ボラ協のオピニオン―V時評―

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意図と効果の関係

編集委員早瀬 昇

 十月二十一日、大阪城公園で開かれた「ボランティア・市民活動フェスティバル・イン・おおさか」でのこと。会場で日頃の活発な活動を紹介していた「シニア自然大学」のコーナーで、カレハチョウなどの標本が展示されていた。「よくもこれだけ似せられたものだ」と感心するほど、その羽は落ち葉にそっくり。自然の造形の妙に感じ入ってしまった。
 ただし、このカレハチョウなどの”擬態“は、外的から身を守るため、自ら枯葉に似た姿になろうと努力した結果ではない。枯葉に似ていない羽を持った蝶が鳥などに捕食される中、突然変異で枯葉に似た羽を持った蝶が生き延びたのである。カレハチョウを生み出したのは、カレハチョウの意志ではなく、突然変異という生物が持つ特性と、鳥などの外敵の食欲だということになる。
 意図することが、そのまま結果につながるわけではない。あるいは結果(成果)は、当事者の意図によって生み出されるものだけではない。このことは、市民活動の場合にもあてはまることだ。
 たとえば、パキスタンの輸出業者が同国の通貨ルピーの高騰で苦境に立たされているという記事が、十一月十九日付の『AERA』に掲載されていた。タリバンへの攻撃を支持する同国政府を擁護するため、核実験後に課せられてきた経済制裁が解かれたことで、同国経済が好転するとの見通しが高まり、これが通貨の高騰をまねき、かえって輸出業者の経営を圧迫しているというのだ。支援の意図でなされた行為だが、通貨市場の仕組みが影響して所期の効果をあげられないでいることになる。
 このように良かれと思ってした行為が期待した効果をもたらさないことは、援助の現場では頻繁にみられることだ。
 よく指摘されることだが、災害発生時、被災地に寄せられる救援物資が、現地に混乱をまねくことは少なくない。需要を超える過剰な供給があっても、「善意の贈り物」であるがゆえに、それを返還することが困難であり、その結果、衣類などを中心に膨大な滞貨が発生。その整理や保管が、被災地の新たな負担となるということが、災害発生のたびに起こっている。
 その上、無償で配る救援物資によって、被災者自身は助かるのだが、被災地内の店舗の復興には都合の悪い状況が起きてしまうこともしばしば。立場によっては援助が援助にならない場合もある。
 このように、善意の行為というだけで、それが効果を生み出す保障はないのである。
 そしてこのことは、これと逆の場合、つまり問題が起こった場合も、その原因を担い手の意図で判断してはならない、ということでもある。
 これも震災の際、行政の機動力のなさを批判する声が大きかったが、その原因は公務員の怠慢のためというよりも、「全体の奉仕者」という立場ゆえに、全体の把握が困難な発災直後、動きが取れなくなるという立場の特殊性が大きく作用した。公平な対応が求められるのが公務員だが、その公平な取り組みをするには全体状況の把握が不可欠。ところが、災害は大きければ大きいほど、この全体把握が難しくなる。災害時には行政をあてにしない方が良いと考えた方が懸命だと言える。
 あるいは、官僚による公益法人の管理に対して批判の声が大きいが、これも官僚の支配欲だけでとらえるべきではない。というのも、民法が定められた制度上、社団法人や財団法人の設立は担当する官僚の裁量にゆだねられている。社会福祉法人や学校法人のように事業の領域を限定させていれば、明文化された規定も作りやすく、これにのっとって判断されるべきだ。しかし、社団や財団の場合、その活動領域は実に多様。それらの公益性の判定基準を、事前に明文化することは事実上、不可能だとして、官僚に判断権限をゆだねたものだ。
 しかし、そうなると官僚には自分の判断で決済したという責任が生じる。そこで、法人化を許可した後も、その活動を厳しく監督することになる。その上、事業が行き詰まった場合も設立許可者の責任が問われかねないので、保護もする。管理と保護、つまり「護送船団方式」である。
 このように公益法人を行政が管理する理由は、官僚の支配欲というより、公益性を官僚が判断するという仕組み自体に原因がある。そこで特定非営利活動促進法(NPO法)では、実際上、行政が活動の公益性を判定すること自体をなくす仕組みに変えたわけだ。
 このように、状況を判断する際に、当事者の善意や悪意で考えるのではなく、客観的な状況や仕組みの特性、課題を検証することが大切だ。精神論だけに頼らない。相手の立場から状況を見直してみる。こうした姿勢をとらなければ、せっかくの善意も効果を生み出せないわけである。

市民活動情報誌『月刊ボランティア』2001年12月号  (通巻371号)

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