ボラ協のオピニオン―V時評―

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「サービス」と「ボランティア」の間

(漫)

 「ボランティア活動は自発性に、などと厳格に言わない方が良いんだよ。多少、強制的であっても、ともかく活動を体験することが大事なんだ。欧米では『コミュニティ・サービス』といって、ボランティア活動を通した体験学習が授業に取り入れられているんだよ」「ボランティア活動の体験を単位として認めることも進めるべき。動機が不純だと言う人がいるが、そんなことにとらわれていたら何も始まらない」…。
 ある自治体主催の青少年問題に関する協議会でのこと。某大学の教員がとうとうと自説を述べだした。あまりの威勢の良さに、事務局の行政職員の方が「自発性や無償性を尊重すべきという意見も聞きますし…」と、反論する場面さえ見られた。
 ここ数年、この種の動きがどんどん活発化している。1993年、「高校入試で生徒のボランティア活動体験を内申書で評価すべし」との通知が文部事務次官名で出され、2002年には教育改革の一環として「総合的な学習の時間」が設けられ「ボランティア活動などの体験的学習」を導入する方向が示されている。
 さらにこの亜流的動きとして、比較的軽微な罪を犯した時に、俗に「ボランティア刑」と称する罰を課す事例も出てきた。交通違反を犯した人物に数日間、無償で交通安全教育に従事することを命ずる、といった事例だ。この場合も、無償の労働で罪を償うとともに、その体験を通じて、より効果的に更正を進めようという意図がある。
 社会活動体験を通じて、社会の中での自らの役割に気付き、社会を構成する一員としての力を高めることは、もちろん大切だ。しかし、こうした強制、ないし半強制的な社会活動体験について、安易に「ボランティア」の用語が使われることを、どう考えればよいのだろうか。
 ボランティアという外来語のもとは、もちろんVOLUNTEERという英語だが、この言葉の原義は「したくてする人」。ボランティアとは自発性が核にある言葉だ。
 そして「自発的とは言われなくてもすることだが、同時に言われても、納得できなかったらしないことでもある」(草地賢一姫路工業大学教授)わけで、要は「するか、しないか」が自由な活動。それがボランティア活動だ。この点を考えると、最近の動きはボランティア活動の本質を否定しかねない動きということになる。
 このような一種の混乱が起こる背景に、英語圏では「サービス」と「ボランティア」をきちんと区別して使っているのに、日本ではこれを同じものと誤解しているところにあると思われる。
 というのも、たとえば日本で「ボランティア刑」と俗称されているものは、英語では「コミュニティ・サービス」と呼ぶ。義務である兵役は「ミリタリー・サービス」だし、良心的兵役拒否者が武器を持った兵役につかない代わりに課せられるのが、傷病兵などの施設での「シビル・サービス」。そして、徴兵=「ミリタリー・サービス」の反意語はまさに「ボランティア」、つまり志願兵ということになる。
 こうした各種の「サービス」は報酬をあてにするものではないが、しかしだからといって「ボランティア」とは呼ばない。つまり英語圏では、自発的なボランティア活動と、コミュニティの成員の義務として課せられる各種の「サービス」を、きちんと区別しているのである。
 私たちが社会生活を営む上では、納税の義務、法令遵守義務のように、社会の構成員として課せられる各種の義務があるし、また義務とまではいかないまでも、「市民」「社会人」として生きる上での様々な責任がある。こうした義務や責任を自覚し、ともに社会を支えていく意味を理解することは、教育の重要な目標の一つだろう。そこで欧米では「コミュニティー・サービス」といった形で、市民としての自覚を高める体験学習が活発になされているわけだ。
 こうしたプログラムは、日本でも、さらに充実する必要があるだろう。社会を維持する責任の一端を担おうという意識を高めることは、当然、必要だからである。
 問題は、それを「ボランティア」という形で呼ぶことにある。本来、義務なり責任の自覚に基づいてなされるべき活動と、自由な発意のもとで取り組まれる活動の区別を曖昧にしてはならない。それは、義務=「全体の合意」と「個人の意思」の区別を曖昧にすることであり、あるいは「させる責任」を曖昧にし、さらには「市民の責務」として行うべきものの中身をうやむやにしてしまうからだ。
 「自発」の活動と、義務の行為は、きちんと区別すべきだと思う。

市民活動情報誌『月刊ボランティア』1999年7・8月号 (通巻347号)

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