  

  

2.人権保育講座について教えていただきたく思います。年間で何回程度の開催をされていて、何人くらいの参加者があるのでしょうか。ここ数年での変化があれば教えていただきたいです。

 コロナ前、コロナ禍、コロナ後に区分して講座数(人権保育講座と保育士等キャリアアップ研修)と参加者数 ()キャリアアップ研修は1人につき15時間以上の講座を受講

 コロナ前

 2018年 62講座 3958(人権)   502(キャリア)

 2019年 55講座 4116(人権)   555(キャリア)

 コロナ禍

 2020年 54講座(開講38)  1975(人権)   148(キャリア)

 2021年 44講座 2172(人権)    80(キャリア)

 2022年 44講座 2808(人権)    120(キャリア)

 コロナ後

 2023年 46講座 3427(人権)    172(キャリア)

 

 コロナ1年目の2020年度は企画した段階(前年12月~1)ではまだコロナ感染について情報がなく、案内を配布する春頃になって大きな影響を与えることがわかってきました。だから例年通りの講座数で案内しましたが、16講座が緊急事態宣言期間で開催できませんでした。また、「3密」を避けて会場の半分の定員にする、事前振込制を当日現金受取にする、アルコール消毒や換気に配慮する、等々で研修実施のためのスタッフも倍の人数が必要となりボランティアで応援を頼むなど、参加費収入が大きく下がり人手は必要という困難な状況が2年続きました。

 2022年度より以前のやり方に戻し、受講者も戻りつつありますが、乳幼児にはあまり感染が見られないと思っていたのに、その年くらいから園で子ども、保育者の感染が増えていきました。その影響が受講者にも表れていた1年でした。

   

3.コロナ禍以前と以後で講座の内容等で変わったことはありますか?

 講座内容の組み立て方の基本は変わっていませんが、タイムリーな講座として、感染症についての最新情報、マスク使用が子どもに与える影響、コロナによる保育現場の変化などの講座を組みました。また、行政からの委託研修事業ではオンライン研修を取り入れました。当方の研修は基本は対面でという方法をとってきましたが、受講者からの反応を聞きオンライン研修のメリットも確認できました。

  

4. 人権保育講座で理論と実践では乖離が生じるものと思います。そういった中で講座を進める上で何か工夫をされていることはありますか?

 受講型の研修では、ワークを取り入れることにより、自身の考え方を表現出来たり、他市、他園の方と情報交換ができます。時間的に十分な情報交換はできませんが、実践のヒントをもらえる機会になると思います。また、実技型の研修では実技の合間に講師から話されるコメントにより実技の意味づけができます。

  

  

5. 「障害のある子と共に育つ保育コース」という講座がありましたが、ホームページには発達障害に関するものが多いように思いました。近年は、「発達障害」についての理解のニーズが特に高まっているのでしょうか。また、その他の障害(身体障害や知的障害など)についてはどのような対応をされていますか?

 同和保育の取り組みから、障害のある子も共に育ってほしいという願いが保護者、保育者から出され、主に公立保育所で1970年ころより障害児保育が始まりました。当時は身体、知的障害が多かったのではないかと思います。発達障害という診断名は子どもの様々な行動特性から定義され、非常に多くの診断名が付けられています。乳幼児期においては一人一人の行動特性(または身体・知的も含む障害)を理解した上で、個々の発達を援助し周りの友達と共に育ちあう経験が、就学以降のユニバーサル教育につながると考えています。実際、悩まれている保育者は多く、様々な視点から理解につなげていけるように提案しています。

  

6.年間これほど多くの講座を実施するには、資金集めも難しいのではないかと想像します。受講料や会費・寄付などを得るために工夫されていることはありますか。

 運営資金は会費、研修受講費、図書・情報誌売上、委託事業から捻出しています。

 会費については、研修費の会員割引、情報誌贈呈など特典をもうけるとともに、支援を呼び掛けています。

 研修については、市町村の研修予算が減ってきている中、出来るだけ多くの方に受講いただくために、「安く」「質の高い」研修を提供したいと思いコロナ前までは1講座当たり1650(スタート時は1250)で押さえていましたが、人件費増とコロナ禍を乗り切るために値上げをしました。設立当初はプロパー2名と研修の非常勤スタッフ1名、研究集会の非常勤スタッフ1名という体制でスタートしましたが、年々研修の進め方において質が求められ、使用する機器や準備、当日の運営、終わってからの事務にも時間を要するので、研修スタッフの人数も増えています。おかげで受講者からも「気持ちよく受講できた」「研修内容がよい」との嬉しい評価を受けています。

 図書販売については、必ず研修会場にコーナーを設け、研修内容と合わせて自社出版だけでなく他社から取り寄せ販売に努力しています。

 委託事業にチャレンジすることも、財源的にも事業の質を高めるためにも必要な事だと思います。

  

7.今後の活動の展望を教えていただければと思います。

 人間形成の土台を育てる乳幼児期の保育・教育の大事さは世界的にも言われだしていますが、わが国ではそれに伴う条件整備がまったく遅れています。保育者の社会的位置が低く、余裕を持って子どもに関われないのが現状です。これは以前から言われ続けてきたことですが、どうすれば改善できるのか。やっと76年ぶりに保育士の配置基準の見直しが始まったところですが、「子どもの人権尊重」の保育を具体的に提案できるように事業を創造していきたいと思います。そのためにも、若い職員の育成を核にした事業のあり方について、さまざまな層の意見を伺って考えていきたいと思います。

特定非営利活動法人グリーフサポート・リヴ 佐藤まどかさん

1.グリーフサポート・リヴについて教えてください。

 当団体は1992年に設立しました。個別相談やグループでの語る会を通して、子育て相談や遺族相談、女性支援を行っています。

  

2.設立された当時のお話をお聞かせいただきたいです。1992年11月の設立時は、「子育て支援」の言葉が一般的でなかったとHPで拝見しました。そのような中でのイベント開催は、大変だったのではと推察いたします。最初はどのくらいの規模や頻度で開催されていたのでしょうか?また、当時はどのように宣伝活動などを行っていましたか?

 月に1回、小さな集会所を借りてフリートークを行っていました。当時、私たちは子育て中で、自分の子育てを語る場を作りたい

と思っていたので、イベントを開催するという意識ではありませんでした。なので、大変さは感じていませんでしたね。宣伝は、知り合いに伝えての口コミが一番大きかった気はします。子育ての冊子の「はらっぱ」に載せてもらったこともありました。

  

3.「ひとりにしないこと」がキーワードとのことですが、人とのつながりによって、どのような変化が生まれるのでしょうか。可能な範囲でお話いただけるエピソードがあれば、お聞かせいただきたいです。

 子育ても自死遺族支援、自殺予防についても同じですが、社会や地域、家庭の中に〝人〟はいるけれど分かってもらえないのは、とても辛いものです。子育ても一人で抱えていると「何でうまくいかないのか」と、子どもを責めてしまうこともあります。子どもを寝かせた後に「また叱ってしまった」と、一人で泣いている人がいるかもなあと夜のマンションの窓の明かりを見ながら思います。でも、誰かと話して「同じ気持ちだ」とか「あるよね」と言うだけで、少し楽になるものです。実際に、叩いてしまいそうになるという方が「声を荒げることがなくなった」と話してくださることもありました。

 一方で「同じ体験をした人にしか分からない」と話される自死遺族の方人もいます。それでも「同じ体験はしていないけれど、分からないから分かりたい、と寄り添ってくれたことで、気持ちが楽になった」と話してくださる方もいらっしゃいました。(もちろん同じ体験をされた方と話すことも力になります。) 大切なのは、ズカズカとその人に入り込むのではなく、葛藤や悩みを知っておく一人になること。そしてその眼差しこそが、ご自身で歩いていく力になるのではないかと思います。

 

 

 

4.設立から30年以上活動される中で感じられることを教えていただきたいです。設立当時と今を比べると、女性が抱える悩みは変化しているでしょうか?また、当時よりは改善されたこと、まだまだ課題が残る点等あれば、教えていただきたいです。

 気が付いたら30年以上が経っていたので、大それたことはないです。30年以上経過して自分たちも年齢を重ね、子どもも大きくなり、社会は少し変わったのかなと思っていたのですが……。実は子育ての悩みも女性の悩みも変化していなかったのだと思うことが多くあります。子育てグッズも増えて、男性が育児するケースも見られるようになりました。育児を主体的にする男性も増えているので、そこは良いところだと思います。しかし、まだまだ男性が育児をすると評価されて、女性の育児は当たり前という風潮もある気がしています。子育ての中で、男女への声掛けや期待が違うことは多くありますし、その刷り込みから、男女の役割を学んでいることが多いのではないでしょうか。結婚・出産を期待され、次に子育てや家事を期待され、さらに収入も期待され、挙げ句の果てには介護(気持ちのケア)も期待されるとなると、女性の〝期待され度〟はさらに高まっているかもしれませんね。

 子育てにおいての相談は、自分の関わり方がいけなかったのではないか、家族の不和は自分のやり方がまずかったからなのでは…など、今も多くあります。女性が家族の調整役をしているのは、子ども時代からだったりしますね。

  

5.続いて、グリーフケアについて質問です。カウンセリングや語る会の活動において、一番大切にされていることは何でしょうか。 

 グリーフを抱えておられる方がまず「参加しよう」と思ったことを大切に考えています。自死された対象が同じでも、だれひとり同じことがありません。似ているけれど違います。感じ方も期待も違います。亡くなったことを悲しむのも悲しまないのもOK。ホッとするのも、そんな自分をいやだと思うこともOK。そこではどんな感情もOKとする場です。「そうなんですね」が必要なのです。どんな人のどんな感情も認める場であるといいなと思っています。立ち直るとか、元気になるとかが目標ではありません。そもそも立ち直るとかはないのですから。その痛みをどう感じていくのかということですね。リヴに来て、話して、みんな一人ひとり自分の持つ社会に戻っていく、しんどくなったらまた来るという自立した支援関係でいたいと思います。

   

   

6.「何かできることはないだろうか」と考える人は、どのようなことから始められるでしょうか。

 どのようなことから始めるというより、何かできることはないだろうか?と考える人が、何をしたいかが大切です。

 まずは気になることや興味があることを調べるなど、社会に目を向けておくことではないでしょうか。リヴでは「女性の支援をしたいからこれをしよう」「遺族支援をしたいからこうしよう」など、自分たちがしたいことしかしてこなかったと思います。だから、自分がしたいことをしてください。「誰かのために」は美しいですが、自分がこれをしたいと思ってすることと、誰かのためにすることは違うと思います。「自分がしたい」と思う気持ちが、誰かの支援になるのではないでしょうか?

 自分がしたいことをするときに、いつかではなく、今のこの現状の自分でもできることから始めてみてはどうでしょう。

  

7.最後に、今後の展望をお聞かせください。

 今、女性電話相談が認知され始めて、件数が増えています。リヴではその場限りの電話ではなく、続けて聞かせていただきますので、以前の話の続きから話せます。だからこそ生まれる継続や、繋がりができる相談を続けたいと思います。

 DV離婚をした方たちが、怖くてたまらなかった日々から自立し、ご自身を大切にして自由に生きている姿を見た時、いつも大切なことを教えて頂けていると感謝します。悩んで落ちてもちゃんと上がってこられる姿や、大きな決断される姿を見せていただけて、本当にありがたいです。

 みなさん一人ひとりに力があることを私たちは知っていて、それを見るだけで何もしていません。消極的に見えるかもしれませんが、こうした支援を今後も継続していきたいと思います。仲間が増えて、その継続をお手伝い頂けたらいいなと思っています。