ボラ協のオピニオン―V時評―

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活動を選び取るために自らの「棚おろし」を

編集委員筒井 のり子

 はたして、ボランティアは増えているのか、減っているのか。
 これは、最近、ボランティアセンターなどのスタッフ間でよく話題になることである。ボランティアやNPOへの関心がこれほど高まっているにもかかわらず、ボランティア講座の受講者が減っていたり、切実にボランティアを必要としている団体やプログラムに希望者がなかなか集らなかったりという現実が一方にある。
 このように、ボランティア・市民活動を希望する市民と、そうした人々の参加を求めている組織(プログラム)間に不均衡が起きる要因の一つは、情報伝達チャンネル不足にあることが指摘されて久しい。
 この点に関しては、今年に入ってから大きな動きがあった。この数ヵ月の間に、インターネットによる新しいボランティア活動情報検索システムが相次いでスタートしたのである。
 一つは、全国ボランティア活動振興センターが、七月二十八日から正式スタートさせた「地域福祉・ボランティア情報ネットワーク」の中の「ボランティア情報コーナー」である。これは、全国各地の市区町村・都道府県社会福祉協議会が報告したボランティア活動情報を集約し、インターネットにアクセスした一般市民が自由に検索できるようにしたものである。
 本システムは、全国に存在する社会福祉協議会ならではの特徴を生かし、軌道に乗れば全国あらゆる地域の新鮮な活動情報が入手できるという点が特長である。また、情報を発信したい側が自由に書き込める(登録できる)仕組みのため、タイムラグがなく、また編集コストもかからないという利点がある。しかし、一方、本稿執筆時点では、登録されている情報の約八割が大阪府内のものであるなど、検索できる情報の地域格差や分野の偏りが生じやすいという弱点もある。
 もう一つは、大阪ボランティア協会が、四月からの試行期間を経て、五月一日よりスタートさせた「主に関西!ボランティア・市民活動情報ネット」である。これは、情報発信したい団体からの掲載依頼だけではなく、担当者が積極的に情報収集し内容を編集することにより、情報を求める側のニーズにより合った情報提供を心がけている点が特長である。つまり「顧客中心」のスタンスである。編集コストをかける分だけ、幅広い分野や多彩な活動内容が提供でき、また市民にわかりやすい表現を工夫できる。編集する以上は、運営団体と全く接点のない情報は掲載できない。したがって、情報は主に関西地区のものに限定されている。
 このようにシステム自体、双方に特徴があるが、検索方法もそれぞれの工夫があって興味深い。たとえば、全国ボランティア活動振興センターのシステムでは、「活動頻度」や「参加にあたっての支援」(交通費補助など)からも検索できるようになっている。後者のシステムでは、「鉄道沿線」や「具体的な日にち」での検索、また団体の所在地だけでなく、実際の「活動先(場所)」からも検索できるようになっている。前者は約千二百件、後者は二千件以上の活動情報・団体情報が登録されており、これまでの検索システムと比べると、市民が接することができる情報量は飛躍的に増加している。
 さて、情報は多ければ多いほどよい。多くなければ選択できない。しかし、情報が増えれば増えるほど選択が容易になるかというと、そう単純な話ではない。選択肢が多すぎてかえって決められないという経験は、誰しも持っているだろう。たくさんの情報の中から、一つ(とは限らないが)を自ら選び取るという作業は意外と大変なことなのである。特定の活動分野や内容に関心が定まっている人はまだしも、「何かやりたい」「何ができるかわからない」という多くの活動希望者が、”自ら選び取る“ためには、何がポイントとなるのだろうか。
 中高年の再就職支援セミナーの講師として、これまでに千人以上の再スタートを支援してきたことで注目されているキャリアカウンセラーの小島貴子(こじまたかこ)さん(埼玉県職員)は、その著書で次のように語る。「新しい仕事を見つける第一歩は、あなたの”棚おろし“から始まります」(『がんばる中高年 実践就職講座』メディアファクトリー)と。
 棚おろしとは、今まで働いてきた自分について、価値観・興味・能力の三方向から見つめ直すことで、自分らしくいきいきと働ける仕事とは何かを発見するための重要な作業であるという。自分が知っていた自分の強みと弱みを整理するだけではなく、ワークシートに取り組む中で、気づいていない自分を発見していくことに意味があるという。
 就職とボランティア活動は、もちろんまったく違う。しかし、自らを生かせる場を、自ら主体的に選び取るというプロセスは、実はとても似ている部分がある。これまでの自分を客観的に見つめるということは、それまでの自分を大切にすることでもあるが、一方では、それまでの自分の鎧やスタイルを脱ぎ捨てることでもあるだろう。すなわち、「自分を開く」という作業だ。
 この自分を開くというプロセス抜きで、いくら膨大な情報を眺めても、新たな一歩はなかなか踏み出せない。また、とりあえず踏み出したとしても、そこに新たなフィールドにおける他者と共感し、協働していく自分は形成されていないかもしれない。
 自ら活動を選び取るために、ボランティア・市民活動希望者が自分の棚おろしを行い、自分を開いていくプロセスに寄り添うこと、これが情報提供と並んで、ボランティアセンターや市民活動センターの重要な役割でもある。また、ボランティアコーディネーターに専門性が求められるゆえんでもある。ボランティア活動情報検索システムにおいて多様な工夫をしたように、さらにこのプロセスへの支援の仕方についてツールや手法の新たな開発をすれば、市民の参加支援システムとしてより生きたものになるだろう。

市民活動情報誌『Volo(ウォロ)』2003年9月号   (通巻388号)

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