ボラ協のオピニオン―V時評―

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家をひらき、施設をひらく文化を

大阪ボランティア協会理事長岡本 榮一

 世紀末といわれる。子どもの不登校や自殺など、ここ十年ばかりは高齢者問題とともに「こども」の問題も負けず劣らず社会問題化しだした。「二十世紀は児童の世紀」などといわれてきたが、二十一世紀もそれを引き継ぐだろう。子どもの問題は情報化社会と大いに関係がある。年末から年始にかけ「二千年問題」が世情をにぎわした。ことほど左様に、われわれの生活の中に「情報」が浸透してしまっていることに驚く。情報は子ども時代にとっては二次的な環境であるが、情報化が発展するに比例して、一次的な「人間環境」が衰退しやすいから、子どもの問題は倍増し、さらに「危機」的状況を迎えるのではないか。
 この点をどう考え、この問題にどうチャレンジするか。情報化を否定することは出来ない。けれども子どもの成長にとって、もっとも大事なのは、直接的な人間そのものの環境であるから、これを、子ども時代に如何に保障するかが人間形成の勝負となる。子育ての場は家庭であり学校であり地域社会である。だから、その場に、どのような人間的な関わりやふれあいや遊びの場を豊かに構築していくかが課題となる。
 ボランティア運動はいつも時代が抱える課題に挑戦してきた。戦後、レクリエーションやキャンプ運動、ボーイスカウト運動やYM・YWCAの運動が盛んになされたことが想起される。日本では子ども会なども、古くから地域でなされてきた伝統的な活動であった。ところが、このような活動は、近年どんどん衰退してしまいつつある。残念なことである。
 一方、今にぎわいをみせつつあるのが「福祉教育」と「ボランティア体験」の取り組みである。この動向の背景には、二〇〇二年から教育改革の一つの柱として「総合学習」が始まることがある。「生きる力」をつけるため「体験教育」の場としてのボランティア活動が注目されているからだ。
 そこで気になることがある。それはボランティア活動や福祉教育の「特殊化」の動きである。長年教論として学校教育にも関わり、神戸で「誕生日ありがとう運動」を創始した藤本隆先生は、「ボランティア活動とか福祉教育の素材は学校や教室の中にもある」と主張されている。
 学校だけでなく、身近な家庭の親子関係や近隣関係の中にも、ボランティア活動や福祉教育の「芽」や「素材」はいっぱい転がっていると考えた方が自然であろう。福祉施設に行かないと「福祉教育」ができないと考えてはならない。ボランティア活動は「人間の生き方」の一つである。だから生活の場こそ大事にする必要があろう。
 最近、ボランティア活動や福祉教育にとって大事なキーワードは「ひらく」ということではないかと考えたりする。「自己をひらく」「家をひらく」「施設をひらく」ということである。われわれは、もっと自分や家庭をひらいてはどうだろう。子どもたちやお年寄り等を家庭に招いてはどうだろう。ふれあいや支え合いの場を広げるのだ。われわれは都市化とともに「家を閉じて」きた。しかし、新しいルールをつくりながら「家をひらく」文化が創造できないだろうか。案外そこが「福祉」や「ボランティア学習」の場になるかもしれない。そこからコミュニティの創造や広がりが見つかるかもしれない。
 「施設をひらく」ことも大事だ。ボランティアとは何かをマスターし完全になってからボランティア活動をした人はいない。みんな完全ではないが、素人ながらも、福祉施設や公民館や病院などで、なんらかの役割をもたせてもらう、そのような家庭を通して、福祉とか、ボランティア活動の本当のありかたを知る。人間としての生き方や社会の仕組みを学ぶのである。
 少し前であったが、カナダのある小児病院を訪ねた時、一つの病院に三百人からなるボランティアが登録していた。高校生や大学生のボランティアも含め、生き生きと活動していた。また、その市では、病院だけでなく、美術館や博物館でもボランティアの活躍する場が用意されている姿に接して感動した。地域の公的な施設や機関が地域に「開かれ」、すばらしい公教育の機関になっているのである。
 「ひらく」ことは公共の場をつくることである。したがって、そこにはルールが要るし、公的性格をもった施設や機関では「ボランティア・コーディネーター」のような専門職も必要になる。特殊な場としてでなく、自然なかたちで、人間として暖かな触れ合いや体験の場を子ども達に用意できないだろうか。

市民活動情報誌『月刊ボランティア』2000年1・2月号 (通巻352号)

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