ボラ協のオピニオン―V時評―

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政治と政策を動かす 選挙以外の〝バイパス〟を

編集委員増田 宏幸

 菅義偉首相が自民党総裁選への不出馬を表明し、在任約1年で総理・総裁を退いた。菅政権の発足当時、首相個人のトップリーダーとしてのビジョンや、政権の成立過程に強い疑義を覚えた筆者は、昨年10・11月号の本欄で批判的立場から菅政権を論評した。少し長いが要約・引用して当時を振り返ると同時に、政治に対して市民の側から何ができるのかを改めて考えてみたい。

 1年前に問題点として挙げたのは主に次の3点だった(大意)。
 ①菅首相は日本学術会議の会員任命で6人を推薦名簿から外し、しかも理由を説明していない。政権が決めた政策の方向性に反対する省庁幹部には「異動してもらう」とも明言し、「忖度せよ」の一層の拡大が懸念される。
 ②統制色を強める一方、菅首相が目指す大きな政策は見えない。総裁選立候補も政権構想も表明していない段階で二階・麻生・竹下・石原各派と、安倍前首相が所属する細田派は大挙して菅氏を総裁候補に推し、「安倍継承」を既成事実化した。政権党の国会議員は国民の代表として役割を果たしたと言えるのか。
 ③菅政権が引き継いだ安倍前政権の負の側面は、集団的自衛権行使を閣議だけで容認してしまったことをはじめ、熟議を軽視した国会運営、公文書の恣意的な扱いなど多数ある。その点への自省・反省がなければ、政策決定の不透明さ、説明の回避(拒否)、明示されない忖度の勧奨がさらに強まる。
 これに続き筆者は「市民の側はどう対抗すれば良いのだろう」と自問し、「与党は高支持率を背景に、年内(2020年内)にも解散・総選挙に打って出るとの観測がある。忖度の広がりで市民の自由が窒息死しないために、健全な社会を失って後悔しないために、一票の使い方を含め確固たる意志を示したい」と書いた。この考えは現在も変わらない。ただ、新たな自民党総裁(新首相)の下で実施される次期衆院選で、この3点は既に「過去」になってはいないだろうか。

 菅首相は結局、3点について説明も改善もないまま、「不人気」ゆえに政権維持を断念した。後継候補による総裁選でも、明確な意見表明はほとんどなかった。このまま総選挙で与党が勝利(過半数以上を維持)すれば、再び「全ては支持された」となり、森友・加計問題の公文書改ざんなどが解明される機運は遠のくだろう。しかしこの3点は、日本の政治の方向性を考える上で本質的な問題を含んでいる。首相が代わったからといって見過ごすことはできないし、批判している野党が政権を取った場合、その批判を本当に政策として実現するのか注視が必要なのは言うまでもない(旧民主党政権は、野党時代に主張した「官房機密費の使途公開」を政権獲得後に実現しなかった)。
 政権への批判・不満にも、野党への批判・不満にも、それぞれ理由があるだろう。どちらにも投票できず、棄権を選ぶ有権者が多いことも理解はできる。ただ投票行動とは別に、新型コロナ対策をはじめ現在の政治への疑問や不満は、かつてなく充満しているように感じる。そしてその声が政府や国会に届く道筋も、かつてなく目詰まりしているように感じる。
 「目詰まり=代議制民主主義の不全感」を諦めたり放置したり、あるいはそんな政治に依存したりせず、現実の施策に意見を反映させ得る、選挙と並行する別ルート(バイパス)を考えるべきではないだろうか。デモや陳情など従来の手法を一層有効にする手立ての一方、NPOが大きな政策実現インフラとして前面に出ることはできないだろうか。
 これまでにもNPO法制定過程のロビイングなど実績があるが、より広範な声を集め、巻き込むことができるなら、政策面では政権交代と同様の効果を期待できる。それをどう実現するか。残念ながら今ここで示せる具体策はないが、「政治・政策へのアプローチ=選挙以外のバイパスづくり」は、日本の市民活動の大きな課題だと思う。

【Volo(ウォロ)2021年10・11月号:掲載】

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