ボラ協のオピニオン―V時評―

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「動員」脱却の戦略

編集委員早瀬 昇

 秋から年度末にかけ各地でボランティア講座や社会福祉大会といった行事が増える。 いや福祉関係だけではない。防犯大会や人権啓発大会などと銘打って実に様々な集会や行事が開かれる。その多くは行政や外郭団体が主催するもの。主催者や来賓として首長があいさつすることも多い。
 こうした行事の際、参加者確保のため広く行われているのが「動員」だ。地域団体や傘下の組識に参加人数を割り当て、集会として格好がつく参加者数を集める。
 もちろん行事の趣旨自体は立派なものなのだが、内容的には集客力に欠ける場合が少なくない。そこで勢い、もっとも安易な対策として「動員」が一般化するわけだ。
 実際、自治会やPTAの役員になると、この「動員」の多さに驚く。立場によつては週に何度も動員がかかるという人も出てくる。しかし立場上、「個人の都合で欠席するのもまずい」と出かけることになる。すると、いつもの顔ぶれと出会う。「毎日、ご苦労様ですな」などとあいさつを交わしながら苦笑い。そんなことが実に多い。
 このように「動員」は、広く深く根をはり、日本の多くの集会や講座などの行事を、いわば「成立」させていることになる。しかし、この「動員」という手法には、多くの問題点がある。
 そもそも傘下の組識に参加者を割り当てると、義理や付き合いといった消極的な姿勢で参加する人が増える。当然…、参加意欲は低く、記念講演なども「居眠りの場」と思いながら席に座ることになる。つまり行事の開催自体が目標となるアリバイ的な形態で、まるで中身がないということも起こってくる。そして予算の無駄遣いと化す。
 それに参加者数だけで行事の「成功」を判断すること自体、中身に対する評価がないがしろにされる点で大いに問題がある。
 またこのような形態では、当然、参加者は「お客様」扱い。参加費無料は当たり前だし、弁当や飲み物、果ては記念品と称するお土産までつけることも多い。参加者に村して「わざわざ行事に来てもらっている」という意識が主催者側にあるからだ。
 このような事態は、特に行政やその外郭団体が行事を主催する場合、きわめて深刻な悪影響をもたらす。
 というのも民主主義の社会では、市民は社会の「お客様」ではないからだ。市民は主権者として、代表者(議員)を介して行政施策を決めると同時に、その結果に対する責任を負う立場にある。まさに「民が主」となって社会を動かさねばならない。
 しかし市民の「お客様」扱いは、物事は行政主導で動くものなのだという感覚につながる。それは結局、市民の間の「主権者意識」を損なっていくことにもなる。
 その上、このような慣行は参加者が、主催者に貸しを作る関係を作る。それは、いわゆる「地域ボス」を作る基盤にもなる。
 このように動員で行事をこなすことには、多くの問題がある。そこで、最近は「動員を止める」あるいは「動員は(定員の)半分位にし、後の半分はなんとか自主的参加者を集めよう」といった動きも出てきた。 つまり、時代が大きく変わろうとしている今、「市民」に関わる行政や外郭団体の関係者の意識改革が、まず求められる。それに行事の意義や行事の後に続く取り組みについてのビジョンを詰め、その切実さを市民に伝える努力が必要だ。そしてその上で、行事の開催にあたり、どうしても参加者の確保が優先する事業か、そうでないかの仕分けをする必要があるということだ。
 ここで、どうしても参加者確保が優先するとなった事業が問題になる。実際、参加者の確保を上司から強く求められる現場担当者は、上記の議論に戸惑うだけで、「それは正論かもしれませんが…」ということで終わってしまう場合もあるだろう。
 では、そこでどう考えれば良いのか。
 その一つの対策として、以上の動員のマイナス面を認識しつつ、それを逆手に取る展開があると思う。すなわち、動員で参加する多数の受け身的な参加者が、主体的に社会活動に参加するきっかけとなるプログラムを企画する。つまり、出会いは自発的ではなくとも、結果として自発的な参加につながるような企画を実現することに、徹底的に努力するのだ。
 具体的には、企画段階から市民に参加を呼びかけ、市民団体と協働することも一案だ。市民団体のノウハウやネットワークを活かすことが、もっとあって良い。
 そうして「今日は参加して良かった」「いつか自分も企画者側になりたい」と思ってもらう。結局、「動員」の弊害を克服するには、プログラム自体の魅力、面白さを高めるしかないだろう。

市民活動情報誌『月刊ボランティア』1999年12月号  (通巻351号)

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