ボラ協のオピニオン―V時評―

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NPO経営とJリーグの関係

(漫)

 プロサッカーリーグ・Jリーグの人気 チームであった横浜フリューゲルスが、横浜マリノスと合併して「横浜F・マリノス」となるとの構想は、両チームサポーターから強い反発にあっている。実質的にチームが消滅することになる横浜フリューゲルスのサポーターはもちろん、チーム名が変わる横浜マリノスのサポーターも反発を強め、経営陣や親会社との団体交渉や合併反対の署名運動など、市民運動並みの取り組みが展開されている。
 この問題は、本誌が発行される時点では一定の決着がついているかもしれない。しかし、Jリーグはもとより多くのプロスポーツで、独立採算が果たせず経営難に陥っているチームは多い。今回のような問題が今後も起こる可能性は少なくないだろう。
 ところで、このフリューゲルス事件に、市民活動団体の運営との接点を感じた読者も少なくないのではないだろうか。その接点とは、プロスポーツチームも市民活動団体も、多くの共鳴者の支持・支援が大きな意味を持つ組識だということだ。
 プロスポーツでは「ファンの支えによって…」といった表現がよく使われる。中でもサッカーの場合、わざわざファンのことを「サポーター」と呼び、地元開催ゲームを「ホーム(我が家の)ゲーム」と呼んで、その立場を積極的に位置づけてきた。ファンとチームの一体感をあおる様々な仕掛けがなされてきたわけである。
 実際、こうした中でファンの意識はチームや選手と一体化していく。選手と同じユニホームを着て応援するファンの姿は、そのことを如実に示している。冷めた見方をすれば赤の他人がボールを蹴りあっているだけとも言えるのだが、贔屓チームが勝つと大喜びし、負けると我がことのように落ち込んでしまう。ファンにとって贔屓チームを応援することは、単なるレジャーの域を越えた行為なのだ。
 そんな中で、突然、オーナー企業の都合で、実質的にチームを消滅させる決定をしたわけだから、ファンが反発するのも無理はない。フリューゲルスの親会社である全日空の対応によっては、全日空機搭乗ボイコット運動などにまで発展しそうな気配さえ出ている。全日空にはスポーツチームという「商品」の特色を読み誤った面もあったように思われる。
 ともあれ、このようにプロスポーツチームは多くのファンとつながっているという意味で、一種の「社会性」があるわけだが、これは市民活動団体の場合でも同様だ。
 元来、自発的な活動は、自由な活動だ。自らの意志で始め、自らの意志で止めることもできるわけで、どのようなテーマにどのようなペースで取り組むかは、本人の自由な意志にまかされる活動だ。
 しかし、一度でも外部から支援を受けたならば、その運営には「社会的責任」が生じることになる。活動資金をすべて自らが提供し他者の支援を受けずに独自に活動するという形で「自給自足」的に運営するのならばともかく、寄付や助成を受け、他者にボランティアとしての協力を求めるならば、その活動は社会的存在になることを自覚しなければならない。
 寄付者や助成団体、そしてボランティアの「信頼」や「期待」を受けて活動するわけだから、リーダーなどの勝手な都合で止めるわけにはいかなくなる。やむを得ず活動を休止することになる場合、それは支援者から託された期待に応えきったということでなければならないわけだ。
 さらに言えば、活動の主宰者には、簡単につぶれないだけの安定性を高める努力が求められることになる。先のプロサッカーチームの場合でも、プロサッカー先進国の一つであるイギリスの場合、まず町ごとにあるサッカー同好者の集いが発展してプロチームになったという経緯から、市民の厚い支援を基盤にしているという。また同様にプロサッカー先進国と言えるドイツの場合、不況などによって好不調の波がありうる企業のサポートは全収入の三分の一程度に抑え、しかも百を超える企業が賛助企業になることでリスク分散が図られているという。こうしたことは市民活動の経営でも参考になる。Jリーグのように少数の企業に依存するのではなく、多様な支持者を確保することが大切だということだ。
 しかも、今回の事件がワールドカップ出場で盛り返してきたサッカー人気に暗い影を落としたように、市民活動の場合も一部グループの不祥事が活動全体への不信感を広げることにもなりかねない。NPO法の成立など市民活動に追い風が吹いている今こそ、支援者の信頼に応える活動推進に努力しなければならないと言えよう。

市民活動情報誌『月刊ボランティア』1998年12月号  (通巻341号)

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