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制定後が正念場 休眠預金活用法

編集委員早瀬 昇

 昨年12月2日、参議院で「休眠預金活用法」(民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律。以下、活用法)が賛成多数で成立した。今後、内閣府に設置される審議会での検討や金融機関での準備を経て、19年秋頃から休眠預金の活用が始まることになる。
 この「休眠預金」とは、預金の出し入れ等が10年以上なかった預金のこと。金融庁の調査では、休眠化後の払い戻しを経ても、毎年、600億円以上発生。これらは金融機関の利益として処理されてきた。益金処理後も預金者はいつでも払い戻しできるが、極めて多額の休眠預金が発生しているのである。この預金を社会課題の解決に取り組む民間公益活動で活用し、国民の利益増進につなげようと制定されたのが、活用法だ。

 具体的には、活用法の施行日(来年1月1日の予定)以降に休眠状態が9年を超える預金の預金者に休眠預金化を予告する通知をし、1年後まで払い戻しなどのなかった預金が金融機関から預金保険機構に移管される。預金額が1万円未満か宛て先不明の場合は通知されない予定だが、機構に移管された後も預金者はいつでも引き出せる点はこれまでと変わらない。
 この預金を、「指定活用団体」(公募。全国で1団体)に交付し、指定活用団体は全国各地の「資金分配団体」(公募)に助成か貸し付けをする。資金分配団体は公募で選考した「民間公益活動を行う団体」に助成や貸し付け、出資を行ってその活動を活性化し、公益団体は活動を進め、その成果を報告する。
 なお、資金の活用分野は、①子ども・若者の支援、②日常生活や社会生活に困難を有する者の支援、③社会的に困難な状況に直面する地域の支援、④以上に準ずるものとして内閣府令で定める活動――とされる。また、社会課題解決のための「革新的な手法の開発を促進」し「成果に係る目標に着目」する形で活用することとされている。
 制度の詳細は今春にも内閣府が設置する審議会で詰められる。国会の審議では、「なぜ3分野だけなのか」「『革新的手法』とあるが、従来からの地道な努力で行っている活動は支援しないのか」などの質問があった。これに対し提案議員から「この三つのカテゴリーでも、従前の公益活動はかなりの分野が含まれる」「運用方法は、審議会での意見を取り入れ、本当に役立つ運用をしたい」と回答している。

 数年後には、巨額の資金が民間公益活動を通じた社会課題の解決に活用されることになる。ただし、この資金活用の前に、まず休眠預金の発生抑制を徹底しなければならない。休眠預金は、預金者が望んで生まれるわけではない。忘れられたり、払い戻しが面倒であったりという事情で発生してしまうものだ。こうした事情の預金が増えることで民間公益活動を活性化できるこの仕組みは、ギャンブルで負けた人々から得る利益で経済成長を期待するカジノ推進にも似た問題を内在しかねない。それだけに、この資金を活用する団体自身が率先して休眠預金削減のための啓発活動などを進めなければならない。
 また、休眠預金は、資金の出し手である預金者が活用先を選べない資金でもある。そこで活用法では、資金を漫然と支出するのではなく、活動の「成果」を重視することが明記されている。休眠預金を受ける場合、着実に「成果」を上げる活動体制が求められるわけだ。この成果志向に対応できる体制を団体が整えていく必要がある。
 一方、具体策を詰める審議会の透明性向上も重要だ。「新しい公共円卓会議」はインターネットで同時中継されていたが、政権交代後の「共助社会づくり懇談会」では議事録公開に変わってしまった。新たな審議会は徹底した情報公開で、国民の信頼を得ていかねばならない。
 休眠預金活用法は成立したものの、「これからが正念場」というほど多くの検討課題がある。市民活動を進める私たちは、当事者として、審議会での検討過程を注視する必要があるだろう。

【Volo(ウォロ)2017年2・3月号:掲載】

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