ボラ協のオピニオン―V時評―

寄付する・会員になる

ボラ協を知る

ボランティアする・募る

学ぶ・深める

『月刊ボランティア』から『Volo(ウォロ)』へ

大阪ボランティア協会理事長岡本 榮一

 いよいよ本紙は『月刊ボランティア』(以下『月ボラ』とする)の時代から「市民活動総合情報誌=Volo(ウォロ)」の時代に入る。そのあゆみを振り返りつつ、新しい役割を展望してみたい。
 まず「ボランティア」という言葉から。この言葉の中にも時代の大きなうねりを感じる。大阪ボランティア協会が発足したのは、今から三十八年前の一九六五年。その翌年に『月ボラ』が発刊された。それから、ずっと「ボランティア」という言葉を社会に発信し続けた。
 当時は「ボランティア」という言葉は全くと言ってよいほど社会的な認知を得られていなかった。にもかかわらず、協会は「奉仕」ではなくて、あえて「ボランティア」という言葉を掲げた。日本語に訳し得ない深い意味を持っていたこともあり、またボランティアは民主主義社会の基本をなす行動原理であるとの信念から、この言葉を選択したのだ。
 しかし、長い間、横文字への抵抗感とともに、「ボランティアって何ですか。奉仕ではだめなんですか」などの質問がよくでた。啓発期が長く続いたのである。
 それが、一九九五年の阪神・淡路大震災での大量のボランティアの参加によって、「ボランティア」という言葉が全国に敷衍した。「ボランティア元年」などとも呼ばれた。大きな犠牲と情報社会を背景にして、はじめて「ボランティア」という言葉は日本社会で認知をうるようになったと言えようか。
 ところが最近、文部科学省は「ボランティア」という言葉を使うことを避けて「奉仕」という言葉に執着しているようにみえる。

 このように三十六年間『月ボラ』は、日本のボランティア意識の変遷を刻みつつ「ボランティア」に執着し、その活動の重要性を主張し続けてきた。
 最初の頃の『月ボラ』の記事内容は、会員向けと一般向けの記事が混在している。また「ボランティアとは何か」「どうあるべきか」といった傾向のものに加え、活動紹介などの内容が多かった。最近の『月ボラ』は少し理屈っぽい、との感想もあるにはあったが、当初よりもあかぬけし、濃い内容を維持し、読者を増やしてきた。
 もっぱら「ボランティア活動」の理論的な啓発紙の役割を果たした時代が長く続いたのである。それが、一九九〇年代に入り、企業の社会貢献活動やNPOの登場によって、ボランティアオンリーの啓発紙を脱し、ボランティア活動を柱としつつ「市民活動」への広がりをもった紙面づくりへと変貌を遂げてきた。
 紙型にも何度かの変化がある。創刊から二十一号まではB5判四頁立てで、二十二号から一九三号まではタブロイド判。一九四号からはB5判八頁として再出発し、そのままの紙型で頁数を増やしつつ継続発行してきた。
 スタッフが少ない中、毎月とはいうものの、続けることは大変なことである。『協会二十年史』の中で、創刊の頃から長く編集に関わった水原一弘さんは、その感想を「四苦八苦、七転八倒」という言葉で表現している。関わってきた人だけにわかる言葉である。三十六年間、歴代の職員と編集委員のみなさんに敬意と感謝を申したい。

 ここに装いを新たにして『Volo(ウォロ)』の第一号が誕生した。背後に編集委員のみなさんの熱い議論があった。変化する時代の要請に、真摯に応えていこうという責任からである。
 日本の社会は一九九〇年代に入って大きく変化し始めた。それまでの日本は「護送船団のような国だ」などと揶揄されてきた。専制的ではないが、中央の方針で一斉に動くような集権的なあり方からの離脱が始まった。社会の仕組みが、時代にそぐわなくなってきたのである。その変化は、規制緩和、地方分権、NPO法の制定などにみることができる。
 このような新しい動きを「市民社会」と言ったりする。市民社会という言葉は多義的であるが、市民の自立(律)や自治を大事にしようとする社会である。地方自治体は国家から独立しつつ、国家と連携していくような社会である。NPOのような多様な民間組織が、自立しながら行政や企業とパートナーシップをとって活発化していくような社会である。ヨコの責任原理、ネットワーク原理を重視する社会といってよかろうか。
 『Volo(ウォロ)』に改名したのは、このような市民社会の創造に向かい合っている(特集の用語解説参照)。それを支え創造する原理の一つに『Volo(ウォロ)』を根っことするボランタリズム(ボランタリーな精神)があるからである。
 ボランタリズムには「喜んで~する」といった個人の自発性を支える個人原理と、連帯性や自立・自治といった民主主義社会創造の社会原理が内に含まれている。
 『Volo(ウォロ)』は豊かな市民社会を創り支える言葉である。「新しい酒は新しい皮袋に」という聖書の言葉がある。編集委員のみなさんを中心に、読者の積極的な参加を得て、『Volo(ウォロ)』という名前にふさわしい、新しい時代を切り拓く市民活動総合情報誌を目指したい。

市民活動情報誌『Volo(ウォロ)』2003年1・2月号 (通巻382号)

ボラ協のオピニオン―V時評―

  • 2024.02

    新聞報道を「市民目線」で再構築しよう

    編集委員 神野 武美

  • 2024.02

    万博ボランティア、わたしたちはどう向き合い生かすか

    編集委員 永井 美佳