ボラ協のオピニオン―V時評―

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PTA改革の明暗~「ボランティア制」を生かすには

編集委員筒井 のり子

 新年度を迎え、子どもの入学とともに初めてPTAという組織に加入した人、また初めてPTA役員を担うことになったという人も多いだろう。言うまでもなく、PTAとは"Parent-Teacher  Association"(親と先生との任意団体)の略である。
 戦後、GHQの要請を受け、文部省(当時)がPTAの設置を推奨したことから全国の小学校・中学校・高校に広がった。
 PTAは、子どもたちの健全な成長のために「保護者と教職員が話し合う場」であり、そこから教育課題の共有や解決、学びや交流、地域との関係づくりを行うという意義がある。創設当初は、学校給食の制度化、教科書無償配布等を文部行政へ要望するなど、PTA運動も活発に行われた。
 PTAの活動内容は、学校行事(運動会等)のサポート、広報誌作成、子どもの登下校の見守り、保護者講習会の企画・運営等が一般的である。運営方法は地域事情や学校の規模等によって多様であるが、本部役員とは別にクラスごとに役員を選出して、複数の委員会(部会)を構成して業務を担うパターンが多い。

 

 ある時期から、PTAについて「活動が苦痛」「役員の負担が重すぎる」等のネガティブな声が大きくなりだした。
 "ネガティブ"の背景も一様ではないが、おおよそ共通するのは次の3点だろう。①強制加入や活動の強制、②活動が基本的に平日、③非効率な作業や会議。
 本来、PTAの入退会は自由であり、活動への参加も強制されるものではないが、ポイント制(注1)等を取り入れているところも多く、"やらされ感"が蔓延している。さらに共働き世帯が7割を占める現在、活動が平日では仕事との両立が難しい。またICT活用の遅れから書類作成や伝達の効率の悪さがストレスを生んでいた。
 そこで、10年ほど前から一部の学校で先駆的に「PTA改革」が展開されるようになった(注2)。それに拍車をかけたのが新型コロナである。ほとんどの学校・PTA行事が中止・縮小となる中、活動の見直しが行われ、PTA改革に着手する学校が拡大した。
 
 ところが、「改革」によって活動が活性化した学校と、逆に衰退が進んでしまった学校があるという。
 改革の中で最も多いのは、「委員会(部会)制」をやめて「ボランティア制」に切り替えるというものである。行事や活動ごとにボランティアを募る方式である。「手上げ方式」や「エントリー制」と呼ばれることもある。「子どものために何かしたい」と思ってはいるが、負担の大きさゆえに役員にはなりたくない、という保護者に歓迎され、活動への参加者が増え楽しい雰囲気が広がったという学校も多い。フルタイムの仕事をしていても、多様な日時・内容から選べるため、初めて活動に参加した人が増えたという。
 一方、ボランティアが集まらず、結果として本部役員の仕事量が膨大となり引き受け手がいないという悪循環や、直前に中止するプログラムが増えて子どもたちの楽しみが減り、また長年培ってきた地域とのつながりも希薄化するといった実態も見えてきている。

 

 「ボランティア」という言葉を掲げただけで自動的に参加が増えるわけではない。人が"自ら"何かを引き受けようとする背景にはさまざまな要因がある。情報がこまめに届くこと、活動の必要性や自分が参加する意味がわかること、活動に魅力が感じられること等……。すなわち、「参加の支援」を行う仕組みの有無が鍵になる。
 なるほど、ボランティア制によって活性化した学校を見ると、役員会の役割を「ボランティアセンター」と位置付けたり、「コーディネーター」という新しい役職を作ったりしていることがわかる。
 時代に応じて業務のスリム化は必要だが、対話や合意形成のための話し合いをおろそかにせず、人々が当事者意識を持って共に場を作っていくことが改革の重要な基盤と言えるだろう。

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