ボラ協のオピニオン―V時評―

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見えない「壊されたもの」を取り戻すために-東日本大震災から1年に思う

編集委員筒井 のり子
 「この春」も「あの春」になる震災の地割れにひとつタンポポの花
 これは、昨年秋に京都で開催された第26回国民文化祭の「短歌大会」において、小中高校生の部で最高賞に選ばれた歌である。作者は福島県内に住む中学生だ。
 東日本大震災から2回目の春を迎えようとしている。作者の中学生は、今、どこにいて、どのような気持ちで「この春」を迎えようとしているのだろう。

■広範、かつ流動化した避難先
 福島県では、自宅を離れている県民は約15万人にものぼる(福島県第13回復興構想会議資料 2011年11月より)。そのうち、県内避難者(仮設住宅や民間借り上げ住宅等)が9万2千人、県外避難者は5万8千人である。避難先は全国46都道府県すべてに及んでいる。
 必然的に多くの子ども達は、転校を余儀なくされた。昨年12月に共同通信が福島県内の市町村教育委員会等に行った調査によると、東京電力福島第一原発事故の発生から12月までに、福島県内外へ転校した小中学生と転園した幼稚園児の数は1万9千人に上るという。このうち、地元の学校や園に戻って来たのは7%(約1400人)にすぎない。
 こうした避難者の多さと避難先の広範さだけでも、これまでの大規模災害と比較にならないほどだが、それに加えて、とりわけ福島県の場合は特徴的なことがある。それは、複数回にわたって避難を繰り返さざるを得なかった人がたくさんいるということだ。
 たとえば、まず「近所の避難所」に行ったが、原発事故発生により「近くの町へ避難」、そこから「遠隔地の一次避難所」へ行き、さらにそこから「二次避難所(ホテルや旅館など)」へ行った人。あるいは、いったん「県外の親戚や友人宅へ避難」し、そこから「二次避難所」へ移った人。また、ようやくたどり着いた遠隔地の避難所が満員なため、避難所を何カ所も移動としなければならなかった人も
いる。地元では、「ジプシー避難」という言葉も聞かれた。
 仮設住宅や民間借り上げ住宅に入居するまでに、これほど何度もなじみのない土地へ行き、その都度異なる住まい方をしなければならなかったということは、阪神・淡路大震災等ではあまりなかったことだ。

■見える「崩壊」と見えない「崩壊」

 地震、津波による建物、道路、田畑などの崩壊はすさまじいものだった。被災地に足を踏み入れただけ、いや、遠くにいても映像や写真を見ただけで、その深刻さは痛いほどに伝わってくる。
 しかし、すぐには見えない、見えにくい「崩壊」も深刻化している。それは一言でいえば、「つながり」の崩壊だ。避難先を転々とするうちに、あるいは、仕事や学校の関係で、離散状態になっている家族も多い。ある市の家庭児童相談所では、離婚相談が例年の2倍近くあるという。
 友人関係にも影響が出ている。何度も転校しなければならなかった子ども達も多い。ある調査では県外に避難している子どもたちの10人に1人は「友達ができない」と回答しているという。また、150戸ほどの仮設住宅でも、小学生が1人しかいないというところもある。
 さらに、いうまでもなく、コミュニティが完全に崩壊してしまった地区も多い。なじみの人が誰もいない仮設住宅で閉じこもりぎみになっている人も増えている。仮設住宅はまだ住民同士が顔を合わせやすいが、点在している民間借り上げ住宅(マンションやアパート)では、近所づきあいが皆無という人も多い。
 建物等の「見える崩壊」については、被害の甚大さゆえにその歩みは遅いとはいえ、徐々に復旧が進んでいく。しかし「見えない崩壊」は、むしろ徐々にその影響が広がっていく。

■求められる「人の関わり」と「つながりを作る力」

 こうした「見えない崩壊」を食い止め、あるいは、壊されたものを再建するには何が必要だろうか。もちろん、仕事、収入、医療などの基盤が整うことが必要なのは言うまでもないが、壊れたつながりはやはり人間が作り直していくほかない。
 人間の関わりという点では、ボランティアの存在はこの段階でもとても意味がある。ただ、この段階での活動に必要な視点の一つは「継続的な関わり」だ。そのためには被災地の地元のボランティアグループが活動を復活させたり、新たな参加者を増やしたりするような支援も必要だろう。また、継続的に訪問できない遠方のボランティアは不必要ということではない。たとえ単発の企画であっても、それが
地元での継続的な活動のプラスになるように十分考えられたものであればいい。
 もう一つの視点は、「被災された人同士」や「子ども同士」のつながりづくりを意識するということだ。たとえば、今の段階では、単に「物を贈る」ということは慎重になるべきであるが、「つながりづくり」のために生かせるような物であれば、歓迎されるだろう。具体的には、ある仮設住宅では、出来上がった手芸品ではなく、その材料(布や糸など)を定期的に送ってくれる団体があり、とても助かっているという。集会所で手芸教室を開催することができ、閉じこもりがちだった人の参加や仲間づくりにつながっている。
 継続的な関わりやつながりづくりという点で、今回の東日本大震災において、岩手・宮城・福島の3県の市町村社会福祉協議会等に採用された「生活支援相談員」(3県で約500人)の役割は重要である。彼(女)らは仮設住宅等の住民を日々ていねいに訪問し、必要なサービスにつなげ、また集会所を活用して住民同士の集う場づくりをしている。こうした被災者の生活支援を継続的に行っている地元の関係者や組織と、被災地内外のボランティア(団体)がさらに連携・協働していけるしくみも今後ますます必要になるだろう。
 重い課題を前に立ち尽くしてしまいそうな状況だ。しかし、「続ける」「つながる」という活動の基本が鍵だと言える。特別に奇をてらうことなく、積み重ねが成果を生み出すことを信じて、活動を進めたい。

【Volo(ウォロ)2012年3月号:掲載】

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