ウォロ創刊500号に寄せて
本誌は本号で創刊500号を迎えた。1966年に「月刊ボランティア」として創刊し、2003年に誌名を「ウォロ(volo )」に変更。49年もの間、本誌を発行し続けられたのは、読者の皆さまからの叱咤激励と、企画・取材・執筆・編集・発送など本誌の発行全般にかかわってい る多くのボランティアの支えがあったればこそだと思う。ここに深く感謝の意を表したい。
■書くことを積み重ねる
その本誌の発行は、財政的には、なかなか厳しい状態にある。本誌発行に関わる収入は購読料と広告料、それに大阪府共同募金会の助成金だが、これ らでは本誌の発行費用がまかなえず、一定額を補填しつつ発行を続けている。
この状況は、事態の厳しさに波はあるものの、この49年間、一度も解消できていない。しかし、それでも踏ん張って発行し続けてきたのは、協会の 中核的事業の一つと位置付けているためだ。
市民ならではの活動の特性を確認し、多彩に展開される取り組みを共有し、自由で創造的な活動を進めるための視点を深め、市民活動を進めやすい環 境改善に向けて提言する……。
この作業を「書く」ことで進めてきた。「書く」という行為は、勢いだけでもとりあえず意味は通じる「話す」こととは異なり、一定の論理が必要 だ。つまり、本誌の発行は市民活動の論理を紡ぎ続けることでもあった。
■「障害者の本音」に大反響
その本誌発行の歩みのなかで特に反響の大きかった企画を敢えて一つ選ぶならば、それは87年9月号に掲載した「ボランティアって何だ!障害者言 いたい放題」と題する座談会だろう。脳性マヒ、頚椎損傷、ポリオ、全盲の障害をもつ6人が、ボランティアと付き合うなかで日頃は抑えていた不満を 赤裸々に出し合い、「恋人探しで来るな」「健全者が主導権をもってしまう」「ボランティアから子ども扱いされてる」「僕ら、ボランティアのカウンセラーになっている」など、本音の発言が満載。ボランティアのペースで進められる活動に対して障害者が抱えていた不満が一挙に吐き出された。
この内容は読売新聞のコラムで2日間にわたり報じられたほか、役所などに出向くと「あの座談会を掲載したボラ協さん」などと話題にされるほど。 読者からの反響も大きく、 10月号、11月号でも再特集を企画することになった。
市民活動は美談化されることも多い。その影の側面に焦点を当て、「無償で世話される立場だから感謝するのが当たり前」といった「常識」を問 い直した。これが、この座談会への反響が大きかった理由だろう。
■「疑う力」で深めていく
このように新たな気づきは常識とされていることを疑うことから生まれることが多い。
「公共的な活動は公平でなければならない」という、一見、常識と思えることを疑うことから、特定のテーマを選び、個々に応じた温かい対応ができ るという市民活動の自由な特性が見出せるように、物事を簡単に信じ込まず、「疑う」という姿勢も大切だ。
それにエッセイストの小島慶子氏が「平和とはたぶん、疑う自由がある世界のことだ」と書いている(注)ように、「疑ってみる」ことは思想・信条 の自由を守ることにもつながる。「疑う自由」のある社会は、異論を言う自由のある社会でもあるからだ。
特定の価値観や世界観、歴史観を信じるように強制されず、多様な視点から社会のあり方を考え、行動につなげていく。本誌は、そのような媒体とし て、これからも発行していきたいと思う。
引き続きのご購読と叱咤激励をお願いいたします。
(注) 「AERA」2015年4月20日号、「小島慶子の幸複論」
【Volo(ウォロ)2015年4・5月号:掲載】
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