ボラ協のオピニオン―V時評―

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「参加の力」が生かされるために~能登半島地震の復興に向けて

編集委員早瀬 昇

 本誌「ウォロ′s トピック」での解説のように、能登半島地震ではボランティアの数がかなり少ない。現地では被災しつつ活動する住民もいるし、地域内外のNPOによる活動もある。しかし、一般市民の参加の窓口となる災害時のボランティアセンター(以下、VC)での活動者数が少ないことは復興活動の制約要因となりかねない。公平原則ゆえに画一的な対応とならざるを得ない行政と異なり、ボランティアは一人一人に応じた応援ができるからだ。
 そんな中、2月5日に前代未聞の事態が起こった。石川県知事などに対し「今こそボランティアの力を発揮させてください」という要請文が提出されたのだ。要請文の呼びかけ人は災害時の活動経験豊富な、栃木や茨城、兵庫、新潟、神奈川などの市民活動関係者。石川県は被災地での活動希望者に石川県県民ボランティアセンター(以下、県民センター)への事前登録を求めているが、当時、登録者の5%程度しか活動できておらず、改善などを訴えたのだ。宿泊拠点の整備などで活動者数は増えつつあるものの、過去の地震災害に比べ活動者数の少ない状況は続いている。
 
 背景には、災害VCの運営が難しくなっている事情もある。一部のボランティアが受け入れ体制への不満をSNSで発信したことで、災害VCが慎重な対応を強いられているというのだ。
 こうした災害VCの負担を減らすため、石川県は事前のボランティア登録を県民センターに一元化。災害VCの要請に応じて県民センターから連絡した事前登録者が被災地に出向く仕組みを導入した。
 ただし、災害時にボランティアの応援要請はなかなか寄せられないから、災害VCから県民センターへの要請数は増えにくい。依頼が届かずともボランティアが活動できるプログラムを生み出せないと、要請数を増やせない。
 しかし、自身も被災している社協スタッフが運営する災害VCで、直接的な応援依頼への対応に加え、間接的な応援であるプログラム作りまで求めるのは、あまりに酷なことだとも思う。
 
 実は大阪ボランティア協会などが阪神・淡路大震災時に創設し、日本で最初の災害VCとなった「被災地の人々を応援する市民の会」では、事前登録不要の対応をとった。対話型の通信手段が電話しかなかった当時、なかなかつながらない電話での登録者調整は実質的に無理だったことに加え、活動志願者を指揮下に置くことになる登録方式で志願者の自発性が弱まることを避けたかったためだ。
 結果、毎日何人のボランティアが来るか分からない事態となり、前日までに受け付けていた応援要請数を大幅に上回るボランティアが駆けつける日々が続いた。
 そこで、活動プログラムを「開発」することになった。情報ボード作成、「今、開いているお店情報」などの作成・配布、ごみの片づけなど20以上の活動が展開された。
 また、ボランティアの気づきと判断力を信じ、ボランティアだけで被災地を回った「訪問おてつだい隊」は、被災された方々の声を受けて多彩な復興活動を進めた。

 

 29年前にこうした活動が実現できたのは、協会に「参加の力」を信じる伝統があったことに加え、社協VCなどで働くベテランコーディネーターが全国から集まったからだ。市民参加で課題解決を進める専門職が結集したのだ。
 近年、全国で社協VCが減りコーディネーターも減りだしているが、現地には今、全国から多くの応援スタッフが加わり、態勢充実の努力が続けられている。
 さらに現地で活動するNPOの中にはVC的な役割を担う団体もある。災害VCに加え、これら多様な活動の場、参加の窓口の連携も進みだしている。
 息の長い復興を続けるために大事な時期である今、被災された方々の生活再建と地域の復興に、市民の「参加の力」を生かしたい。

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