選考業務における参加の機会を一考
あるきっかけから、とある自治体の地域公共人材の登録制度に応募した。この制度は、地域活動を活性化するため専門知識やノウハウを持つ人材を登録し、希望する団体の要請に応じて派遣する仕組みだ。
先日、その採用面接の通知を手にしたのだが、その通知内容に引っかかった。募集要項で面接選考があることは承知していたので、面接日時が指定されることは想定内だった。ところが、「面接に出席できない場合は選考対象から外れますので、ご了承ください。」と書かれていた点に、大きな違和感をもった。
指定された面接日時は、通知のおよそ1カ月後である。外せぬ予定が入っていてもおかしくないタイミングだ。実際に、一緒に応募した人には、指定の時間に外せない仕事があり、通知内容に困惑していた。すぐに了承してよいのだろうか。
そのまま了承してはいけないと思う理由は何か、一緒に考えてみた。
問題点は複数挙がった。①募集要項では、「ある月の中旬からその翌月の上旬(予定)」として面接があることは明記されていたが、およそ1カ月間の幅で予告されていたこと、②その後、採用面接の通知日まで日程の案内は一切なかったこと、③指定された面接日時に出席できない場合は選考対象外になることの明記はなかったにもかかわらず、応募者の都合が悪い場合に調整しようとする姿勢が感じられないこと。
論点を整理しながら、オンライン面談ができないかの確認と面接時間帯の玉突き調整という対案をもって、選外通告を受けた状態の当人から事務局へ相談した。事務局の当初の回答は、オンライン面談は不可・玉突き調整は困難というものだったが、そこであきらめず、誰にも不利益のない玉突き調整の具体的な方法を説明し、粘り強く交渉した。最終的に事務局の理解を得られ、事務局による玉突き調整の実行と、時間変更に応じた応募者の協力で交渉は成立した。当人は選外通告を免れ、採用面接を受けられることとなった。
今回の一件で、大阪ボランティア協会がかかわる選考業務においては、「参加の機会をつくる」ことを重視し、その知恵と工夫を蓄積してきたことを自覚した。 どのように選考業務に反映されるかというと、たとえば、①選考日時を指定する場合は、募集段階で日程を明示し、了承のうえ応募してもらう、②選考日時を通知した際、応募者に不都合が生じた場合は、応募者や選考者などに不利益や無理が生じない範囲で総合調整を試みる、③募集要項の趣旨に賛同し、貢献しようとする応募者に対し、感謝と尊敬の念を忘れない。そして態度に表す――などだ。そんなことは当然だ、ほかにもこんな工夫がある、という読者の見識を期待したいが、いかがだろうか。 選考とは、「能力・人柄などをよく調べて適格者を選び出すこと。」(「デジタル大辞泉」より)とあるように、適格者を選び出すためには、選考する側も応募する側も大きな労力がかかる。特に選考者は、応募者にかかる労力を当然のこととせず、感謝と尊敬の念をもって迎え、向き合うことで礼をつくすべきではないだろうか。 選考の真の目的は、適格者を選び出すことのみにあらず、選び出した適格者がその能力や人柄を発揮して、広く社会に貢献し利益をもたらすことにある。ゆえに、選考方法の不備や応募者への配慮の不足により、その芽を摘むようなことをしてはいけない。選考業務に携わるものとして、エゴを捨て、目的を見失わないよう精進したい。
【Volo(ウォロ)2022年2・3月号:掲載】
2024.08
経済的な利益追求より民主主義の基盤整備を
編集委員 神野 武美
2024.08
2025年は国際協同組合年―協同組合との実りある連携を目指して
編集委員 永井 美佳