ボラ協のオピニオン―V時評―

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オンライン化における障害者の参加の質

編集委員筒井 のり子

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、この半年で日本社会では一気にオンライン化が進んだ。企業はもちろんのこと、行政やNPOにおいてもオンラインでの会議や研修が一般化しつつある。大学においては、前期中はほぼ対面授業は行われず、オンラインなどの遠隔授業が展開された。後期の授業形態についても、文科省が9月15日に発表した調査結果によると、全国の国公私立大学(短大含む)と高等専門学校(計1060校)の約8割が、対面授業とオンライン授業の併用を考えているという(注1)。
 徐々に感染状況が落ち着きを見せ始めているとはいうものの、いつまた拡大に転ずるかは予測がつかず、大人数での集まりや密な接触は引き続き慎重にならざるを得ない。また、仮にコロナの影響が非常に弱まったとしても、この「オンライン化」の流れが元に戻るとは考えにくい。
 オンラインの授業や会議に慣れていなかった多くの人にとって、当初は通信環境や技術面でかなりのストレスがあったと推察されるが、始めてみれば「意外と使える」「可能性が広がった(遠方の人との会議など)」とプラス面も実感しているのではないだろうか。

 そのような中、気になるのは、障害のある人たちの参加の質である。例えば、オンラインによる授業やセミナー等において、聴覚や視覚に障害のある参加者への配慮が主催者によってどの程度なされているのか。また少人数でのオンライン会議の場合も、参加者同士でどのような配慮や協力体制が意識されているのだろうか。
 株式会社ミライロ(ユニバーサルデザインを推進)が大学向けに5月に実施した「障害のある学生への授業環境整備」に関するアンケート(注2)では、すべての大学(35大学)が、オンライン授業において、障害のある学生への対応に「課題を感じている」または「課題を把握できていない」と回答。特に聴覚障害のある学生への対応に課題を感じているとのことだった。
 では、障害のある学生自身は、オンライン授業についてどのように受け止めているのだろうか。筆者が勤務する大学が障害のある学生に対して6月に実施した「オンライン授業に関する調査」(注3)によれば、むしろ肯定的に捉えている学生が多かった。例えば、通学の負担軽減(車いす利用者など)、学内の騒音や雑音からの解放(発達障害の学生など)、体調に合わせた受講が可能、繰り返し視聴し理解度が向上、といった点が挙げられている。少なくともこの調査では、オンライン授業は情報伝達や情報収集における社会的障壁を軽減したと言える。


 ただし、それは通信環境や情報保障(UDトークなど音声を可視化するアプリケーションの導入、遠隔ノートテイクなど)がある程度担保されていることが前提である。大学の場合は、比較的そうした整備が進められつつあるが、社会全体ではどうだろうか。
 市民活動団体もオンラインでのセミナーやミーティングを主催することが今後ますます増加すると思われるが、字幕対応や遠隔手話などの知識や技術を学んでおく必要があるだろう。
 また、根本的に重要なのは、ミーティングにおけるファシリテーション力であろう。障害の有無に関わりなくであるが、取り残される人がないよう、発言しやすい雰囲気づくりやわかりやすい資料の提示、チャットの有効活用など、オンラインを前提とした会議の組み立てが必要となる。コロナ禍を契機に、ユニバーサルデザインを意識したミーティングが広がっていくことが期待される。

(注1)「大学等における後期等の授業の実施方針等に関する調査」(2020年8月25日~9月11日)
(注2)https://www.mirairo.co.jp/information/post-20200602-0
(注3)龍谷大学「障がいのある学生のオンライン授業受講状況調査」(2020年6月5日~6月11日)

【Volo(ウォロ)2020年10・11月号:掲載】

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