ボラ協のオピニオン―V時評―

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「支援者」とつながるための「評価」

(漫)

 子どもの頃の楽しい思い出に「通知表をもらうこと」をあげる人は、そう多くないはずだ。学校生活にはそれなりに楽しいことも多いが、通知表は別。単純な数字で有無を言わさず学習の結果を断定され、それもあまり良い判定ではない場合は、楽しいはずがない。それに一つの科目にも得意な部分もあれば苦手もあるわけだが、結果は「三」や「四」や「二」や…。ともかく単純な指標で一刀両断に評価されてしまう。
 そして、この点数評価の仕組みをさらに徹底したのが偏差値。元来、多様な個性をもつ子どもたちや学校をたった一つの数字で評価するため、生徒や学校がランキングされるなど様々な問題を引き起こしている。
 ともあれ「評価」と聞くと、どうもこの成績評価が連想され、いきおい不安や反発を引き起こしやすい。
 ところが、他ならぬ市民活動などNPOの世界でも、この「評価」の必要性が言われだしてきた。それも、客観的な、できれば数値化できる評価の研究が進んでいるという。「市民活動の世界でも点数化が始まるのか?」と、途惑う読者もいるだろう。どういうことなのだろうか。
 NPOの「評価」が必要だとする最大の理由は、支援者の協力を進めるためだ。
 無償や低額でサービスを提供するNPOが活動を継続・発展させるには「支援者」の協力が不可欠だ。よほどの資産家でない限り、社会的な広がりを持つ問題を個人的な努力だけで解決するのは困難だからだ。もちろん余暇の範囲でこつこつと活動に取り組むのも一つの道だが、その限界を超えて課題解決に挑戦しようとする時、支援者確保が大きな問題となってくる。
 そして、この支援者(と、その予備軍)とNPOの連携を進める上で問題となるのが、活動に関する「評価」の導入だ。
 つまり、たとえば個々のNPOの信頼性が確認されないと、マスコミがボランティア募集などに協力することも難しくなる。活動のPRとは一種の「推薦」だから、PRしようとする場合、その団体の信頼性が、ある程度、保証される必要があるからだ。こうして信頼性を評価する仕組みがないことで、市民とNPO(特に小規模なグループ)をつなぐ道が狭められてくる。
 その上、寄付とは将来への投資、つまり一種の「信託」だから、信じて託されるだけの信頼が不可欠だ。つまりNPOにとっての信頼性の高さとは、企業の資本力にも対応するものなのだ。
 しかし、これまで個々のNPOの信頼性などを客観的に評価する仕組みはなかった。その結果、どうなっていたか。
 役所のお墨付きを得ていると言える公益法人や有名人が参加している団体、あるいは欧米に本拠をもつ「外資系」の団体など、要は「ブランドイメージ」の高い団体に寄付や支援が集まり、草の根の市民団体は日の目があたらないまま孤軍奮闘を続けるという状況になりがちだったのだ。
 つまり、NPOに関する「評価」の仕組みがないことでもっとも困るのは、草の根の市民団体だということになる。そこで、活動内容を客観的に「評価」する仕組み作りの研究が始まりだしたのだ。
 もっとも、非営利の活動では、企業で言う収益力のような形でその内容を評価することは難しい。地雷除去に取り組む団体と高齢者福祉に関わる団体のどちらがより良い活動をしているのかは言えないからだ。
 そこで、支援者とNPOをつなぐための「評価」の切り口として、以下のようなものが考えられだしている。
 一つは活動に関する情報開示度。事業報告や会報で活動に関する正確な情報を公開しているか、ということだ。活動は多様な価値観のもとで自由に展開されれば良いが、支援者がその活動を理解するという面では一定の基準をクリアすることが大切だ。
 また、ボランティアの活動のしやすさ、つまり受入体制の整備状況。この面に関しては活動内容にかかわらず一定の共通基準が作りやすく、ボランティアコーディネート論での研究実績も比較的豊富だ。
 そして、寄付の効果、つまり「投資対効果」の評価だ。これは寄付者にとって重要なポイントだが、基準づくりは難しそうだ。
 この他、将来、NPOが活動を事業化する中で予想される資金需要に対応して「融資」に関する基準作りなども検討が始まっている。いずれも鍵は「指標」作りだ。
 通知表に保護者と学校をつなぐ面もあったように、「活動評価」は支援者とNPOをつなぐものだ。それに「評価」と言うとどうしても構えがちだが、これはマンネリ化を防ぐための点検の道具にもなる。今後、前向きに取り組むべき動きだろう。

市民活動情報誌『月刊ボランティア』1999年9月号   (通巻348号)

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