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災害ボランティア再考―ボランティアの「自発性」を信じ、高める働きかけを

編集委員永井 美佳

 2020年1月17日に、阪神・淡路大震災から25年を迎える。大阪ボランティア協会(以下、協会)は、発災直後に「阪神・淡路大震災 被災地の人々を応援する市民の会」(以下、市民の会)を結成し、市民公開型のさまざまなボランティアプログラムを展開した。市民の会は、協会が代表幹事団体となり、日本青年奉仕協会、大阪YMCA、経団連1%クラブが幹事団体に就き、協力団体を合わせて全22団体で構成された。
 近年、災害発生時には社会福祉協議会(以下、社協)が中心となり「災害ボランティアセンター」(以下、災害VC)を設置し、多様な支援ネットワークを生かした協働体制をもって、被災者支援を展開することが一般的になっている。その先駆けとなる取り組みが、市民の会で展開されたといっても過言ではない。同会活動の全記録は『震災ボランティア』(1996年5月、同会発行)に収録されているので参照いただきたい。

 その『震災ボランティア』に、「市民の会のコーディネート原則」が紹介されている。三つの視点と八つの原則にまとめられているが、四半世紀を経た現在においても災害支援活動で生かせる視点・原則だと考えている。
視点1 ボランティアの〝自発性〟に期待し、〝自発性〟を高めるよう働きかける
 原則1 ボランティアの事前登録制をとらない(当日受け付けシステムの開発)
 原則2 ボランティア受け付けの人数制限をしない(新たな活動メニューの開発)
 原則3 活動内容はボランティア自身が選ぶ(ポストイット方式の開発)
 原則4 お膳立てをしすぎない(小グループ単位の活動)
視点2 被災者一人ひとりの暮らしに視点を合わせる
 原則5 対象や活動内容を限定しない
 原則6 専門コーディネーターが個別に依頼を受けとめる
視点3 バランス感覚を重視する
 原則7 ボランティアと依頼者双方の立場や言い分を客観的に受けとめる
 原則8 被災地の復興状況を見ながら常に活動内容を検討する

 近年の災害VCや災害支援活動において、視点1のボランティアの「自発性」を信じて任せる姿勢が薄れていることに筆者は懸念を抱いている。とりわけ原則2に反して、ボランティアの人数制限がかかりやすくなっている。25年前も、被災者のニーズ数よりも活動希望者数の方が多くなる傾向があり、市民の会のコーディネーターは、ボランティアの力を最大限に生かすために、日夜、活動プログラム開発に力を入れた。「人数制限をしない」ためには、視点2の「具体化していない」被災者ニーズに応えるような活動メニューの開発が必要だ。
 視点2の原則5についても、近年の災害VCの方針によっては、専門技術の必要な作業や生業支援を一律に断るなど、対象や活動内容を限定する場面が散見される。災害VCの核となる社協だけで対応しづらい対象や活動内容ならば、連携・協働している多様な支援組織の「自発性」を信じて任せ、被災者支援に挑んでほしい。  全国社会福祉協議会全国ボランティア・市民活動振興センターの尽力によって、災害VC運営のあり方が標準化され、各地に浸透されつつあるが、運営者も支援者も「いわゆる災害VC」という型にとらわれて、管理的になっていないだろうか。ボランティアやボランタリーな組織の「自発性」を信じ高める働きかけを行えば、自由で創造的な活動が生まれ、結果的に視点2の「被災者一人ひとりの暮らしに視点を合わせる」ことにつながることが多々ある。ボランティアを単なるマンパワーとしないためにも、「ボランティアの自発性を信じて任せる」姿勢は、日常的な活動でも問われる。日々の活動において実践して、次なる有事に行動できるよう備えてほしい。

【Volo(ウォロ)2019年12月・2020年1月号:掲載】

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