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責任を取るということ ――尾瀬ガイド協会の素早い対応に学ぶ

編集委員筒井 のり子

 ここ数年、「責任」や「謝罪」という言葉に重みが感じられない事象が増えたように感じる。
 森友学園や「桜を見る会」前夜祭問題に対して「責任を痛感」という言葉を連発するが、「責任を取る」ことはしなかった安倍元総理大臣。女性蔑視発言に対する謝罪会見が「逆ギレ、居直り会見」になったオリンピック・パラリンピック組織委員会の森前会長。最近では、テレビの情報番組で共産党に対するデマを述べた八代弁護士の謝罪コメントも、「謝罪になっていない」と視聴者から批判を浴びた。
 あらためて「謝罪」とは、自らの非(罪や過ち)を認めて相手にわびることである。すなわち、「何が問題だったのか」を自らが理解して(あるいは理解する努力をして)、初めて誠実な謝罪となる。また、「責任を取る」とは、自分が関わった事柄から生じた結果に対して責務を引き受けるということである。その覚悟と具体的な行動が伴わないと人々に気持ちは伝わらない。

 不適切発言や不祥事は、何も企業や政治家などに限ったことではない。市民活動界においてもまた、さまざまな問題が発生し、その責任の取り方に疑問が投げかけられることも多い。
 一例を挙げると、フリースクールの草分け的存在として知られているNPO法人東京シューレでは、2016年に提訴された問題(宿泊型フリースクール活動に参加した女性に対する、男性スタッフによる性暴力)について、和解が成立した19年まで一切公表せず、和解後も外部からの説明要求や取材を拒絶してきた。東京シューレが事実関係を認め、被害者への謝罪と今後の再発防止についての文書をホームページに公表したのは20年2月になってからだった。さらに、和解の際に被害女性に対して口外禁止条項を求めたことが判明し、21年6月になって、ようやく理事長の退任が発表された。
 同団体は不登校の捉え方について社会に一石を投じ、フリースクールの発展に大きな功績があるだけに、残念な思いをした関係者も多い。

 そのような中、9月2日にホームページに発表された尾瀬ガイド協会の謝罪文が「素晴らしい」とSNS上で話題になった。「―差別的投稿の経緯・問題点・今後の方針― 当協会公式アカウントによるTwitterにおける多数の差別的投稿に関して」と題する6千字におよぶものであり、①経緯、②問題点、③原因、④今後の取り組み、⑤関係者の人事、の5項目について記載されている。紙面の関係で内容の詳細は紹介できないが、特筆すべき点を挙げてみたい。
 まず、挙げられるのは、対応の素早さである。不適切投稿との外部指摘からわずか12日後の会長名での発表であり、理事会が適切に機能していることがわかる。
 次に、よくある「不適切な投稿がありました」で終わらせず、投稿内容を具体的に記した上で、その一つひとつがなぜ不適切なのかを説明している点である。
 さらに、原因について、投稿者個人の問題に矮小化せず、「投稿者はもちろん、役員も人権感覚や差別に関する意識が低かった」「SNSについてチェックがなかった」「SNS等の影響等の知識が乏しかった」「協会として危機管理ができていなかった」とし、組織の問題として受け止めていることである。
 その上で、協会として今後の取り組み内容を5点明記。人事としては投稿者の処分だけでなく、会長と専務理事が辞任、また広報に関する新組織設立を記している。

 職場のパワーハラスメント対策が法制化され、20年6月1日から施行されている。中小企業と同じ扱いのNPOには22年4月1日から適用される。あらためて、組織内の人権意識や危機管理体制についての議論が求められている。

【Volo(ウォロ)2021年10・11月号:掲載】

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