ボラ協のオピニオン―V時評―

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「最後は役所にお任せ」は、もう止めよう

編集委員早瀬 昇
■「弁当値引き販売制限」の当事者は?
 「弁当類の値引き販売制限は独占禁止法違反だ」と、7月22日、公正取引委員会がコンビニ最大手のセブンイレブンに対し、同社が加盟店に行ってきた賞味期限が近付いた弁当類の値引き販売制限を止めるよう命じた。
 これに対しセブンイレブンは、翌日、売れ残った弁当類の廃棄損失の15%を本部が負担すると発表。これにより、一方的に廃棄損失を負担してきた加盟店は経営圧迫要因を抑制することができるようになった。
 この話を「めでたし、めでたし」と受け止めた読者もいるかもしれない。同社で年間600億円強の廃棄損失が出ていたというから、本部の負担は100億円。直近の営業利益が2千100億円を超えたという同社でも、簡単な決定ではなかっただろう。
 しかし、これはまだ十分に食べられる弁当類を廃棄する状態を維持する、ということでもある。セブンイレブンは値引きが常態化して商品単価が下がり、結果的に売上額が縮小することを恐れているようだが、食料自給率の低さが問題となる中、まだ食べられるものを廃棄する仕組みを続けて良いのだろうか。それに、そもそも食材の原料の大半は生き物だ。この状態は、いのちを粗末に扱う時代の象徴のようにも感じてしまう。

■行政が監視し、仲裁・調整する社会
 さて、今回の事態を指して日本経済新聞は「『もったいない』と思う気持ちに軍配があがった」と評した。軍配をあげたのは公取委。行政(今回は公取委)が行司役となり、事態の改善を「排除措置命令」という形で指示したわけだ。
 しかも、この裁定の前には公取委への加盟店などからの告発があったわけで、公取委は検事役と判事役を共に担う構造になっている。ただし、公取委の判断に不服があれば高裁(さらに最高裁)で不服審判ができるわけで、公取委が超越的な権力を持っているわけではない(事実、本稿執筆の6月26日時点で、セブンイレブン側は値引き販売制限の撤廃という公取委の指示に従うか、不服審判を請求して争うかの方針は示していない)。
 ここで気になるのは、今回のように行政機関が様々な意見を聞いた上で判断を下すという場面の多さだ。
 たとえば、高齢化の進展から医療機関の利用が増え、健康保険財政の収支バランスが厳しくなる中、医療費の自己負担が徐々に増える。そこで「これでは病気になっても医者にかかれない!」と役所に文句を言う。しかし、一方で特に若い人は、毎月、健康保険料を天引きされながら、ほとんど病院を利用しない場合も多く、こちらも「これ以上、保険料を増やすな!」と文句をいう。そこで行政内で両者の立場をふまえた「代理戦争」が行われ、なんらかの決着がつけられるという構図だ。
 利害がぶつかる当事者の仲裁役は必要だが、それは常に行政…ということで良いのだろうか。

■「市民も当事者だ」で社会が変わる…はずだが
 というのも、弁当類廃棄の問題に戻れば、このコンビニでの弁当類廃棄の当事者は、直接的には本部と加盟店だが、間接的には消費者も当事者になりうる。つまり、もし消費者がこぞって「弁当廃棄を続けるコンビニでは買わない」といった行動をとるようになれば、それこそ弁当を廃棄するコンビニの売り上げが下がるため、当然、コンビニ側の対応が変わってくるからだ。
 実際、この弁当類廃棄の抑制も考慮して同じコンビニのam/pm では弁当類を冷凍食品化し、店頭で解凍したり持ち帰りできるシステムを導入している。こうした対応をとる店を積極的に利用することで、私たちはこの問題の傍観者ではなく、当事者として問題解決に関われる。
 問題の解決を行政の監視・規制にばかり期待するのではなく、問題に関わる当事者間で解決策を探ることもできる。そして、この当事者として市民が積極的に関われば、自治的・自律的に合意を探り問題解決にあたれるし、その合意は持続的に守られやすい。
 ただし…。先の冷凍食品化スタイルが環境に優しい、と消費者から支持され am/pm のシェアが伸びているとは、とても言えない。セブンイレブンの売上高シェアは30%を優に超えるが、am/pm は1%未満の業界10位。経営再建中で、頓挫したがローソンへの売却話もあった。
 消費者が買い物先を決める際に、この弁当類廃棄問題は、未だ十分に意識されていないようだ。

■多様な利害関係者が対話する「円卓会議」創設
 そんな中、3月24日に「安全安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」なる長い名前の会議の場が生まれた。日本経団連などの経済団体、労働組合、消費者団体、政府、それにNPO/NGOに関わる人々が集い、社会的責任をキーワードに社会の課題解決を話し合おうと開設されたものだ。この円卓会議は、昨年7月、国民生活審議会の答申で設立を提案されたもので、その後、それぞれの関係者が集って会合を重ねて、そのあり方を話し合い、ようやくこの日、設立の総会を迎えることになった。
 当日は政府側から5人の大臣が出席した他、経済団体、労働組合、消費者団体、そしてNPOサイドからは公益法人協会の太田達男理事長、日本国際ボランティアセンターの星野昌子特別顧問、さわやか福祉財団の堀田力理事長が出席。この会議の進め方を話し合った。
 ここで重要なのは、この場が政府の諮問機関ではないことだ。会議の運営方法自体も、それぞれの利害関係者ごとに運営委員を出しあって話し合い、具体的な内容の検討は総合戦略部会で進め、最終的に総会で決める3層構造となっている。このメンバーも、審議会だと行政が選定するわけだが、この会議では各当事者グループが選出。NPO関係では日本NPOセンターや当協会などの呼びかけで「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク」を結成(6月25日現在で32団体が参加)し、そこでの話し合いで上記の総会委員3人を推薦し、部会委員や運営委員も選挙で選出した。
 「最後は行政にお任せ」ではなく、企業、労働者、消費者、それにNPOなどが、直接、対等な立場で対話し問題解決を図り、社会のルールを築いていく。この場がそのような形で生かされれば、日本の社会の仕組みも大きく変わっていく可能性があると思う。

【Volo(ウォロ)2009年7・8月号:掲載】

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