ボラ協のオピニオン―V時評―

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創意工夫が誘発し合う組織へ~協会創立50周年にちなんで

編集委員早瀬 昇

 悔いはしないな たとえ倒れても/つなぐ絆が 潤す社会を/垣根越えて進め ボラ協!♪
 これはミュージカル・レミゼラブルの劇中歌「民衆の歌」を協会用にアレンジした歌詞の一部だ。去る11月7日、大阪ボランティア協会の創立50周年を記念して開かれた式典後のパーティーの最後に、有志がダンスと共に披露。アンコールでは参会者の歌声が会場にこだまし、飛び入りで踊る人たちも続出した。
 全国各地、それに韓国から272人もの参会者を得た記念行事での一コマ。さらに435人もの方々からメッセージをいただき、記念募金にも個人や企業・団体などから262件、215万7139円(11月18日現在)ものご寄付をいただいた。
 また毎日新聞、読売新聞、産経WESTなどのマスメディアでも大きく取り上げられ、50年という歩みの重さを実感することとなった。

■「数字」にこだわって歩みを分析

 50年を振り返り、今後に向けた姿勢を共有できた一日だったが、50周年記念事業としては、この日のイベントの他、半世紀の歩みをたどる『50年史』の編集も進められた。
 拠点、チームや委員会の変遷や詳細な年表などで協会の半世紀の歩みをまとめたものだが、その一環として「『数字』で見る50年」という分析を行った。これは50年間の事業報告書に掲載されたデータを集約し、半世紀の歩みを数字で把握しようというもの。その結果は58例のグラフにまとまり、視覚的に協会の歩みを把握できる。
 この中で、228種類の講座が開かれ、実数で約5万9000人が受講したこと。現在は開催されていない青少年向け体験研修は90~94年度に講座開催数の53%を占め、その90~94年度に始まった企業担当者向け研修の開催数が10~14年度には講座全体の39%になっていること。
 ボランティア活動をしたいという相談は80~84年度、95~99年度、10~14年度の3回の山があり、近年、その半数は勤労者となっていること。
 176点の書籍を発行してきたこと。
 総収入に占める支援系財源(会費、寄付、補助・助成金、基金利息)の比率は87年度の73%をピークに90年代後半までは高かったが、受託事業が増えた00年度に27%に下がった後、03年度には16%になり、14年度には26%まで戻していることなど、数値化することで気づけたことが少なくなかった。

■NPOバージョン3・0

 この「数字で見る」分析を始めとする今回の記念事業の企画の大半は、職員と協働して担当事業を企画・推進するボランティアスタッフ、つまりアソシエーター個々人の発案・思いつきから始まり、それが共有されることで実現した。
 式典参加者への記念品に、協会にちなんだモノをと「ボラっきょう」と洒落たラッキョウと、ラッキョウを付け合わせにするカレー、それにサントリーホールディングスから協賛いただいた缶ビールで「華麗なるボラっきょうセット」とあいなった。
 また、パーティー冒頭は手作りのくす玉開きだったが、無事に開いた中からは「タイガース80年、憲法70年、大阪ボランティア協会50年」の垂れ幕が出てきた。協会とともに二つの周年も祝いたいという製作者の仕掛けに拍手がわいた。
 「民衆の歌」の企画もアソシエーターの思いつきだが、この思いつきが前向きに受け止められる雰囲気が創意工夫をどんどん引き出した。
 式典当日のシンポジウムにも登壇いただいた日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事は、NPOの運営状態を3段階で説明している。つまり、きちんとNPOを運営する「NPO1・0」、寄付集めやボランティアの参加で事業を進める「NPO2・0」、そしてボランティアや支援者などNPOに関わる人々が自発的・誘発的に改革や創造を始める”発的創造”が起こる「NPO3・0」だ。
 リーダーの予想を超え、ボランティアが自主的に活動を広げていく状態こそは、NPOのイギリス英語表現であるVoluntary Organizationの理想的な姿だとも言える。
 創立50周年記念事業は、この「NPO3・0」的状態ゆえに実施できた。いや記念事業に限らず、228種類もの講座を開催してきたことに象徴されるように、協会のこれまでの事業自体、メンバー相互の誘発で取り組まれてきたのだ。協会はこれからも創意工夫が誘発し合う組織であり続けたいし、「NPO3・0」をめざす市民活動を応援し続けたいと思う。

【Volo(ウォロ)2015年12月・2016年1月号:掲載】

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