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3畳より4畳半の方が「文化的」? ―生活保護の住宅扶助に思う

編集委員神野 武美

 住民の約18人に1人が生活保護受給者という大阪市は2015年7月、生活保護世帯に対する住宅扶助の基準を見直し、単身者については居室の床面積ごとに異なる住宅扶助限度額を適用するようになった。旧基準の上限は一律月4万2000円だったが、新基準では16㎡以上4万円、 11~15㎡3万6000円、7~ 10㎡3万2000円、6㎡以下2万8000円へと引き下げられた。現在住んでいる大半の居住者は16年6月まで旧基準のままだが、新規の入居者は新基準が適 用されている。
 民間賃貸住宅の家賃が下降気味という理由もあるが、主なねらいは、設備が悪く狭い住宅に生活保護受給者を住まわせ、上限4万2000円の家賃収 入で利益を得る「貧困ビジネス」への対策である。同市は14年4月、住宅扶助を「市場動向を反映したもの」にするよう国に要望しており、「新基準」はそれを反映したものである。

 これに対し、生活保護受給者を多く受け入れる簡易宿泊所(簡宿)を転用した「サポーティブハウス」と呼ばれる賃貸共同住宅の経営者らが「入居者への生活支援に支障が出る」と反発している。台所と共用のトイレ・浴室がある居室3畳なら3万6000円、4畳半なら4万円となるが、旧簡宿は3畳が多いため、1人当たり6000円の減額。旧簡宿は100室前後の中層の鉄筋コンクリート造りが多く、100室で従業員1、2人分の給料月60万円の減収という計算だ。
 ある経営者は、共有スペース(談話室)や共用の浴室を設置しトイレをバリアフリー化し、居室もエアコンを設置、炊事が可能な電気容量に増やすなど2500万円を設備投資。スタッフも8人雇用し、見守り、服薬サポート、通院の付き添い、介護保険の相談などをしている。8施設が加盟するNPO法人サポーティブハウス連絡協議会では「生活支援のコストは家賃収入で賄う」といったルールを設けている(「生活保護費削減で存亡の危機に立つ福祉アパート」2015年11月12日付、日経ビジネスオンライン参照)。
 ところが、これに便乗する形で、登記を住宅に変えただけで入居者の生活支援をしない「看板書き換え型福祉アパート」が市内に数十軒あるといわれ ている。

 大阪市が15年11月に発表した「生活保護の適正化に向けて」は、「不正受給対策」を筆頭に掲げ、警察OBを含む調査専任チームを作るといった方法で取り締まりを強化するなど、生活保護の抑制策の色が濃い。新基準もその流れに沿うが、ただ、根拠とされた国の社会保障審議会生活保護基準部会報告書(15年1月9日)を読むと、大阪市とはニュアンスが違う。第二種社会福祉施設の無料低額宿泊所(無低)等が、住宅扶助を財源にして利用者の生活支援を行っている事例を挙げて「床面積に基づく一律判断」を戒めているからだ。
 サポーティブハウスも「無低」と同じ機能を持つのに、大阪市の眼中にはないらしい。経営者の一人は「市と話しても『3畳より4畳半の方が文化的』と言い張るばかり」と嘆く。居宅面積が広い公営住宅でも、生活支援がなければ孤立死のリスクが高まる。生活保護ケースワーカー(CW)1人が担当する世帯数は一般に都市部で80世帯程度だが、大阪市では高齢者世帯を担当するCWの場合、380世帯も受け持っており、これでは「見守り」などできるはずがない。
 こんな場合こそ、民間の力を活用すべきであろう。愛知県では、家主団体の「愛知共同住宅協会」が12年に「見守り大家さんヘルプライン」を設け、東京都ではNPO法人「ふるさとの会」が15年に不動産会社を設立し、家主と協力して生活保護受給者を支援する「寄りそい地域事業」を始めた。比較的短期間の受講や演習で得られる民間資格「伴走型支援士」(NPO法人ホームレス支援全国ネットワークが創設)など「民間の力を活用した生活支援の制度化」を図るのも一つの方法と思う。

【Volo(ウォロ)2016年2・3月号:掲載】

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