問われる一人ひとりの主体性 「SDGs/持続可能な開発目標」
「SDGs(Sustainable Development Goals)/持続可能な開発目標」について、聞きなれない方がまだ多いかもしれない。筆者自身も、2016年11月23日開催の「市民セクター全国会議2016」(特定非営利活動法人日本NPOセンター主催)において、重点的にSDGsが取上げられており、そこから関心を寄せたところである。
SDGsは、15年9月、「国連持続可能な開発サミット」において、150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた17の大目標(Goals)と169の小目標(Targets)からなる「持続可能な開発目標」のことで、16年1月1日に正式に発効した。SDGsは、MDGs(ミレニアム開発目標)の成果をさらに一歩進め、あらゆる形態の貧困に終止符を打つことをねらいとしている。国連は、30年までに、「すべての人に普遍的に適用されるこれら新たな目標に基づき、各国はその力を結集し、あらゆる形態の貧困に終止符を打ち、不平等と闘い、気候変動に対処しながら、誰も置き去りにしないことを確保するための取り組みを進めてゆく」とうたっている(国際連合広報センターホームページ参照 http://www.unic.or.jp/)。
ここで注目すべきは、SDGsの全体目標が「Leave no one behind~誰ひとり取り残さない」であり、目標達成の主体は各国の「すべての人」で、「その力を結集」して取り組むよううたわれていることだ。つまり、私たち一人ひとりが目標達成の主体なのである。だとすると、どうやって「じぶんごと」にするか、が私たちに問われることになる。
ここで一つの提案だが、自身の団体や会社の各種活動や事業の目的や今年度計画と、SDGsの169の小目標を照合してみることをお勧めしたい。これは、「日経エコロジー」(17年1月号)の「『SDGs』活用の最前線」に紹介されていた伊藤忠商事の「CSRアクションプラン」にヒントを得たものだが、実際に自団体の事業と照合してみるとSDGsとの関連性を実感しやすかった。
たとえば、大阪ボランティア協会で力を入れている「災害時に孤立しがちな〝スペシャルニーズ(特別な配慮が求められるもの)をもつ人〟を支える仕組み構築事業」は、「2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する」(小目標11・7)の達成に貢献するといえる。また、ボランティアコーディネーション事業の「インクルーシブボランティア研究会」や裁判員ACT連続セミナー「裁判員裁判から見えてくる社会的孤立とその課題」などで議論・検討されている内容は、「2030年までに、年令、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する」(小目標10・2)の達成と関連する。さらに協会の全事業に通じるコーディネーション機能は、「さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを推奨・推進する」(小目標17・17)の達成に貢献している(小目標は、17年2月発行、特定非営利活動法人開発教育協会発行『SDGsハンドブック―持続可能な開発目標を学ぶ』より引用)。
SDGsとどう向き合うか。国際協力や環境NGO/NPO、企業の模索は既に始まっている。政府も動き出している。地方自治体、協同組合・労働組合、市民セクターはどうか。多様な主体と対話・協働する際の共通言語となり得るSDGs。一見とっつきにくいかもしれないが、この好機にまず一歩を踏み出してみてはどうだろう。〝敬して遠ざける〟ではもったいない。
【Volo(ウォロ)2017年4・5月号:掲載】
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