ボラ協のオピニオン―V時評―

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2025年は国際協同組合年―協同組合との実りある連携を目指して

編集委員永井 美佳

 近年、協同組合と、NPO/NGOなど市民社会を含む非営利協同セクターとの連携が広がりつつある。2025年の国際協同組合年(以下、IYC2025)を機に、一層はずみがつきそうだ。
 日本協同組合連携機構(JCA)は、IYC2025に向けて実行委員会を立ち上げ、四つの活動目標を掲げた。①協同組合に対する理解を促進し、認知度を高める、②協同組合の事業・活動・組織の充実を通じてSDGs達成に貢献する、③地域課題解決のため協同組合間連携やさまざまな組織との連携を強める、④国際機関や海外の協同組合とのつながりを強める―とし、"連携・つながりの強化"が強調されている。特に③は、協同組合間連携にとどまらず、多様な組織との連携強化が期待されている。
 
 協同組合間の連携は各地域の自発的な動きとして始まった。最も古い協同組合連携組織(以下、連携組織)は、1971年設立の長野県協同組合連絡会だ。連携組織の構成団体はJA、生協、漁協、森林組合を中核としたものが多く、地域によっては共済や労働者協同組合、NPO法人などが参画している。現在、全国に42組織があり、42番目にできた「大阪府協同組合・非営利協同セクター連絡協議会(以下、OCoNoMiおおさか)」は2020年7月に発足した。12の構成団体(注)が、協同組合と多様な非営利協同セクターからなることが最大の特長で、今後の連携組織のあり方として注目されている。
 
 協同組合と非営利協同セクターが連携する価値はどこにあるのか。SDGs時代においては、各組織が掲げるゴール達成に向けて、互いの問題意識や解決したい社会課題の共通点を見つけ、おのおのの特長や強みを生かした連携によって成果を上げたときに、喜びとともに連携の価値を実感できると筆者は思う。ただし、一朝一夕には成せない。
 そもそも、協同組合と非営利協同セクターは、非営利性や参加型組織などの共通点が多いが、生まれてきた社会背景や文化、意思決定の仕組みなどは異なる。各組織のものの見方や考え方、取り組み方を一歩踏み込んで理解しようとしなければ、効果的な連携を生み出すことも、その先にある価値を見いだすことも難しい。一方で、相互理解が深まると、互いの特性やこだわりどころを尊重できて、相乗効果を生み出しやすく、連携による成功体験を重ねれば、取り組みへのモチベーションも上がる。

 

 OCoNoMiおおさかでは、連携する価値を実証すべく、互いの特長や強みの理解に努め、それらを事業に生かすようチャレンジしている。たとえば、イベントのブース出展をする場合、当初は構成団体の活動紹介パネル展示やパンフレット配布にとどまっていたが、最近は各団体が得意な企画を持ち寄って1ブースを運営している。森林組合の「丸太年輪当てクイズ」、こくみん共済のVRを使った「リモート型防災・減災体験」などを組み合わせて、多彩なコンテンツをウリとして来場者に喜ばれ、各パートを分担できて負荷の軽減もかなった。大学の講座での連携では、協同組合と非営利協同セクターの混成12団体がリレーで講義を受け持ち、幅広い実践を紹介することで、学生・教員の双方から好評を得ている。若手職員合同研修会では、キャリアの若い職員同士が互いの組織や事業を知り、今後連携できそうなアイデアで盛り上がった。人づくりの面でも効果が期待できそうだ。
 IYC2025を前に、各地の協同組合と非営利協同セクターが、社会課題解決に向けて連携・つながりを強化し、さまざまな実践で成果を見せることが期待される。互いの存在価値を尊重し高め合う、そんな国際年にしたい。

(注)執筆時点で、協同組合8(大阪府漁業協同組合連合会、大阪府森林組合、大阪府生活協同組合連合会、こくみん共済coop大阪推進本部、JA大阪中央会、生活協同組合おおさかパルコープ、生協法人大阪高齢者生活協同組合、労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団関西事業本部)と、非営利協同セクター4(社会福祉法人大阪ボランティア協会、一般社団法人大阪労働者福祉協議会、近畿労働金庫、日本赤十字社大阪府支部)

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