ボラ協のオピニオン―V時評―

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ボランティアコーディネーション力検定が意味するもの

編集委員筒井 のり子
■連携ではなく“ぐるみ”?
 「“連携”とは少し違うんです。あえて言うなら“ぐるみ”かなあ。ちょっとニュアンスが違うかもしれないけれど、“連携”という言葉では軽すぎるように思うんです」。子ども達への福祉教育のあり方をテーマに卒業研究を進めている学生が、その論文題目の相談にやってきた。当初は、「学校と社会福祉協議会」、あるいは「学校とNPO」の“連携”について書こうと思っていたのだが、いろいろな実践事例を検証するうちに少しずつ視点が変わってきたという。
 本当に、子どもへの福祉教育を考えるなら、親の考え方も変える必要があるかもしれないし、地域の人たちの福祉意識や人権意識も気になる。学校が、ある1つの団体と連携して単発の授業・イベントをするだけではなく、それを子どもたちの日常生活にどうつなげるのかが重要なのではないか。そのためには、より多くの人や組織間、より多様な場面の間のつながりを創っていくことが必要なのではないか…。
 こうした思いが、“地域ぐるみ”という表現になったようだ。“ぐるみ”という言葉に対しては、一人ひとりの意思や異論を考慮せず、集団として強引に動く…というイメージを感じる読者もいるかもしれないが、この学生の思いは別のところにある。つまりこの学生は、福祉教育の実践を、子ども、おとな、学校、地域の様々な団体、そして出来事の「関係性」という面的な広がりの中で捉え直していきたいというのである。

■道具にしない・手段化しない

 その少し前、文化庁事業の「文化ボランティアフォーラム」に参加する機会があった。“芸術と教育の連携”がテーマで、ここでも「学校とアーティスト」、あるいは「学校と博物館」の連携について、多様な角度から議論されていた。これらの連携によって生み出された、大変ユニークで刺激的な授業例もたくさん紹介される一方で、子どもがアーティストの道具になってしまう危険性や、「教育の外注化」「芸術の手段化」が起きてしまっているのではないかという、厳しい指摘もなされていた。

 “美術館と学校”といった単体で考えるのではなく、子どもたちを取り巻く人・モノ・出来事がどのように関係し合い、どのように相互に変化を与えあうのかという視点、すなわち「生態系」を意識して学習をデザインしていくことが重要であるという指摘は、先の福祉教育に関する学生の問題意識と見事に重なるものだった。
 「福祉」と「芸術」、一見まったく異なる分野だが、人育てやまちづくりから見るとき、そこには共通する何かが存在している。

■新たな「参加」と「関係性」を紡ぎ出す力

 このような中、この夏、日本で初めて「ボランティアコーディネーション力検定」なるものが誕生した。これは、特定非営利活動法人日本ボランティアコーディネーター協会が主催するもので、09年度はまず「3級検定」が実施された。

 その内容は本誌09年5月号の特集でも紹介したが、検定という仕組みだけに、公式テキスト作成にあたっては正確な記述をはかるため、これまでにはない厳密な作業が重ねられた。この作成プロセス自体が、ボランティアコーディネーションの質を高める上で意味があった。
 その第1回検定は8月に実施されたが、東京、大阪会場ともに定員を大幅に上回る申込みがあり、145人の合格者が誕生。今年は10月に第2回(東京)、第3回(大阪)、11月に福岡で第4回、そして12月に横浜、大阪で第5回の検定が実施され、来年度は実践力を問う「2級検定」の実施が予定されている。
 しかし、なぜ、今、この時代に「ボランティアコーディネーション力」(以下、VCo力)なのか。
 VCo力とは、「ボランティア活動を理解し意義を認め、その活動のプロセスで多様な人や組織が対等な関係でつながり、新たな力を生み出せるように調整することで、一人ひとりが市民社会づくりに参加することを可能にする力」のことである。
 先に見てきたように、今、福祉、教育、アート、環境、まちづくり、多文化共生などあらゆる分野で、物事を関係性の中で受け止め、多様な人々の参加と新たな関係性を紡ぎ出す力が、切実に求められている。人々を何かの道具にしたり手段化したりするのではなく、一人ひとりの存在の重さを理解し合い、つながり合うことの実践が必要とされているのである。
 増加する一方の虐待、孤独死、自殺などの背景にある癒し難い孤立感や閉塞感を思うと、こうした「新たな社会関係」(ソーシャルキャピタル)を創出していく力は、この時代にますます重要になっている。そうした関係性による総合力でしか、現代の多様で複雑化した課題は、解決できないからである。

■協働のための基盤づくり

 「コーディネーション」という言葉は、単に「つなぐ」または「調整」と訳されることが多いが、本来は、「調整する」と「対等にする」という二つの意味を持つ言葉だ。“市民社会づくり”の観点から、このコーディネーション機能を表すと、社会の中に「総合力や新たな解決力を生み出す働き」と、それぞれの間に「対等な関係をつくり出す働き」ということになる。

 今、市民、NPO、行政、企業間での「協働」推進が盛んに言われている。一方で、実際には関係者間の感覚や意識のズレが大きく、「協働」以前の問題が大きいとの声もよく聞く。そもそも同じ言葉を使っていながら、それぞれがイメージするものが違っていることもよくある。
 そこで、こうした協働作業の際のキーワードとなる「ボランティア」「市民参加」「コーディネーション」「協働」といった言葉が持つ意味や本質について、異なる団体やスタッフの間で、互いに共通するイメージをもっておれば、よりスムーズに、そしてより建設的に議論をスタートさせ、プログラム開発や事業展開ができるだろう。
 研修と試験がセットになっているVCo力検定には、テキスト講読や研修受講を通して、この「ボランティア」や「コーディネーション」についての知識やセンスを共有したい、とのねらいがある。
 ボランティアの応援を受ける人とボランティアといった、元来、対等な関係づくりがとても難しい人々の協働関係づくりを進めるために培われてきた視点や技術、知識の体系が応用できる範囲は多いはずだ。より多様な立場の人々が検定に参加することで、社会関係の創出と協働の基盤づくりが進むことを期待したい。

【Volo(ウォロ)2009年11月号:掲載】

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