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NPO法人が減少? 大切な参加の機会づくり

編集委員早瀬 昇

 今年4月、特定非営利活動法人(NPO法人)の総数が減少した。4月中に新たに認証された法人数を上回る法人の解散があったためで、11法人の減少となった。翌5月は新規認証数が解散数を大きく上回り98法人の増加、6月も24法人の増加となったが、特定非営利活動促進法(NPO法)の施行から19年、一貫して増え続けてきたNPO法人が、今後、減少に転ずる可能性が出てきた。
 実際、ここ数年、法人数の伸び(新規認証法人数から解散法人数を引いた数)はかなり低下している。99~06年度は年平均約3900法人も増加したが、07~11年度は平均2800法人、12年度以降は平均1200法人弱と増加ペースが落ちてきた。
 理由は新規認証数の減少と解散数の増加だ。新規認証数は99~06年度は年平均約4000。07~11年度は平均約3700、12年度以降では平均約2900。東日本大震災発災直後の11年度には約3900法人が誕生したが、以後、毎年、新規認証数は減り続け、16年度は2200にとどまった。

 なぜ新規認証が減ってきたのか。大きな要因と考えられるのが一般法人制度の利用増加だ。
 08年12月、公益法人制度改革の一環として一般社団法人・一般財団法人制度が始まり、これら一般法人を選択する団体が増えている。法人番号公表サイトで調べると、8月初め時点で一般社団法人が約4万4000、一般財団法人が約7000。NPO法施行から10年後に誕生した一般法人は、既にNPO法人とほぼ同数だ。この中には旧・公益法人から移行した約1万2000法人も含まれるから、新たに生まれた一般法人は約3万9000だが、NPO法人よりも2割ほど早いペースで増加している。
 監督官庁がなく、情報公開などの規制もなく、登記するだけですぐに法人化できる一般法人は、「法人格を得る」ということだけなら便利な仕組みだ。
 一方、NPO法人は当初「市民活動法人」として構想されたように、市民参加を重視する法人格。一般社団法人は正会員2人でも設立できるが、NPO法人は10人以上。市民に評価を任せるための情報公開義務や認証時の縦覧もある。それに税の優遇が得られる認定NPO法人になるには、「パブリック・サポート・テスト」でチェックされる幅広い寄付者の関与がなければならない…など、市民の参加を重視した法人格となっている。
 一般法人でも参加型の運営はできるし、NPO法人でも市民参加度の低い団体も少なくない(注)。とはいえ、NPO法人より一般法人が選ばれがちだと、市民の「参加の機会」が広がりにくくならないか。そんな懸念も感じる。

 一方、解散法人が増えてきた。年平均の法人解散数は99から06年度は約150だったが、07~11年度は約900、12年度以降は約1600だ。法施行から19年を経て、さまざまな要因から解散を決断する団体が増えてきた。
 筆者が理事を務めてきた北河内ボランティアセンターも、今年3月に解散総会を開き、33年間の歴史に幕を閉じた。特に障害児者の暮らしを市民の力で支える拠点として活動してきたが、活動を支えてきた助成金が、ここ数年、大幅に減少。緊急の募金活動などで踏ん張ってきたが、ついに解散することとなった。
 5月、その活動を総括する集いが開かれ、多くの関係者が参加。活動の蓄積を確認し、これまでの活動の意味を共有できた。市民参加度の高い団体は、解散してもメンバーの間に思いを残すことができる。そう実感した集いだった。
 法人格の種類はともかく、やはり市民参加の機会づくりが大切なのだと言えよう。

(注)内閣府の「平成27年特定非営利活動法人に関する実態調査」では、全体の32・5%は「事業活動に携わるボランティア数」が「0人」であった。

【Volo(ウォロ)2017年8・9月号:掲載】

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