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大音響の衝撃、駅で考えたこと

編集委員増田 宏幸

 かなり以前から気になっていたことの一つに、電車の警笛がある。通勤で利用するのはもっぱらJR西日本。これまで耳にした限り、同社の警笛には音階のある比較的柔らかい音と、かん高く強い音の2種類があるようだ。特に気になりだしたのは1、2年前からで、大阪駅ホームでの経験がきっかけだった。

 平日夜の19時前後だったと思う。帰宅する人で混雑したホームに電車が入線してきた瞬間、かん高く強い警笛が鳴らされた。それまで経験したことがない長さで、2秒か、あるいはそれ以上。ドップラー効果も加わったのか、あまりの大音量に思わず耳をふさいでしゃがみ込みたくなるような大きさだった。
 電車の警笛は鳴るタイミングを予測できない。この時とっさに「具合が悪くなった人がいるのでは」と思ったことで、警笛に意識が向くようになった。朝の通勤時にも点字ブロック付近を歩く人がいると警笛が鳴らされることが多い。

 国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)が2023年2月に報道発表した発達障害者の「感覚」に関する調査結果がある。調査期間は18年8月~19年1月と少し古いが、未就学児から60代まで415件の回答の分析で、「最もつらい感覚の問題」として「聴覚」は回答の約55%を占め、ダントツで最多だった。

 自由記述で、聴覚に関しては⑴泣き声や電子音など特定の音が苦手⑵同時に複数の人が話している場合に会話の聞き取りが困難⑶周囲の雑音など注目すべき音以外が大きく聞こえてしまう⑷大きな音が苦手⑸突然生じた(ように感じられる)音が苦手――といった回答があった(番号は出現頻度順)。警笛は4、5に該当するだろう。
 厚生労働省の22年12月時点の調査(以下、厚労省調査)では、医師から発達障害と診断された人の数(推計値)は87万2000人。日本の総人口の7%強に当たる。それだけでも多くの人が「音」の問題を抱えていると言えそうだが、筆者が経験したような大音響は、障害の有無を超えてほぼ誰にでも強い衝撃をもたらす。しかしそれは、音を出す側にとって想像の外なのだろう。

 鉄道ではもう一つ、点字ブロックやホーム柵の問題もある。点字ブロックは国土交通省のガイドライン(注)で示された位置に設置されているが、なぜ走行する電車に最も近いホームの端なのか、疑問だ。国土交通省によると、24年度のホームからの転落件数は2422件。このうち視覚障害のある人は62件(1件は人身事故)だった。転落総数に占める割合は2.5%ほどだが、総人口のうち視覚障害のある人は約27万3000人(厚労省調査)で0.2%強。人口比で見れば転落率は非常に高い。

 点字ブロックでホームの端(危険)を示す意味があるというが、それならもっと内側にも並行して設置すればよい。駅によっては、点字ブロックの中心部にQRコードが描かれたものがある。shikAI(視界)というアイフォン用のアプリでQRコードを読み取ると、駅構内の移動ルートを音声で案内してくれる仕組みだ。だがこれも、点字ブロックがホーム端のままでは、混雑時に白杖を振って歩くこと自体、難しいだろう。鉄道事業者には施設の安全を確保する責務がある。人であふれる狭いホームを歩く乗客に「危ないから後ろに下がってください」と言うだけでなく、具体的な対策を進めてほしい。ホーム柵の設置数が全国9390駅中1190駅(24年度、国交省調査)にとどまるだけに、なおさらだ。

 個々人の問題もある。スマホ画面を見ながら足早に歩く人、点字ブロックの上に立ち、イヤホンを着けて動画に見入る人……。白杖の音も耳に入らず、ぶつかって逆キレする人もいる。音を出すこと、駅ホームや道を歩くこと、スマホを見ること、それらはルーティン、日常の当たり前の動作なだけに、かえって他者に対する想像や配慮を欠きやすい。心しなければと思う。

(注)『公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編』(2025年9月)P196~197

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