ボラ協のオピニオン―V時評―

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「NPOの概念」をアップデートする

編集委員永井 美佳

  労働者協同組合法(以下、法)の施行が今年の10月1日に迫り、この法への関心が高まっている。労働者協同組合(以下、労協)について、「組合員が出資すること(いわゆる出資)」「その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること(いわゆる経営)」「組合員が組合の行う事業に従事すること(いわゆる働き手)」を基本原理として、持続可能で活力ある地域社会に資する事業を行うことを目的とするよう定めているのが法の特徴だ。この労協を「NPOの概念」に位置づけることで、労協もNPO支援センターや市民活動センター(以下、共に支援センター)の支援対象に含まれてくる。例えば、市民活動で法人格を取得する際の選択肢の一つとして労協に注目している市民から、他の法人格との同異やメリット・デメリットを尋ねられるかもしれない。そのような想定で、この法や労協について着目できているだろうか。
 「NPOの概念」に包含されるのは特定非営利活動法人(以下、NPO法人)だけではない。法人格をもたないボランティアグループから、さまざまな法人(公益団体や共益団体)まで幅広い対象が位置づけられる。これに加えて法施行を機に、労協を含めた最新の概念にアップデートしなければ、と筆者は考えている。
 
 1998年に特定非営利活動促進法が施行された頃は、市民活動の組織化相談といえばNPO法人化を意味し、その対応ができれば及第点はとれた。いまは法人化の選択肢が一般社団や認可地縁団体など多様になり、必要とされる基礎知識は圧倒的に多くなっている。特に支援センターは業務に「相談」が含まれているところが多いが、なかにはNPOといえばNPO法人とボランティアグループだけを想定しているところもあるようだ。だが対応できる相談内容の範囲が狭い支援センターは、相談者の取り組みの発展可能性をも狭めることに気づけているだろうか。
 なかでも、委託事業や指定管理者で公設の支援センターを運営している場合は、支援センターの業務内容および範囲等が所管課の所掌範囲内に限られてしまうことがあり、特に留意が必要だ。例えば、所管課がボランティア・NPOと地縁による活動を所掌範囲としていれば、支援センターの仕様書にもその範囲が反映されやすい。このとき、双方に「NPOの概念」が問われるだろう。この概念を狭くとらえてしまうと支援対象が限定的になるし、広く最新の定義でとらえると、労協についても包含することになる。労協の所管課は他部署の場合があるだろうから、受託者や指定管理者の立場から所管課に対して庁内連携を求め、縦割り行政の弊害を現場に持ち込まないよう促さなければならない。
 
 NPO支援において、NPO法人とボランティアグループだけを念頭におく時代は、もはや終わっている。相談者は何のために、どのような事業・活動をするのか。それは営利か非営利か、個人か組織か。組織なら法人格の要・不要や最適な種類、法人格それぞれの相違点を理解しているかなど、相談者の考える組織や事業・活動の「ありたい姿」を聞き、理解することが必要だ。意思決定のあり方といったガバナンスで重視したいことを把握するなど、ソフト面を含め包括的な視点で情報提供や助言を行い、最良の選択ができるよう支援すべきだろう。そのために必要な知識や、支援に必要なネットワークをもっているかどうか。このような論点について、NPO支援に携わる人たちはぜひ自己点検し、話題にしてみてほしい。
 時代とともに変容し、進化し続けるNPO。実態をふまえて、最新の概念にアップデートし、社会に伝えていくことを心がけたいものだ。本誌次号特集では労働者協同組合法と市民活動について取り上げる。ぜひ注目していただきたい。

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