強制の伴う「ボランティア募集」はありえない
阪神タイガースとオリックス・バッファローズの優勝を祝し、11月23日、神戸と大阪で祝賀パレードが実施された。ところが大阪府と大阪市は、この祝賀パレードの来場者対応のため、実質的には「公務」や「業務」にあたると言える府市職員を「ボランティア」の名称で招集する事態となった。
そこで大阪ボランティア協会では大阪府、大阪市に対して以下のような要望書を送付した。
今回の募集方法でなされる活動は、自発的な社会活動である「ボランティア」活動とはなりません。兵庫県・神戸市のように職務と位置づけることが妥当だと考えます。
ボランティア活動は、自発的な参加であってこそ、創造的で多彩な取り組みが生まれます。機動的に対応でき、不測の事態に対して能動的な対応で事態の悪化を防げることも、自発的な参加だからこそ生まれる特性です。このボランティア活動の特性を生かすには、募集段階で強制的な要素が入り込まないよう丁寧に準備し、活動内容の企画や運営などにボランティアの創意が生かされるよう配慮することが、特に大切です。
しかし、今般の大阪府・大阪市の「ボランティア募集」では、こうした配慮がなされたとは思えません。「ボランティア募集」は、通常の業務における指示命令系統を利用して行われました。「ボランティア活動」の「応募者」を所属長が部署ごとにとりまとめる形がとられ、大阪市では部署ごとに職員の一定割合を目安とする「応募者」数の目標が示されました。
職場で、このような形で「ボランティア募集」がなされれば、上司の意向を忖度し、人事評価の低下をおそれ、その意に反して「応募」した職員も少なくないであろうことは容易に推察されます。このような形での取り組みは、ボランティア活動とはまったく性格の異なるものです。
つまり今回の募集形態では、ボランティア活動と呼べる取り組みとはなりません。この点を明確にすることは、自由で創造的な市民の社会活動であるボランティア活動を進める上で、大変、重要なことだと考えます。
ボランティア活動は無償で取り組まれることも、その特性の一つです。報酬のためではなく、活動の目標実現や応援する相手の生き方などへの共感から、ボランティア活動は進められます。今回、無償のスタッフを組織したいとの発想から「ボランティア」という用語が使われたのかもしれません。しかしそこには、「ボランティア=無償労働」という誤解があります。
ボランティア活動は使用従属関係にある労働ではありません。自身が主体となって、自由に、それぞれのスタイルで、社会を良くしていこうという営みです。それは、市民による創造的な自治活動のひとつであり、かつ参加することで自分自身も元気になることの多い活動です。繰り返しとなりますが、この鍵となるのは「自主的な参加」です。
2025年大阪・関西万博でも会場内外で多くのボランティアの参加が計画されていますが、その際にも、自由で創造的なボランティア活動が進められる環境を整えることが必要です。
大阪で自主的な社会活動であるボランティア活動が広がり、市民の創造力が発揮される街づくりが進められるよう、大阪府・大阪市において、上記の視点を重視した施策が進められることを切に要望いたします。
これは、まさに当たり前の内容だ。しかし、今回の件に関するマスメディアの報道のなかには「大阪府・市の公務員はボランティアをさせられてかわいそう」といったものも散見された。いや、「させられる」活動をボランティア活動とは呼ばない。悲しいかな、基本のキを、改めて確認することが大切な状況だ。
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