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テコ役となって社会を変える~市民社会創造ファンドが示す専門性の力

編集委員早瀬 昇

 9月8日、市民社会の資金源を豊かにすることを使命に活動している市民社会創造ファンドの創立15周年を記念するフォーラムが東京で開催された。テーマは「私たちが市民活動助成で目指したこと」。100人を超える参加者が集い、同ファンドの歩みを通して、助成事業のあり方を深く考える機会となった。
 同ファンドの創立は2002年。「個人・企業・団体等からの多様な寄付や助成の受け皿となる専門的なコンサルテーション機能を備えた資金仲介組織(インターミディアリー)」として多様な助成事業を創造してきた。14の助成プログラムと二つのインターンシップ奨励プログラムを企画開発・運営し、総助成件数は2000件超、助成総額は23億円を超える。
 これほどの規模の助成を実現するには、さぞや巨額の資産があるのでは……と思われそうだが、さにあらず。昨年度末の一般正味財産は1200万円ほどだ。では、なぜかくも大規模な助成活動を実現できているのか。ここに、このファンドのユニークな特徴がある。

 記念フォーラムの冒頭、ファンド運営委員長の山岡義典氏は、助成財団スタッフの四つの役割を解説した。ネットワーカー、ファンドレイザー、ファンドマネージャー、プログラムオフィサーの四つだ。ネットワーカーとして多様な関係者との間に信頼関係を築き、ファンドレイザーとして助成資金を確保し、ファンドマネージャーとして資金を管理運用し、プログラムオフィサーとして最も有効な形で資金活用を進めるわけだ。
 これらを分担して担う場合もあれば一人が複数の役割を兼ねることもあるが、このなかであまり聞きなれないのがプログラムオフィサーだろう。
 プログラムオフィサーとは、研究機関や助成団体で研究・助成プログラムの企画立案と運営管理を担う専門職だ。日本でこの専門職員を置く助成団体はそう多くはない。しかし、今後、休眠預金の活用では重要な役割を果たすことになり、その養成と資質向上に関心が高まり始めている。
 そして市民社会創造ファンドは、このプログラムオフィサーとしての専門性を発揮することで多くの企業や個人から資金を託され、大きな社会的インパクトを生み出してきた。

 実際、助成事業の設計は複雑な方程式を解くような作業だ。
 まずテーマの選択。山積する社会課題のなかで、どの課題解決に取り組むのかを決めなければならない。このテーマが決まっている場合も、助成形態には多様な選択肢がある。たとえば課題解決のための事業自体を応援するのか、事業に取り組む団体に焦点をあて、その組織基盤整備を支援するのか、課題解決を進める調査や研究に助成するのか。助成先の選定方法も公募形態の他、その分野の活動状況を調べ財団主導で助成先を決めることもある。公募の場合も、申請書などの設計、審査委員の選定、書類審査と現場訪問の組み合わせ方、助成後のフォローなど、状況に応じて適切な助成プログラムを設計しなければならない。実際、フォーラムではファンドが取り組んでいる多彩な助成プログラムが紹介されていた。
 また、助成先との向き合い方も重要だ。助成元は助成先より強い立場となりやすいが、元来、助成は助成先が自分自身よりうまく問題解決できると信じることから始まる。助成先の熱意や努力に敬意を払い、重要なパートナーとして接する姿勢も必要だ。
 プログラムオフィサーには、このように広い視野や問題意識、開発力、それに謙虚な姿勢といった資質が求められる。市民社会創造ファンドは、この専門性を磨き、大きな成果を上げてきた。
 そしてこの実績は、私たちにも大きな希望となる。託されるに値する専門性を磨けば、社会を良くするための大きなテコとなりうるからだ。市民社会創造ファンドの15年は、このことを実証するものでもあると言えよう。

【Volo(ウォロ)2017年10・11月号:掲載】

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