ボラ協のオピニオン―V時評―

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市民活動が創り出す「関係資本」の充実を -未来思考した「CANVAS谷町」が目指すもの

編集委員水谷 綾

 13年春。新学期がスタートし、景気浮揚の国の動きに影響されたのか、活気づいたニュースも増えてきた。
 大阪ボランティア協会(以下、協会)にとっても、この春、大きな転機となる動きがあった。大阪を取り巻く行政改革の余波を受け、11年間、協会が運営してきた「大阪NPOプラザ(以下、ONP)」は閉館することになったが、「市民活動を支える場を消してはいけない」と多くの市民や企業、団体の支援を得て、民設拠点・市民活動スクエア「CANVAS(キャンバス)谷町」を開設したことである。


 ONPは、行政施設を有償で借り受け、賃借料と同額の補助金(12年度は約3510万円)を受けることで、NPOに低廉な賃貸料で事務所や会議室の提供を可能にした施設で、7つの中間支援組織の事務所と27のブースを提供してきた。しかし、行政補助のない民間賃貸をベースにする新拠点では、低廉価格による場の提供は相当厳しい。「CANVAS谷町」は本号38―39ページに紹介しているとおり、研修室やワークスペースに加え、シェアデスク機能も備えている。ただし、ONPの6分の1以下の面積では、支援の規模に限界もあり、事務所の提供をあきらめ、共有型のブースを使いたい団体への支援のみに縮小した上での運営に舵を切りなおした。
 また、ONPは多くのNPOが入居・利用することで、NPOを知らない人にとっても、その存在からNPOを具体的にイメージしやすいランドマークのような意味合いがあった。「NPOのことならあそこで聞けば良い」というシンボルとしての意味をなし、一つの建物にたくさんの多様なNPOが集住している強みが生かされた。
 結局、ONP運営というNPO推進施策の後押しを受け、どんな働きをなしえただろう ―― ここが問われる。ONP開設が計画された2000年当時、大阪府内のNPO法人数は200法人強だったのが、13年3月現在、3331法人にまで増えた。当時、府内に皆無だった市町村立の支援センター(官設民営、公営を含む)は15以上に及ぶ。また、ONPは年平均9万人の利用があり、様々な場や機会を多くの団体に提供することができた。
 一方で、ONPも建物の運営管理や経営の持続に追われたことは否めない。ここが拠点運営の難しい面で、公の施設を管理する指定管理者制度の課題とも通じるところがある。本来であれば、民が運営する柔軟さを生かし、単体では動きにくいものに対し、同じベクトルの動きを作るような取り組みを生み出せるはずである。しかし、公的補助を受けるがゆえ中立性が問われたこともあり、そういった息吹を起こすことはなかなか難しかった。
 では、私たちが市民活動を支援する上で、どうあると「民」らしさが発揮できるのだろうか。
 今回の新拠点づくりは、まさにその「問い」との向き合いから始まった。拠点候補を探す段階から、様々な企業や支援者から情報提供をいただき、候補の絞り込みに多くの時間を割いた。また、2年近くにわたって、会員とともに「拠点のあり方」に関するワーキングや協議の機会を持ったことは、新拠点のイメージを絞り込むうえで大事なプロセスとなった。実際、数か月の議論の末に決まった「CANVAS谷町」という名称は、Civic and Voluntary ActionSquare と、夢を自由に描いていきたいというキャンバスをかけたCANVASに、新拠点の住所(大阪市中央区「谷町」2丁目)を組み合わせた〝愛称〟だ。また、協会を取り巻くすべての関係者に呼びかけ、誰でも参加OKの連続ワークショップを行い、市民活動拠点に必要な機能や大事にしたい姿勢を確認する作業を丹念に進めた。
 また、拠点開設資金を集める寄付のお願いも積極的に展開。寄せられた多額の寄付によって改装費用をまかなえ、それまでの協議で企画した構想を実現する財政的基盤となった。しかし、それに加えて、寄付者の皆さんが「自分も大阪の新たな拠点の作り手の一人」と実感できる参加の機会となったことも重要だ。
 こういったプロセスを経る中で、拠点の情報発信のあり方を発案してくれる人々との新たな出会いなど、「次への創造」に向けたネットワークも徐々に広がりつつある。まさに、人と人をつなぐ関係や思いを分かち合うプロセスの中で、ソーシャルキャピタル(「社会的関係資本」)が生まれつつある ―― そんな感じだ。


 私たち、市民活動を推進する機関としての重要な役割の一つは、まさに、この人と人のつながり、ソーシャルキャピタルを育んでいくことである。
 一昨年のNPO法大幅改正などにより、まだ未整備な面があるとはいえ、社会的「制度資本」は拡充しつつある。しかし、「制度資本」だけでは不十分なのは、自明である。
 多様な価値観を受け止め、ともに寄り添おうと思える人と人との関係を生み出していくことが必要だ。何かやってみたい!と思った人に、「やってみなはれ」と言ってくれる人の後押しや、一歩前に踏み出せた人が相談できる拠り所。その場があることで、課題を抱える人も安心できたり、活動に頑張る人も、ちょっと深呼吸するような気分になれると思う。今回の新拠点は、量的な規模は小さくなったが、そういう「関係づくり」を進め、地域やテーマだけに捉われない「関係資本」を図る場としたい。
 多くの方々のご支援によってハード面での環境整備は実現できた。ここまでのプロセスを生かし、ご支援いただいた方々の思いに応える、豊かな「関係資本」づくりを様々な形で実現できるよう進めていくことが、この新しい場における次の仕事であろう。

【Volo(ウォロ)2013年5月号:掲載】

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