ボラ協のオピニオン―V時評―

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ヤングケアラー支援について考える

編集委員牧口 明

 18歳未満で(注)児童福祉法の対象でありながら、家族の介護のために学業をはじめ、学校生活全般に支障を来しているヤングケアラーと呼ばれる子どもたちの問題がここ数年、学校関係者や医療、福祉関係者などの間で関心を持たれるようになってきた。2010年に設立された日本ケアラー連盟などが中心となって、実態調査や支援活動もおこなわれてきた。
 このヤングケアラーが実際にどの程度存在しているのかを、総務省が17年度におこなった「就業構造基本調査」を基に、15~19歳の年齢層について毎日新聞が独自に集計した結果が去る3月22日に報道された(5月5日続報掲載)。
 それによると、「15~19歳の介護者は3万7100人。その約8割が通学しながら介護をして」おり、介護の頻度は週に4日以上が1万2700人と、週に1~3日の9800人や月に3日以内の7200人を上回ることなどが分かった。
 また、昨年3月に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」(以下三菱UFJ調査報告、表記は原文通り)によると、実際に担っているケアの中味としては「きょうだいの世話」が最も多く、「(買物に始まり、調理、食事介助、後片付けに至る)食事の世話」「掃除、洗濯などの家事」などが続き、「衣服の着脱介助、移動介助」なども3割に上る。これらは、他の幾つかの調査でもほぼ同傾向の結果が出ている。
 このようなヤングケアラーについて指摘されているのが、「提出書類などの忘れ物が多い」「宿題をしてこない」「部活に入っていないなど友だちとの関わりが薄い」「遅刻・早退・欠席が多い」等々の学校生活上の問題であり、それはまた不登校などの問題にも結び付く。
 さらに、近年「子どもの貧困」が社会的に注目されているが、ヤングケアラー家庭の3割は生活保護を受給しており、ヤングケアラーの問題はこの問題ともリンクしている。
 ヤングケアラーの問題にいち早く取り組んだイギリスでは80年代末から精力的に支援策が講じられてきたが、日本でも近年、専門家・関係者の間でさまざまな支援のあり方が検討され、一部は実施されている。その土台となっているのは当事者からの聴き取りや、当事者自身による語りである。  先の三菱UFJ調査報告では、「誰にも相談できない、自分の話を聞いてもらえない、気が抜ける場所がない」「中学までの担任には母親の症状について説明をしていたが、特に(略)困りごとなどをきいてくれる様子はなく、周囲に話はできないと思った」「とにかく卒業できるまで頑張ろうという気持ちで、卒業後のことは全く考えられなかった。当時はしんどいと思うより、自分がやらなければ暮らしていけないという思いで他に選択肢がなかった」などの当事者の声が紹介されている。
 このような声に応えるためには、「当事者がケアについて安心して話せる場所(ケアラーズ・カフェなど)を創る」「(公的サービスにつなげることで)ヤングケアラーが担う介護負担を減らしていく」「親も含めての支援を図るなかで子どもの学習権を守る」といった取り組みとともに、この問題に関する行政責任を明確化し、行政として対応すべき責任を果たしつつ民間の支援活動をも支える根拠となる法律の制定も求められる。
 ヤングケアラー支援に当たっては、年齢の変化によって支援が途切れることなく継続的にサポートできる「縦のネットワーク」と、さまざまな関係機関や団体の縦割りの支援を超える「横のネットワーク」の構築が必要とも言われる(成蹊大学・澁谷智子准教授)。私たちにも、そのネットワークの一端を担うことが求められている。

(注)ヤングケアラーの年齢定義は必ずしも定まってはいないが、この問題の先進国イギリスでは「18歳未満」としており、日本でもこの定義が多くの関係者に受け入れられている。

【Volo(ウォロ)2020年6・7月号:掲載】

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