ボラ協のオピニオン―V時評―

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みんなが、当事者。自粛だけでなく、困難打開の努力も!

編集委員早瀬 昇

 新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるっている。感染しても症状が出ない人も少なくなく、症状のない間も感染を広げてしまう。すべての人が自分も感染者かもしれないという意識で行動しなければならない。
 確実な予防策は人と接しないことだと外出自粛が要請され、イベントや講座、集会などが軒並み中止されている。人々の交流が抑制される事態が進行し、集い、語り合い、触れ合うことが活動の核となる市民活動にも大きな影響を及ぼしている。
 その上、自粛という自主的な行動抑制を強く期待され、前号本欄で紹介した『ボランティアとファシズム』にも似た、抑圧的状況が生まれかねない懸念もある。政策批判も含む自由な意見交換は、より良い政策を民主的に生み出す不可欠の条件だ。指示に従うだけの思考停止に陥ることなく、多様な意見を出し合える自由を守らなければならない。

 一方、この事態に対処するための人々の懸命の「自助」努力が、「共助」を崩す事態も広がった。買いだめだ。
 災害時は、まず自らを守る行動が基本とされる。しかし、それが限られた資源の奪い合いになると、結果的にそれぞれの暮らしを苦しめる。トイレットペーパーはメーカーに大量の在庫があるものの、かさ高いことなどから配送量を急に増やすことが難しく、急激な購買量の増加を前に、本稿執筆時(注1)でも品薄状態が続く。
 しかも、残念ながら日本人は「身内」には心優しいが、見知らぬ人には冷たいという調査がある。
 「先月、あなたは、困っている見知らぬ人の手助けをしましたか?」という質問に「はい」と答えた割合が、経済開発協力機構(OECD)加盟国中、日本は最下位の22・7%だった(1位はカナダ66・0%、2位アメリカ65・5%)(注2)。「共助」自体も、私たちは狭い範囲に限られがちな傾向があるということになる。
 50年以上前に中根千枝・東大名誉教授が『タテ社会の人間関係~単一社会の理論』で喝破したように、「ウチ-ソト」の意識が強い日本人は、ソトとみなす人々への心遣いが弱い傾向があるようだ。

 しかし、このウイルスは「ウチ-ソト」という線引きを簡単に乗り越え、置かれた環境によりリスクに差はあるものの、私たちを分け隔てなく襲ってくる。
 入国制限どころか帰省の抑制も言われるなど、人の交流を極力抑える対応も取られている。しかし、感染のスピードは抑えられても、当面は感染が広がり続けることになるだろう。もう「ウチ」も「ソト」もないのだ。
 しかも、私たちは否応なく自分自身の暮らし方を変えることが求められる。みんな、ウイルス問題の「当事者」だ。誰かに解決を託すのではなく、それぞれができることに取り組んでいくことで、この事態を乗り越えていくしかない。

 「不要不急」の行事を延期し、会議や講座のオンライン化を進めるなど、活動を抑制したり対面する機会を減らしたりして、これ以上の感染拡大を抑制することも大切だ。
 その一方で、この人類史的な事態に立ち向かう取り組みを進めることは「必要火急」なことだろう。自粛要請の広がりの中でも、情報を共有し合い、自身で判断し行動できる可能性を探っていきたい。
 実際、外出しなくてもできることは少なくない。感染予防に関する情報の収集と整理・発信、窮状にある市民団体などへの寄付や周囲への募金の呼びかけ、応援している人たちへの電話やメール、手紙などでの安否確認や声かけ、オンラインでのさまざまな活動への参加、状況改善に向けた政策提言など、できることはたくさんある。NPOなども在宅でできるボランティアプログラム開発に努力することが大切だ。
 自粛だけではなく、この困難を打開する努力を進めていきたい。

(注1)2020年4月13日。 (注2)「OECD Factbook 2009」から。なお、10年以降、この質問は調査に加えられなくなっている。

【Volo(ウォロ)2020年4・5月号:掲載】

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