NPO(民間非営利団体)が容易に法人格を取得できる仕組みを創設した「特定非営利活動促進法」の施行から半年。法人申請数は全国で四百七十一に達し(四月九日現在)、各地で続々と法人格を得た団体が生まれている。これに伴ってNPOという言葉自体も急速に普及し、新聞でNPOという文字が載っていない日はないほどだ。
こうした中、昨年八月から大阪ボランティア協会の将来像を検討してきた「将来構想検討委員会」(委員長・牧里毎治大阪府立大学教授)は、このほど理事長への最終答申をまとめ、「協会としても本格的にNPOの支援事業を展開するべきだ」と提案した(協会会員の皆さんには会員誌『ザ・ボラ協』で詳しく紹介している)。今月は、この提案の意味について考えてみたい。
「大阪ボランティア協会でもNPO支援」と聞くと、最近のNPOブームの流れに乗って、「ボランティアからNPOへ」協会が事業の重点を移すと受け止められる方もいるかもしれない。
しかし、そうではない。逆にボランティアセンターとしての事業をさらに充実するため、協会がこれまで取り組んできたNPOに関わる事業を整理し、NPO支援についても体系的に事業を進めるべきだというのが今回の提案だ。つまり「ボランティアも、NPOも」ということになる。
この点を理解していただくには、まず「NPOとは何か?」という点を整理する必要がある。というのも、この言葉はなかなかとっつきにくい。だいたい「ボランティア」という外来語の理解でさえ大変だったのに、今度はついに英語そのもの。読み方だって見当がつきにくい。実際、以前「んぽ」って何?と聞かれたことさえあるのだが、これは「エヌ・ピー・オー」と呼ぶ。Non Profit Organization、あるいは Not for Profit Organizationの頭文字をとった言葉だ。つまり「利益のためではなく(社会的使命実現のために)活動する民間組識」ということになる。
しかし、「~ではない」という定義が含むものは実に幅広い。実際、ボランティアグループはもとより、社団法人や財団法人などの公益法人、福祉施設を経営する社会福祉法人や私立学校を経営する学校法人、私立病院、自治会、PTA、有償活動に取り組む住民参加型在宅福祉サービス団体、労働組合、政党、宗教団体…。実に多様な組識が「NPO」の中に含まれる。
しかし、これらには一つの共通点がある。いずれも「ボランティアが参加することのある組識」という点だ。そう、NPOとは「ボランティアの活動の場」なのだ。
そこで協会では、一九七六年、NPOのボランティア受入専門職員を育てるため、全国に先駆け「ボランティアコーディネーター養成講座」を開講。ボランティアが活動しやすい環境を作るため、NPO(職員)に対する事業を開始した。ボランティアの推進に取り組む中で、当然の結果として、NPOに関わることになったわけだ。
この「NPOがボランティアの活動の場だ」ということに加えて、もう一つ、ボランティアとNPOには重要な接点がある。それはNPOとは、元来、「ボランティアが経営する組織だ」という点だ。
NPO運営の中核にはボランティアがいる。「何とかしたい」とNPOを創るのは、みな、最初、ボランティアだ。そのボランティアが同じボランティアと共にグループを作るとボランティアグループになるわけだが、メンバーが全員無給では余暇活動の域を越えにくい。そこで専従スタッフを雇い、安定的で専門性をもった活動をしようというグループも出てくる。こうした活動は俗に「有償ボランティア」と呼ばれたりしてきたのだが、この組識も「営利のための組識」ではないから、まさにNPOだ。
そしてこの場合も、役員はボランティアが原則。確かに役員自身も専従で関わる場合は賃金を受けることもあるが、それこそ特定非営利活動法人は、法律で理事の三分の二以上が無給、つまり役員としてはボランティアであることになっている。
このようにNPOとはボランティアに対抗する存在ではない。それどころか、ボランティアが経営し、あるいはボランティアが活動する場という点で、ボランティアと切っても切れない関係にある存在なのだ。
こうしたことから協会では、ボランティア活動推進の一環として既にNPOに関わる事業に数多く取り組んできたわけだが、今後、これを統合整理して「NPO推進センター」として体系的に事業を推進すべきだというのが、先の提案だ。協会の新しい挑戦。是非、ご期待下さい。
市民活動情報誌『月刊ボランティア』1999年5月号 (通巻345号)
2024.10
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2024.10
再考「ポリコレ」の有用性
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