ボラ協のオピニオン―V時評―

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「勝手にライバル」の勧め

編集委員早瀬 昇

 本誌を『Volo』と改題して四号目。「新創刊」を機に新たな購読者を得ようと、私がeメールにつける署名には「『市民活動界のAERA』をめざしています。是非、ご購読を!」とPRしている。
 もちろん「AERA」とは朝日新聞社が発行する週刊誌。新聞報道を一歩深く掘り下げる紙面づくりが、「ボランティア・NPOをもう一歩深く」という本誌の姿勢にマッチしているし、全ページ二色以上のビジュアルな紙面も「いつか本誌も実現したい!」との思いから、「市民活動界のAERA」を目指すと大見得をきっているわけだ。
 もっとも、他業務と兼務の編集スタッフ一名を多くのボランティアスタッフが支えて発行している『Volo』が、発行部数二十八万部(公称)、多くのスタッフライターを抱え、力の入った人物ルポ「現代の肖像」の原稿料は業界トップクラスと言われるAERAを目標にすることは、大言壮語のそしりをまぬがれないかもしれない。その意味では、目標というより夢という気持ちもあった。
 そんなつもりで、このセールスコピーを使っていたら、「もっと真剣に、この目標について検討すべきでは」との助言をいただいた。
 助言の主は、乳がん早期発見のための啓発活動を行うNPO、J・POSHで活動する松田寿美子さん。昨年、このNPOを立ち上げるまで、長く企業でマーケティングに関わってこられた方だ。
 いわく、「市民活動界のAERAを目指すという発想は、明確で良い」とお褒めをいただいたのは良いのだが、「その割に月ボラから『Volo』になっても、表紙以外、AERAに近づいたとは思えない」との苦言を頂戴したのだ。
 「そう言われても、あれは一種のシャレで…」と答えたら、「では、『Volo』のコンペティター(競争者)は何なのですか? 競争相手を確定しないと『評価の基準』ができなくなりませんか?」。厳しい指摘をいただいた。
         
 市民活動は、よく「評価」が難しい世界だと言われる。
 どれだけの利益が得られるかなどの尺度で評価される企業の場合、まったく業種を超えた企業間でさえ、数値化された基準で客観的に評価されてしまう。
 しかし市民活動の場合、たとえば環境保護の活動と、国際協力の活動を比較する尺度は設定しにくい。
 それに、「こうでないといけない」という基準の設定自体も難しい。そもそもボランティア活動などしたこともないという人もたくさんいるわけだから、「するかしないか」ということさえも自由な世界だ。活動のテーマもペースもスタイルも、それぞれの関心や意欲に応じて、自由に決められる。
 そんな中では、活動の評価が、ついつい甘くなりがちになる。
 「みんな、頑張っている」「続けるだけでも大変だ」「そもそも、やらないよりは、ずっとましだ」「ともかく、我々はよくやっているよ!」
 しかし、こうしたパターンが続くと、まさに自己満足、あるいはマンネリズムの状態に陥ってしまいかねない。
 そこで、自らの活動に対する自負心を高め慢心しないことが必要だが、具体的な基準を設定しないと、評価が主観的になりやすい。
 では、どうしたら良いか。
 その対応策の一つが、松田さんの指摘する「ライバルを設定する」ということだろう。ライバルとのギャップこそが自らの評価となるからだ。これは米国企業で導入の進んだベンチマーキング(業界で優位に立つ企業をベンチマーク=測定基準とし、その長所を学ぶ)という経営手法に通じるものでもある。
 ライバルの効用は、いろいろある。
 まずライバルを意識することで評価の基準を”具体的に“設定することができる。そこで切磋琢磨が始まり、現状改革のエネルギーも生まれてくる。視野を外に広げることで、自己満足やマンネリズムにも陥りにくくなる。
 その上、ライバルとは「互いに相手の力量を認め合った競争相手。好敵手」(大辞林)だから、ライバルを見出すことは、同じ志向で取り組む仲間・同志を得ることでもある。そこで、相互に情報交換したり指摘し合える関係になれば最高だ。孤軍奮闘が多い世界だけに、この点も大切だ。
 もっとも、このライバル探しは、実はそう容易ではない。というのも、市民活動では、企業や行政はもとより、誰も手をつけていない課題に取り組む場合も多いし、独創的な視点で展開される活動も少なくない。さらに、担い手の総数自体も少なく、見習い、切磋琢磨する対象が見出せない場合も多いからだ。
 そこで、考えられるのが「勝手にライバル」なるものを想定してみることだ。つまり、『Volo』に対してAERAを想定してみたように、市民活動の外にまで視野を広げ、十歩先の姿から今を考えることだ。「我が心のうちのライバル」だから、大胆な想定も可能だ。
 そして、この「ライバル」を意識して、自らの活動を点検してみる。すると、これまで当たり前に取り組んできた活動の弱点に気づき、また自らの強みを自覚することにもなる。つまりライバルは、一種の鏡にもなる。
 だから、良きライバルを探そう。
 本誌も、AERAを「勝手にライバル」とするかどうかはともかく、魅力的な競争相手を見出し、従来の枠を超えた紙面づくりに取り組んでいきたいと思う。

市民活動情報誌『Volo(ウォロ)』2003年5月号   (通巻385号)

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