ボラ協のオピニオン―V時評―

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戦後70年-無関心撲滅の年に

編集委員増田 宏幸

 ウォロが創刊500号を迎えた今年は、第二次世界大戦が終わって70年の節目でもある。8月15日の終戦記念日には新たな首相談話が出される予 定だが、そもそも沖縄の基地問題が解決されなければ、どんなにご立派な言辞も意味をなさないのではないか。翁長知事の中国訪問など、以前に本コー ナーで書いた「琉球の日本離れ」が現実化、加速化している。世界に目を転じれば、中東やアフリカを中心とするイスラム過激派のテロ、ロシアによる クリミア併合とその後の武力衝突、南シナ海の島を巡る中国と周辺国との争い、ギリシャの財政危機に振り回されるEUと株式市場……など、足元がぐ らつくような不安定要因が目白押しだ。いたずらに危機感を煽るつもりはないが、たとえば10年後の世界から見て、今年はどんな年と記憶されるのだ ろうか。

■歴史の相似
 10年後、としたのには意味がある。これもリーマンショック後の本コーナーで触れたことだが、どうしても「歴史の相似」に思いがいくからだ。 リーマンショックの2008年と、世界恐慌を招いた1929年のニューヨーク株式市場大暴落。大暴落の10年後の39年、第二次大戦が勃発する。 中国と戦争をしていた日本は前年の38年、東京オリンピック(40年)の開催を返上し、41年12月8日に米英両国との戦端を開く。リーマン ショックから10年後は2018年。「3年後が危険」などと辻占めいたことを言うつもりはない。ただ10年という歳月は短いようで長く、良くも悪 くも物事を変化させることに、意識的に目を向けたいと思うのである。
 では今から10年前には何があっただろうか。05年。米国ではブッシュ大統領が2期目をスタートさせた。日本では9月、小泉首相が仕掛けた「郵 政選挙」で自民が圧勝した。だが、ブッシュ政権が主導したイラク戦争では大量破壊兵器が存在しないことが分かり、08年の大統領選では民主党のオ バマ氏が選出された。その後の中東・アフリカ諸国の混乱は言うまでもない。小泉首相退陣後の自民は1年交代で首相が代わり、民主との政権交代につ ながった。そして東日本大震災と福島第1原発事故。政権に復帰した安倍首相は集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、憲法改正も目指す。

■分断進める「無関心」
 こうして見ると、この10年だけでも世界で、日本で、大きな変化が起きたことが分かる。その結果としての現在をあえてひと言で表すなら、「遠心 力の時代」とでも言おうか。国と国、民族と民族、宗教と宗教、さらには宗派同士が対立・反発し合う。日本も中国、韓国との関係改善が進まず、国内 ではヘイトスピーチが問題化している。そして何と言っても、沖縄には明らかに遠心力が働いている今年がさまざまな分断の象徴として記憶されるよう であれば、世界の行く末にとっては危険だ。逆に分断を乗り越えたスタートの年、人間の知性が発揮された年としなければならない。そのためには何が必要なのだろうか。
 日本でも世界でも、分断の背景に貧困や格差、差別意識があるのは間違いない。自らの現状に対する不満や被害者意識が、他者への攻撃として噴出す る。インターネットという発信手段の存在も大きい。だが当事者の行為と同じくらい重要な要素が、非当事者(と思っている人)の無関心だろう。昨年 末の衆院選も、先月の統一地方選も、惨憺たる低投票率だった。その結果として自公巨大与党があり、原発再稼働や沖縄基地問題、貧困と格差の解消な どに影響してゆく。私たち一人一人が、さまざまな問題にまともに向き合い、考えるのはしんどい作業ではある。しかし、「我関せず」で人任せにした 瞬間から、分断を食い止める圧力は急減し、大きな遠心力が働くのではないだろうか。今年を「無関心撲滅の年」としたい。

【Volo(ウォロ)2015年4・5月号:掲載】

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